27 / 35
第二十七話 終幕――祝砲、確かにお届けしましたわ
しおりを挟む
次の瞬間――黒燕尾の裾がふわりと舞い上がる。
瞬きのあいだに――一人、二人、三人。操られた者たちは糸の切れた人形のように沈む。
何が起きたのか誰にも分からない。
ただ、袖がひるがえるたびに、ひとり、またひとりと落ちた。
「邪魔は、させません」
静かなその一言と同時に、最後の一人も崩れ落ちる。
音が戻るより先に、クラウスは何事もなかったようにリシェルの隣へ。
「どこまでも役立たずの人間どもめ……。
いいだろう、お前の両親と同じ技で燃やし尽くしてやろう」
アスモデウスは指先をリシェルに向けた。
『……地獄の炎、ʓλ≠ʀѦウ∮∽』と、耳の奥をひっかくような囁きと共に、
その指先に黒い瘴気のようなものが凝縮していく。
クラウスは、にこりと笑う。
「――お嬢様。終幕を」
「ええ。まずは、この魔族を片付けてから」
再び、リシェルが滅魔砲のトリガーに手を添える。
砲身の光が彼女の瞳を照らし、その奥で――五年間の記憶が静かに燃え上がった。
(クラウスが差し出した手――その磨かれた仮面に映った、幼き日の憧れ)
今度は、砲全体が眩い光に包まれた。前回とは比較にならない眩さ。
アスモデウスが一歩引いた。
「なっ……なに、この力は……!」
その瞬間、アスモデウスの指先の黒い球体が破裂し、黒い瘴気が霧散する。
(両親の最後の笑顔――あの日の夕陽は、血のように赤かった)
「先ほどは――準備運動にすぎません」
胸に手を当て、優雅に頭を下げるクラウスの声は、静かで優しく、そして容赦なかった。
その瞬間、アスモデウスの纏っていた黒瘴がぱちぱちと剥がれ、
衣装の一部が真っ白に変わり――顔が一瞬、フェリシアへと戻った。
「た、助けて……! わたし、フェリシアよ! 本当に、わたしなの!」
透き通った瞳が見開かれ、涙が溢れた。
参列者がざわめく。
セドリックは目を見開き、半歩前に出て声を上げかけた。
「フェリシア……! やはり、お前は――」
だが、次の瞬間。
フェリシアの顔はぐにゃりと歪み、陶磁器が砕けるように崩れていく。
そして、黒い炎が再びぶわりと燃え上がり、瞳は濁り、黒く塗りつぶされていった。
「……っ! ち、違う……やはり……!」
セドリックは蒼白になり、膝から力が抜けたように後ずさった。
リシェルの瞳は微動だにしない。
「……今さら、そんな言葉で惑わされるとお思い?」
冷徹な声が響き渡る。
「あなたはあの日、笑って私の両親を焼き尽くした。
――むしろ、“フェリシア”さんとその恋人のためにも、あなたを斃します」
黒い炎を纏ったアスモデウスが悪態を吐き散らす。
「ぐっ……ちくしょう……! こんなところで……っ!?」
一瞬、リシェルとクラウスの視線が交わる。
(婚約破棄の宣告――そしてクラウス、彼の手の温もり)
「では、大悪魔アスモデウス。お別れの前にあなたに祝辞を差し上げますわ」
リシェルは、にこりと笑った。
(――すべてを、この一撃に)
リシェルの指に力がこもる。
砲身が唸りを上げ、光がさらに強くなる。
クラウスの瞳が、ただ一言「行け」と告げていた。
「おめでとう、アスモデウス。
――真実の愛とやらに報いるため、その命を捧げると、あなたは言いましたわね」
空気が震え、床石がきしむ。
胸の奥まで熱がせり上がる。
「では、今こそ――」
一瞬、時間が止まった。
リシェルの視線とクラウスの視線が、炎のように絡み合う。
砲身の光が臨界まで膨れ上がり――
「天国まで、吹っ飛びなさい!」
リシェルの叫びと同時に、
参列者も、王も、アメリアも、セドリックさえも、息を呑み――次の瞬間、心が一つになった。
撃てええええええええええええッ!!!!
光が――爆ぜた。
七式滅魔砲《クレイモア》の砲身が、太陽のように光を放ち、
聖堂全体を真昼のように照らし出す。
次の瞬間――
……ドオオオオォォン!!!
轟音――空気が、空間が裂ける。
衝撃波が床石を波打たせ、ステンドグラスの欠片が光を反射しながら宙を乱舞する。
熱が押し寄せ、参列者の外套やドレスを大きくはためかせた。
「ぶぎゅひゃぁあああああああ!!」
光に呑み込まれたアスモデウスの悲鳴――。
「ぐっ……こんなところで……あ、あいつに何て言われるか……っ!?
手加減とか卑怯でしょう!? ……こ、今回は負けてあげるだけなんだから!
……っつ、次は……覚悟しておきなさいよねぇぇぇっ……!!」
その断末魔にも似た叫びを、リシェルは冷ややかに切り捨てた。
「卑怯? 滑稽ね。どの口で?
次? 何度でも。あなたが払うべき血の代償は――まだ一滴たりとも足りてないわ」
その声が最後の楔となり、眩い光がアスモデウスを呑み込み、熱と轟音の渦の中へと溶かし去った。
残されたのは、白い大理石の床に一直線に走る焦げ跡と、
真空に抜かれたような静けさだけ。
大聖堂の空気が止まっていた。
砲口から立ちのぼる煙とともに、静寂が聖堂を満たす。
穴の空いた壁から吹き込む風が、色彩を失ったステンドグラスの破片を静かに舞わせた。
リシェルのドレスがひらりと揺れ、その姿はまるで――戦場に降り立った、白き女神のようだった。
一瞬、リシェルとクラウスは視線を交わした。
言葉はない。ただ、それだけで充分だった。
――リシェルは純白のドレスの裾をつまむと、優雅なカーテシーで挨拶した。
「――皆さま、芝居は終幕でございます。祝砲、確かにお届けしましたわ」
……静寂。三拍置いて――ぱん、ぱん。
主役による見事な終幕の挨拶にクラウス、そしてアメリアが拍手を送る。
王やセドリック、神官や近衛兵も拍手に加わり――
次第に、ためらいがちな拍手があちこちで起こり――
さらに、聖堂中にスタンディングオベーションが広がり――
やがて――聖堂の拍手は扉を抜け、広場へ、通りへ、屋根の上へと波のように伝わった。
パン屋はこね台を叩き、鍛冶屋のハンマーは拍を刻み、鳩すら羽でぱたぱた。
鐘楼は時刻外れの鐘を打ち鳴らし、港の船が汽笛で合いの手を入れる。
こうして本日の演目は――王都総立ちの終幕を迎えた。
◆
コツ、コツ――その裏で、聖堂を去る一人の淑女。
「大口叩いておいて役立たず。何が大悪魔よ、三下のくせに」
場違いな黒のドレスに黒いヴェール――なのに誰も目を留めない。
薔薇と煤の混じった匂いだけが、石畳に一筋残った。
ただ一人、クラウスだけが――
記録院で嗅いだ“あの気配”が静かに遠のいていくのを察していた。
瞬きのあいだに――一人、二人、三人。操られた者たちは糸の切れた人形のように沈む。
何が起きたのか誰にも分からない。
ただ、袖がひるがえるたびに、ひとり、またひとりと落ちた。
「邪魔は、させません」
静かなその一言と同時に、最後の一人も崩れ落ちる。
音が戻るより先に、クラウスは何事もなかったようにリシェルの隣へ。
「どこまでも役立たずの人間どもめ……。
いいだろう、お前の両親と同じ技で燃やし尽くしてやろう」
アスモデウスは指先をリシェルに向けた。
『……地獄の炎、ʓλ≠ʀѦウ∮∽』と、耳の奥をひっかくような囁きと共に、
その指先に黒い瘴気のようなものが凝縮していく。
クラウスは、にこりと笑う。
「――お嬢様。終幕を」
「ええ。まずは、この魔族を片付けてから」
再び、リシェルが滅魔砲のトリガーに手を添える。
砲身の光が彼女の瞳を照らし、その奥で――五年間の記憶が静かに燃え上がった。
(クラウスが差し出した手――その磨かれた仮面に映った、幼き日の憧れ)
今度は、砲全体が眩い光に包まれた。前回とは比較にならない眩さ。
アスモデウスが一歩引いた。
「なっ……なに、この力は……!」
その瞬間、アスモデウスの指先の黒い球体が破裂し、黒い瘴気が霧散する。
(両親の最後の笑顔――あの日の夕陽は、血のように赤かった)
「先ほどは――準備運動にすぎません」
胸に手を当て、優雅に頭を下げるクラウスの声は、静かで優しく、そして容赦なかった。
その瞬間、アスモデウスの纏っていた黒瘴がぱちぱちと剥がれ、
衣装の一部が真っ白に変わり――顔が一瞬、フェリシアへと戻った。
「た、助けて……! わたし、フェリシアよ! 本当に、わたしなの!」
透き通った瞳が見開かれ、涙が溢れた。
参列者がざわめく。
セドリックは目を見開き、半歩前に出て声を上げかけた。
「フェリシア……! やはり、お前は――」
だが、次の瞬間。
フェリシアの顔はぐにゃりと歪み、陶磁器が砕けるように崩れていく。
そして、黒い炎が再びぶわりと燃え上がり、瞳は濁り、黒く塗りつぶされていった。
「……っ! ち、違う……やはり……!」
セドリックは蒼白になり、膝から力が抜けたように後ずさった。
リシェルの瞳は微動だにしない。
「……今さら、そんな言葉で惑わされるとお思い?」
冷徹な声が響き渡る。
「あなたはあの日、笑って私の両親を焼き尽くした。
――むしろ、“フェリシア”さんとその恋人のためにも、あなたを斃します」
黒い炎を纏ったアスモデウスが悪態を吐き散らす。
「ぐっ……ちくしょう……! こんなところで……っ!?」
一瞬、リシェルとクラウスの視線が交わる。
(婚約破棄の宣告――そしてクラウス、彼の手の温もり)
「では、大悪魔アスモデウス。お別れの前にあなたに祝辞を差し上げますわ」
リシェルは、にこりと笑った。
(――すべてを、この一撃に)
リシェルの指に力がこもる。
砲身が唸りを上げ、光がさらに強くなる。
クラウスの瞳が、ただ一言「行け」と告げていた。
「おめでとう、アスモデウス。
――真実の愛とやらに報いるため、その命を捧げると、あなたは言いましたわね」
空気が震え、床石がきしむ。
胸の奥まで熱がせり上がる。
「では、今こそ――」
一瞬、時間が止まった。
リシェルの視線とクラウスの視線が、炎のように絡み合う。
砲身の光が臨界まで膨れ上がり――
「天国まで、吹っ飛びなさい!」
リシェルの叫びと同時に、
参列者も、王も、アメリアも、セドリックさえも、息を呑み――次の瞬間、心が一つになった。
撃てええええええええええええッ!!!!
光が――爆ぜた。
七式滅魔砲《クレイモア》の砲身が、太陽のように光を放ち、
聖堂全体を真昼のように照らし出す。
次の瞬間――
……ドオオオオォォン!!!
轟音――空気が、空間が裂ける。
衝撃波が床石を波打たせ、ステンドグラスの欠片が光を反射しながら宙を乱舞する。
熱が押し寄せ、参列者の外套やドレスを大きくはためかせた。
「ぶぎゅひゃぁあああああああ!!」
光に呑み込まれたアスモデウスの悲鳴――。
「ぐっ……こんなところで……あ、あいつに何て言われるか……っ!?
手加減とか卑怯でしょう!? ……こ、今回は負けてあげるだけなんだから!
……っつ、次は……覚悟しておきなさいよねぇぇぇっ……!!」
その断末魔にも似た叫びを、リシェルは冷ややかに切り捨てた。
「卑怯? 滑稽ね。どの口で?
次? 何度でも。あなたが払うべき血の代償は――まだ一滴たりとも足りてないわ」
その声が最後の楔となり、眩い光がアスモデウスを呑み込み、熱と轟音の渦の中へと溶かし去った。
残されたのは、白い大理石の床に一直線に走る焦げ跡と、
真空に抜かれたような静けさだけ。
大聖堂の空気が止まっていた。
砲口から立ちのぼる煙とともに、静寂が聖堂を満たす。
穴の空いた壁から吹き込む風が、色彩を失ったステンドグラスの破片を静かに舞わせた。
リシェルのドレスがひらりと揺れ、その姿はまるで――戦場に降り立った、白き女神のようだった。
一瞬、リシェルとクラウスは視線を交わした。
言葉はない。ただ、それだけで充分だった。
――リシェルは純白のドレスの裾をつまむと、優雅なカーテシーで挨拶した。
「――皆さま、芝居は終幕でございます。祝砲、確かにお届けしましたわ」
……静寂。三拍置いて――ぱん、ぱん。
主役による見事な終幕の挨拶にクラウス、そしてアメリアが拍手を送る。
王やセドリック、神官や近衛兵も拍手に加わり――
次第に、ためらいがちな拍手があちこちで起こり――
さらに、聖堂中にスタンディングオベーションが広がり――
やがて――聖堂の拍手は扉を抜け、広場へ、通りへ、屋根の上へと波のように伝わった。
パン屋はこね台を叩き、鍛冶屋のハンマーは拍を刻み、鳩すら羽でぱたぱた。
鐘楼は時刻外れの鐘を打ち鳴らし、港の船が汽笛で合いの手を入れる。
こうして本日の演目は――王都総立ちの終幕を迎えた。
◆
コツ、コツ――その裏で、聖堂を去る一人の淑女。
「大口叩いておいて役立たず。何が大悪魔よ、三下のくせに」
場違いな黒のドレスに黒いヴェール――なのに誰も目を留めない。
薔薇と煤の混じった匂いだけが、石畳に一筋残った。
ただ一人、クラウスだけが――
記録院で嗅いだ“あの気配”が静かに遠のいていくのを察していた。
47
あなたにおすすめの小説
私がいなくなっても構わないと言ったのは、あなたの方ですよ?
睡蓮
恋愛
セレスとクレイは婚約関係にあった。しかし、セレスよりも他の女性に目移りしてしまったクレイは、ためらうこともなくセレスの事を婚約破棄の上で追放してしまう。お前などいてもいなくても構わないと別れの言葉を告げたクレイであったものの、後に全く同じ言葉をセレスから返されることとなることを、彼は知らないままであった…。
※全6話完結です。
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
他小説サイトにも投稿しています。
愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから
越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。
新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。
一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?
婚約破棄された地味伯爵令嬢は、隠れ錬金術師でした~追放された辺境でスローライフを始めたら、隣国の冷徹魔導公爵に溺愛されて最強です~
ふわふわ
恋愛
地味で目立たない伯爵令嬢・エルカミーノは、王太子カイロンとの政略婚約を強いられていた。
しかし、転生聖女ソルスティスに心を奪われたカイロンは、公開の舞踏会で婚約破棄を宣言。「地味でお前は不要!」と嘲笑う。
周囲から「悪役令嬢」の烙印を押され、辺境追放を言い渡されたエルカミーノ。
だが内心では「やったー! これで自由!」と大喜び。
実は彼女は前世の記憶を持つ天才錬金術師で、希少素材ゼロで最強ポーションを作れるチート級の才能を隠していたのだ。
追放先の辺境で、忠実なメイド・セシルと共に薬草園を開き、のんびりスローライフを始めるエルカミーノ。
作ったポーションが村人を救い、次第に評判が広がっていく。
そんな中、隣国から視察に来た冷徹で美麗な魔導公爵・ラクティスが、エルカミーノの才能に一目惚れ(?)。
「君の錬金術は国宝級だ。僕の国へ来ないか?」とスカウトし、腹黒ながらエルカミーノにだけ甘々溺愛モード全開に!
一方、王都ではソルスティスの聖魔法が効かず魔瘴病が流行。
エルカミーノのポーションなしでは国が危機に陥り、カイロンとソルスティスは後悔の渦へ……。
公開土下座、聖女の暴走と転生者バレ、国際的な陰謀……
さまざまな試練をラクティスの守護と溺愛で乗り越え、エルカミーノは大陸の救済者となり、幸せな結婚へ!
**婚約破棄ざまぁ×隠れチート錬金術×辺境スローライフ×冷徹公爵の甘々溺愛**
胸キュン&スカッと満載の異世界ファンタジー、全32話完結!
婚約破棄され泣きながら帰宅している途中で落命してしまったのですが、待ち受けていた運命は思いもよらぬもので……?
四季
恋愛
理不尽に婚約破棄された"私"は、泣きながら家へ帰ろうとしていたところ、通りすがりの謎のおじさんに刃物で刺され、死亡した。
そうして訪れた死後の世界で対面したのは女神。
女神から思いもよらぬことを告げられた"私"は、そこから、終わりの見えないの旅に出ることとなる。
長い旅の先に待つものは……??
傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
不愛想な婚約者のメガネをこっそりかけたら
柳葉うら
恋愛
男爵令嬢のアダリーシアは、婚約者で伯爵家の令息のエディングと上手くいっていない。ある日、エディングに会いに行ったアダリーシアは、エディングが置いていったメガネを出来心でかけてみることに。そんなアダリーシアの姿を見たエディングは――。
「か・わ・い・い~っ!!」
これまでの態度から一変して、アダリーシアのギャップにメロメロになるのだった。
出来心でメガネをかけたヒロインのギャップに、本当は溺愛しているのに不器用であるがゆえにぶっきらぼうに接してしまったヒーローがノックアウトされるお話。
「エリアーナ? ああ、あの穀潰しか」と蔑んだ元婚約者へ。今、私は氷帝陛下の隣で大陸一の幸せを掴んでいます。
椎名シナ
恋愛
「エリアーナ? ああ、あの穀潰しか」
ーーかつて私、エリアーナ・フォン・クライネルは、婚約者であったクラウヴェルト王国第一王子アルフォンスにそう蔑まれ、偽りの聖女マリアベルの奸計によって全てを奪われ、追放されましたわ。ええ、ええ、あの時の絶望と屈辱、今でも鮮明に覚えていますとも。
ですが、ご心配なく。そんな私を拾い上げ、その凍てつくような瞳の奥に熱い情熱を秘めた隣国ヴァルエンデ帝国の若き皇帝、カイザー陛下が「お前こそが、我が探し求めた唯一無二の宝だ」と、それはもう、息もできないほどの熱烈な求愛と、とろけるような溺愛で私を包み込んでくださっているのですもの。
今ではヴァルエンデ帝国の皇后として、かつて「無能」と罵られた私の知識と才能は大陸全土を驚かせ、帝国にかつてない繁栄をもたらしていますのよ。あら、風の噂では、私を捨てたクラウヴェルト王国は、偽聖女の力が消え失せ、今や滅亡寸前だとか? 「エリアーナさえいれば」ですって?
これは、どん底に突き落とされた令嬢が、絶対的な権力と愛を手に入れ、かつて自分を見下した愚か者たちに華麗なる鉄槌を下し、大陸一の幸せを掴み取る、痛快極まりない逆転ざまぁ&極甘溺愛ストーリー。
さあ、元婚約者のアルフォンス様? 私の「穀潰し」ぶりが、どれほどのものだったか、その目でとくとご覧にいれますわ。もっとも、今のあなたに、その資格があるのかしら?
――え? ヴァルエンデ帝国からの公式声明? 「エリアーナ皇女殿下のご生誕を祝福し、クラウヴェルト王国には『適切な対応』を求める」ですって……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる