三日天下の聖女です!

あんど もあ

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 おしゃれしていただく夕食はとても楽しかった。元々美味しいのが三割増しで美味しく思え、王子との会話も楽しかった。
 大満足で部屋に戻ると、部屋でレティシア様が待っていた。
「すみません! お待たせしてしまって」
「よろしいのよ、先触れも無く来たのですもの。実は、これをお渡ししたくて」
 高級ワインが入っていそうな縦長の紫色のビロードの箱を手渡す。

 受け取ると、あれっ?と思うくらい軽かった。
 蓋を開けると、ビロード敷きの中に一輪の赤い薔薇。
「うわぁ……すごい」
 取り出してよく見ると、一枚一枚の花びらの根元が朱色で先は深紅へとグラデーションになっていて、まるで燃えているみたい。棘は透明で宝石のようだ。はあ……、この世界にはこんな薔薇があるんだ。

「こちらを明日の神事に使っていただきたいの」
「え、でも大神官様にまかせていて」
「こちらから必要なくなったと連絡しておきますわ」
「は、はい……」
 有無を言わせずレティシア様は帰っていった。


 レティシア様が帰られた後、私は侍女に王妃様へ伝言を頼んだ。




 そして、いよいよ今日は神事本番!
 朝食の後に、気合の入った侍女&女性神官たちに聖女コスチュームに実装され、髪をセットされて、それっぽい装飾品を額に胸に手首に着ければ、なんとか聖女っぽいのが出来上がった。
 皆はメイクやヘアをもっと盛りたいようだが、のっぺり日本人顔の私に似合うとは思えないので我慢してもらう。

 大神官様が大量の護衛と迎えに来てくれたので、昨日貰ったビロードの箱を中の花を確認して受け取り、会場へ向かう。
 右に左に折れて進むうちに、またどこを歩いているか分からなくなるが、やがて皆が躊躇ためらわずに外に出て行くのでちょっと不安になる。神事をするんだよね? 
 一行はどんどん城から離れて行く。
 教会とか大聖堂とか、よそでやるのかな。

 皆の後を付いて行くと、背の高い生垣の向こうから沢山の人のざわめきと歌が聞こえてくる。生垣の隙間から覗かせてもらうと、そこは人がひしめき合ってる公園のような所みたいだ。
 歌声の元を探すと、見晴らしの良さそうな舞台の上で子供たちが歌っている。

 大神官様ー!! 「野外ライブだ」って肝心な事を言って無い!!

 私が平地と思っていた椅子席は、ギャラリーから見やすいよう2メートルくらい高くなってた。
 あの椅子、王族と貴族が向かい合ってるんじゃなくて、祭壇を向くと平民から顔が見えなくなるから横にしてたのね。
 そんな事を思ってたら、王様たちが登場して大歓声だ。その間に私たちも舞台裾にスタンバイさせられる。あのっ、まだ心の準備がっ!

 王様たちが着席して子供たちが去ると、大神官様に手を引かれて舞台に登場する。この白い衣装は、さぞ遠くからでも目立ってるんだろうなぁ。
 ギャラリーは生の聖女に大盛り上がりだ。まだ何もしてないのに。必死に笑顔笑顔。

 祭壇に上がり、ビロードの箱を右側において椅子に座ると、会場に沈黙が降りる。
 離れた椅子に座った大神官様が頷いたので、祈りを始める。お墓参りの時のように合掌して、ひたすら「亡くなった人たちよ安らかにあれ」とだけ考える。

 静かだった会場にやがてざわめきが生まれ、その音量が大きくなっていく。
 ちらっと横目で見ると、空一面にオーロラのような幕が生まれて揺れている。ただ、オーロラと違って色がおどろおどろしい。これが澱んだ思念……。
 大神官様を盗み見ても、こちらを見てない。このまま行けって事ね。
 
 きっと国中の人がこのキショいオーロラに不安になっているはず!、とさらに強く祈り続ける。
 みんな! オラに元気を分けてくれ!!

 すると、空にいくつもの渦巻きが生まれ、ゆらゆら揺れていたオーロラが次々と渦に吸い込まれて行く。
 オーロラが一つ消え、二つ消え……。
 最後の一つが吸い込まれて消えて、青空だけになった。

 空の下にギャラリーの悲鳴のような歓声が響いた。

 ちらりと見た大神官様が頷いたのを見て、立ち上がってビロードの箱から花を取り出して祭壇に捧げようとしたら……。

「そのファイアローズは、王妃様の禁断の温室から盗まれた物ですわ!」
 突然、貴族席からレティシア様の声が響いた。レティシア様が祭壇に上がってくる。
「この人は聖女なんかじゃありません! 盗人、詐欺師です!」
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