『今日も平和に暮らしたいだけなのに、スキルが増えていく主婦です』

チャチャ

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29話『スキルとカレーと、懐かしの人たち

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「うわ~、やっぱりこのカレー屋さん美味しい~!」

数日後。
麻衣は元職場の先輩・篠原さん、そして他の元同僚ママ2人とランチをしていた。
再会からの流れで、「元○○部・ランチ会」が突発的に開催されたのだ。

子連れOKのおしゃれカフェの個室。
各テーブルにはお子様ランチとカレーセット。そして、よくしゃべるママたち。

「……でね、うちの下の子が突然“スライムになりたい”って言い出してさ」

「なにそれ、かわいすぎる! ていうかスライムの概念、どこで知ったの?」

「たぶんゲームの影響~」

と、わいわい話す中、篠原さんがふと真面目な顔になった。

「そういえば、田仲さん……なんか雰囲気、変わったよね」

「え?」

「昔より、すごく……優しいっていうか、包容力? 余裕ある感じ」

「そ、そうですか? ママってやること多いから、強くなったのかも……?」

麻衣は笑いながら返したけれど、内心ちょっとドキリとした。
(まさか、これもスキルのせい……?)

そういえば、最近のスキル一覧にこんなものが追加されていた。

──新スキル取得:「母なるオーラ(常時発動型)」
・周囲に安心感を与え、会話や交渉が円滑になる場合があります。

(……もう完全に、人間バフ要員なんだけど!?)

ちょっと恥ずかしくなってきて、カレーにスプーンを沈めて黙る。

そんな麻衣の表情を見て、篠原さんが笑った。

「でも、こういう再会っていいよね。あのときはさ、仕事に必死で、余裕なんてなかったじゃない」

「ほんと、毎日怒られてた気がします……あ、篠原さんにじゃないですよ!?」

「えー、私も多分ちょっとは言ってたよ?(笑)」

笑いあっていると、話題がふと変わった。

「そういえば田仲さんの旦那さんって、うちの部署で地味に評判いいのよ。『困ったらとりあえず田仲さんに聞こう』ってなってるの。本人知らないだろうけど(笑)」

「え……そうなんですか?」

「うん。多分あの人、なんか“相談しやすい空気”出してるのよ。昔はもっと堅かった気がするけど……家庭円満オーラってやつ?」

(それ、スキルの余波……なのか……!?)

まさか夫の“聞き上手スキル”が発動しているとは思わず、麻衣は内心びっくりしていた。

***

その夜。

「なあ、今日さ、会社の若い子が『田仲さんに相談するとなんか安心するんですよね~』って言っててさ。そんなタイプだっけ、俺?」

夕食後、食器を片づけながら雄一がぽつりと呟いた。

「……うん、なんか最近、落ち着いた雰囲気あるよ」

「そう? それ、歳取ったってことじゃなくて?」

「それもあるけど、たぶん“家でスキルアップ”してるんだよ」

「スキル?」

「ふふっ、秘密」

麻衣は小さく笑って、ひなのの皿を洗いながら、心の中でつぶやいた。

(わたしのスキルが、家族の“いつもの日常”を少しでも守ってくれてるなら、それでいい)

スキルは便利な魔法じゃない。
でも、ほんの少し、誰かの疲れや不安を軽くすることができるのなら──

それはきっと、すごく素敵なことだ。


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