異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ

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第8章 世界を揺らす黒雲

第71話「不穏な空、静かな決意」

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朝焼けが東の空を照らす頃、天城悠翔は、いつものように牧場の見回りを終えたところだった。

「よし、牛たちも元気そうだし、鶏も卵をちゃんと産んでくれてる……朝のルーチンは問題なしっと」

軽く手を伸ばし、乾いた空気の中に広がる風を感じた。だが、その風の中には、どこかひんやりとした、妙な気配が混じっている。まだ秋の名残を感じさせる季節だというのに、どこか焦げたような、土埃の混じった匂いが鼻をかすめた。

「……何か、変だな」

ふと振り返ると、遠く西の空に、灰色がかった雲の帯が低く垂れ込めているのが見えた。雲の動きは早く、風向きもいつもと逆だ。

「……嵐?」

だが、それは自然のものとは思えなかった。悠翔の中の“加護”が、無言の警鐘を鳴らす。

──これは、ただの天気の変化じゃない。

異変はすぐに表面化した。

午後、いつものように訪れた村の市場で、数人の村人が騒然としていた。

「黒い霧が、西の森から広がってきてるって!」 「昨日、見回りに行ったハンスが戻ってないんだ」 「魔獣が……また活性化し始めてるんじゃないかって話だ」

悠翔は耳を傾けながら、心の奥に冷たいものが流れ込むのを感じた。

「まさか……“黒い雲”って、あの時、北の山で見かけたやつと……」

あの時、ただの魔獣ではない“何か”を感じ取った。女神の加護によって助けられたが、あの黒雲の中には、意志のようなものが宿っていた。

悠翔は市場を後にし、急ぎ自宅兼牧場へ戻ると、ひなのの姿を探した。

「ひなの、いる?」

「うん、ここにいるよ、おにいちゃん」

妹はいつも通りのんびりと布で人形を作っていた。その無垢な表情に、少しだけ救われる。

「しばらく外に出ないで。いいか、今日は絶対、俺の目の届く場所にいてくれ」

「……うん?」

何かを感じ取ったのか、ひなのは小さくうなずくと、素直に従ってくれた。

その夜、悠翔は久々に“ジゼル”と連絡を取った。

《久しぶりね、悠翔。どうしたの?》

「西の空に……黒い雲が出た。村の方でも、魔獣が活発化してきてる」

《そう……そちらにも現れたのね。あれは、“闇の根”の影響》

「闇の根……?」

《古い話よ。この世界の大地の奥深くには、まだ“魔力”とは別の、もっと深い力が眠っているの。それが、少しずつ目覚めかけている》

悠翔は言葉を失った。ジゼルの声も、どこか沈んでいた。

《あなたの“加護”は、そうした変化にも反応する。きっと、これから先、あなたが必要になる》

「俺が……」

《けれど、戦うだけが役割じゃない。あなたには、あなたのやり方で、この世界を守る道がある》

静かに通信は切れた。悠翔は目を閉じ、胸に手を当てる。

──俺に、できることを。

翌朝、村の長老たちが会議を開いた。そこへ招かれた悠翔は、重い口を開いた。

「このままだと、黒雲は村にも届きます。俺の加護がそう告げています。……準備を始めてください。避難のための」

「……避難、か……」

「でも悠翔くん、あんたの牧場がなきゃ、村は越冬できないよ?」

「分かってます。だから、まずはこの牧場を中心に、避難所を整備します。必要な物資は俺が用意する。加護を使って、時間稼ぎもできると思う」

村人たちの目が、真剣に彼を見つめる。

「皆を守る。……だから、信じてほしい」

その言葉に、静かにうなずく者が一人、また一人と増えていった。

こうして、天城悠翔の決意のもと、村は“黒雲の時代”へと備えを始めた。

そして彼自身もまた、見えぬ脅威に向けて、心の準備を固めていく。

彼のそばには、変わらず妹のひなのと、育てた命たちがいた。


---

【イベントログ】

イベント達成:村人会議にて「避難計画」提案成功

新たな兆候:西の空に「黒雲」出現、魔獣活性化

ジゼルからの通信:「闇の根」の存在確認

次の目標:「黒雲」の影響を防ぐため、牧場を中心に避難所を構築



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