使い捨て聖女の反乱

あんど もあ

文字の大きさ
2 / 3

中編

しおりを挟む
 …てな事を思いつつ東の町も浄化終了。国王陛下に謁見に呼ばれた。

 ズラッと並ぶたくさんの貴族たちに、これから陛下の言う事が想像できてしまう。
「聖女アネット。この度の浄化は誠に大儀であった」
「恐れ入ります」
「これで無事すべての浄化が終了したので、アネットを聖女の任から外す事とする。従って、王子との婚約も解消。アネットは聖女として受け取った物を全て返却して王都を去るがいい」
 当然の事だとうなずいている周りの貴族たち。
 …ふう、やっぱりね。

 瘴気がヤバくなると、王家が聖女を王子の婚約者にして「王子の婚約者にしてやったんだから国のために働け」ってこき使って使い潰して捨てる、ってのは平民には有名な話だ。
 まあ、だから予め準備できたんだけど。

かしこまりました」
 私は両手を肩の高さに上げる。やがて手のひらから黒い霧があふれてきた。
 何の曲芸を始めたんだ?と思って見ていた貴族たちだが、その中の一人が叫んだ。
「瘴気だ!!」

 一口に神力と言っても、瘴気の払い方は人によって違う。細かく砕いて消滅させる人や、高く高く打ち上げる人。私は、瘴気を自分に吸収し溶かすタイプだ。
 だが、積み重なるストレスのせいで中々体内の瘴気が消えなくなり、ふと「なら、外に出せない?」と思いついてやってみたら、出来ちゃった。

 これを使って、いずれ追放される時に王族にやり返せないかと皆で知恵を出し合って考えたのが、今回の計画だ。自分に瘴気を溜めるためだと思えば、きつい浄化の遠征も耐えられた。


 ざわめきと恐怖が広間に広がる。
「お前はっ! なっ、何をしている!」
「陛下が『全て返せ』とおっしゃるので、瘴気をお返ししております」
 言っている間にも霧はどんどん広間の床に溜まっていく。
「それでは御前失礼いたします」
 両手が使えないのでスカートを持ち上げられず、頭を下げるだけで陛下の前から去る。私が近付くと、皆が笑えるくらい離れて行く。私を止めなくていいのか?
 広間を出て左に進むと、皆が一斉に右に逃げていくのが見えた。
 あらあら、誰もいなくなっては帰り道が分かりませんわねぇ(棒)

 トコトコと無人の城の奥に奥に進み、立派な扉の部屋を選んでは中に入って瘴気を振りまき、ちゃんと扉を閉めて去るというのを繰り返す。

 これで、ほとぼりが冷めて戻って来ても部屋を開けるのはロシアンルーレット状態。王族・貴族に扉を開けて確認する勇気は無いでしょう。平民に押し付けたくても、下賤な平民は王宮に入れませんので知った事じゃありません~。

 こうなったら、神力のある貴族神官に頑張ってもらいましょう。あ、実家が貴族だけど真面目に働く神官の方たちは、既に離籍済みで平民になってるんで当てになさらないでね~。

 城門まで来ると、門前町の人たちまで避難したようで人っ子一人いない。そりゃ、王族貴族騎士に使用人までが揃って城から逃げ出したらそうなるわ…。騒がせてごめんね。

 城門の門番用の控室で聖女の法衣を脱ぎ、下に着こんでいたワンピース姿になって外に出て、ポケットに入れておいた蝋石ろうせきで城の茶色い塀に目いっぱい大きく書き込む。



  いじわるな王様は言いました

  聖女よおまえは今日でクビ

  もらった物をひとつ残らず返して

  さっさとここを出て行けと



  やさしい聖女は泣きました

  やっと浄化できたのに

  命令ならばお返しせねばなりません

  瘴気をひとつも残さずに




 う~ん、あらかじめ用意していた詩とは思えないくらい事実と合ってる。陛下のやる事が予想通りすぎたものね。
 本当は「やさしい聖女」より、「うつくしい聖女」とか「うるわしい聖女」を押したのだけど、却下された。「誇大広告になる」って何だ。

 城に最初に戻ってくるのは、きっとネタを探している吟遊詩人か王都新聞の記者。これを見たら、何があったのか一目瞭然だろう。


 私は歩き出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

愚か者の話をしよう

鈴宮(すずみや)
恋愛
 シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。  そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。  けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

常識的に考えて

章槻雅希
ファンタジー
アッヘンヴァル王国に聖女が現れた。王国の第一王子とその側近は彼女の世話係に選ばれた。女神教正教会の依頼を国王が了承したためだ。 しかし、これに第一王女が異を唱えた。なぜ未婚の少女の世話係を同年代の異性が行うのかと。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

やり直し令嬢は何もしない

黒姫
恋愛
逆行転生した令嬢が何もしない事で自分と妹を死の運命から救う話

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

黒の聖女、白の聖女に復讐したい

夜桜
恋愛
婚約破棄だ。 その言葉を口にした瞬間、婚約者は死ぬ。 黒の聖女・エイトは伯爵と婚約していた。 だが、伯爵は白の聖女として有名なエイトの妹と関係をもっていた。 だから、言ってはならない“あの言葉”を口にした瞬間、伯爵は罰を受けるのだった。 ※イラストは登場人物の『アインス』です

処理中です...