『今日も平和に暮らしたいだけなのに、スキルが増えていく主婦です』

チャチャ

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75話『スキル共鳴と、見えないつながり』

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 その日、麻衣はいつも通りカフェの開店準備をしていた。

 「おはようございます~」

 常連のお客さん、穂積さんがにこやかに入ってくる。仕事の合間にふらりと立ち寄る、物腰の柔らかい中年男性だ。

 「今日もアイスコーヒーで?」

 「うん、お願い。あ、あと最近出してるレモンケーキもね。あれ、実は密かにハマってるんだ」

 「ふふ、ありがとうございます」

 注文を取りながら、麻衣はふと、穂積さんのまわりにうっすらとした「光のもや」が浮かんでいるのを感じた。

 (……この色、前に見たことある。誰かと“気持ち”がつながりそうなときの色)

 

 そのとき――

 カラン、と扉のベルが鳴った。

 入ってきたのは、なんとスミレさん。以前、麻衣に「占い師っぽい雰囲気」で話しかけてきた、謎の多い女性だ。

 「こんにちは。もしかして、穂積さん?」

 「あれ……? スミレさん? えっ、なんでここに?」

 ふたりは驚いた様子で顔を見合わせた。どうやら、以前イベントで顔を合わせた程度の知り合いらしい。

 「偶然って……ふしぎよね。最近、前よりも“人とつながる感覚”が強くなってる気がするの」

 そう言うスミレさんの周囲にも、同じ色のもやが漂っていた。

 「もしかして……」
 麻衣はスマホをそっと確認する。

 《スキル共鳴反応:2名》
 《状況:非アクティブ・自然発生》

 (やっぱり……スキルって、私だけじゃない)

 

 その日、カフェはいつも以上に和やかだった。

 偶然出会ったふたりが笑い合い、共通の話題で盛り上がり、気づけば麻衣も自然と会話に混じっていた。

 「なんだか、こういうのも“スキル”かもしれませんね」

 「うん。……目に見えないけど、大事な“つながり”ってやつね」

 スミレさんがふわりと笑う。
 麻衣も、そっと頷いた。

 

 夜、家に帰ると――

 スマホにはまた通知が届いていた。

 《周辺環境における共鳴反応が安定しました》
 《スキルレベル:+1/パッシブスキル“ゆるやかな共鳴”が開放されました》

 「……なんか、すごいの来たかも」

 麻衣は目を丸くしたあと、にやっと笑った。

 (でも……これなら、悪くない)

 スキルが“誰かとつながる力”なら、自分らしく、ほんの少しずつ広げていけたらいい。
 ――今日の出来事のように。


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