フェイラー・オブ・ザ・ハイスクール

神谷樂楽

文字の大きさ
30 / 57
修学旅行の英雄譚 Ⅰ

Folk story ことの始まり

しおりを挟む
『話を始める前に理っておかなければならないことがある。俺の記憶は所々欠けていてな、すべてを伝えることが出来ない』
そんなことなら別に気にしねぇよ。
『そうか、なら始めよう。あれは今から二千年以上前の話だ。俺とクロウ・クルワッハが戦場で暴れ回り戦争を終わらせた後のこと。俺たち二体は全ての種族から危険視され、疎まれるようになった』
まぁそうだろうな。
『それでもなお戦い、暴れることをやめようとしなかった俺達はついに追われるようになった。しかし俺達はドラゴン、しかも神ですら殺すと言われるほどの力を持っているドラゴン。何人も俺たちを殺すことは叶わなかった』
神ですら殺すほどのドラゴンってどんなんだよ。あれ?でもお前アンリ・マンユに負けたとか言ってなかったっけ?
『俺達が始めた喧嘩は結果として俺達の力を飛躍的に上げた。生まれたての頃よりも強いのは当たり前だろう?』
まぁ確かに、ずっと戦ってれば強くもなるか。
『その時だったな、龍殺しドラゴン・スレイヤーと呼ばれるものが作られたのは』
あの痛みは覚えている。というよりも忘れようにも忘れられない。
『あれはお前が俺を宿し、ドラゴンである限りお前がどれだけ強くなろうとも乗り越えることの出来ない力のひとつだ。次に遭遇することがあったら気をつけろよ?』
分かったよ。
『話がそれたな、龍殺しドラゴン・スレイヤーの発達のおかげで俺たち二体は徐々に窮地に追いやられるようになった。恐れたのだあの痛みを、あの俺達に向けられる無二の殺意を。世界の脅威と呼ばれた俺達が、なんとも情けないことだな』
それでどうしたんだよ?そのままやられるようなタマじゃないだろ?
『もちろん戦った、人の国を三つ滅ぼした、島を消した。圧倒的な力を見せつけたさ』
それはだいぶ暴れたな、そこまでやって負けるって何やらかしたんだよ?
『いや、俺は何もやってはいないさ。ただ人間が強かったのだ。俺を倒すために様々な策を講じてきた、何度失敗しようと改良に改良を重ねてな。何度失敗しようともすぐに適応しすぐに自らに進化を促す、それが人間の素晴らしいところであり厄介なところだとその時痛感した。そして人間と禁龍の戦いが終わりを迎える頃に奴は俺の前に現れた』
それがスラエータオラさんか、お前を最初に宿したっていう。
『その通り。俺の前に武器も何も持たずただ一人で現れた。しかしあの男からは絶対の強さを感じた。あの時やり合っていたら負けたのは俺だったかもしれん。この男を危険と判断した俺はすぐに戦闘態勢をとったが、そんなこと気にもとめずに奴は俺に向かって笑いかけたのだ。信じられるか?世界の脅威と対峙しても恐れない人間がいたのだ。それからやつは何度も俺のところに寄り俺に話しかけた。初めはどれだけ無視しようと話しかけてくる人間が鬱陶しかった。何度も殺してやろうと思ったがやはり目の前の男に勝てる気がしなかった。何十……いや、何百回目だろうか、あいつと共にいることが当たり前になり、あいつがいない日を寂しく感じるようになった。魔術を教え、世界を教わる。そんな不思議な関係が当時の俺にはとても心地よく思えた。しかしある時、いつも通りやつと話をしている時に「もしお前が人間を許せないというのなら俺の命をくれてやる。俺はお前を殺したくはない。何もしていないお前に死ねというのはあまりにも酷だ。だから人間がお前にしてきたことを俺の命で許して欲しい」と言ってきたのだ。いきなりすぎてな、初め何言われたら理解出来なかった。その後に「俺を依代に生きられないのか?」と言われやつが何を言っているのか理解出来たよ。久しぶりに大笑いしたさ。そして俺はそれを受け入れ、肉体を手放してやつに宿ったのだ。それからは記憶が所々欠けているが、やつは人間のために戦場を駆け回った。俺の力を存分に振るい、やがて英雄と呼ばれるまでに至った。覚えておけ、それが俺を宿した最初の人間にして、最高の戦士。お前が目指し乗り越えるべき男だ』
そんな凄い人がいることは分かったけど、その人はどうなったんだ?
『殺された』
誰に?
『やつだ。「禁龍フォービトゥン・ドラゴン」クロウ・クルワッハ。厳密に言えばそいつを宿した人間に、だ』
そこでその名前が出てくるのか。
『あれが俺達を宿した人間の最初の戦いだった。そしてスラエータオラが殺され、クロウクルワッハの最初の宿主が死んでから俺達は様々な人間に宿り、戦いを繰り返してきた。俺たちを宿してきた者、そしてそれに関わった者はろくな生き方をしなかったよ』
待って、なんか俺めちゃくちゃ怖くなってきたんだけど?
しかし、アジ・ダハーカは俺のその懸念を否定した。
『いや、お前は大丈夫だろう。今までの宿主とは少しばかり違うからな』
あーはいはい、今までの先輩方よりも弱いってやつね。散々聞いたよそれは。弱くても弱いなりに努力してんだよ、ちょっとは大目に見ろよな。
『そうではなくてだな……まぁいい、俺の話はここまでだ。そうだな、次はお前の話でも聞こうか?』
俺の話なんか聞いても面白くないぞ?てか、俺の中にいるんだからある程度分かってるだろ?
『別にいいだろ?俺だって誰かと話したくなる時くらいあるさ』
わーったよ。そうだな……俺は───。
窓から空を眺めながらぽつりぽつりと話し出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。 なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。 銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。 時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。 【概要】 主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。 現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

処理中です...