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74話『ひなのと、ふしぎなきもち』
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ある日、保育園の帰り道。
ひなのはママと手をつなぎながら、いつもよりちょっとだけ静かだった。
「ひなの、どうしたの? 眠い?」
麻衣がのぞき込むと、ひなのは小さく首をふる。
「ううん。……きょう、ほいくえんでね」
「うん?」
「ことりさん、いたの」
「ことりさん?」
「そー。おそとで、ちいさいの。……おともだちが、つかまえようとしてて……」
ひなのの声が小さくなった。
「……こわがってた。ことりさん」
麻衣は立ち止まる。
「それ、ひなのに分かったの?」
ひなのは、ちょっと考えてから、こくんとうなずいた。
「うん。なんか、ここ(胸のあたり)が、きゅってなった」
麻衣は目を見開いた。
まるで、自分がスキルに気づき始めたあの頃のような――そんな感覚。
(もしかして……ひなのも?)
その夜、ひなのはいつもより早めにお布団に入りながら、お気に入りのくまさんぬいぐるみをぎゅっと抱きしめていた。
「ママ、スキルって、ふしぎ?」
麻衣はちょっと驚いたけれど、優しくうなずいた。
「うん。ふしぎだし、たのしいよ。でも、ちょっとむずかしいときもあるかな」
「そっか……。ひなのもね、ことりさんの“きもち”が、なんとなくわかったの。……“こわいよ”って」
「うんうん、ひなの、やさしいね」
「でもね……たすけたいって思ったのに、ことりさん、ぴゅーってにげちゃったの。……ひなの、できなかった」
そう言ってしゅんとなるひなのを、麻衣はぎゅっと抱きしめた。
「それだけで、すごいことだよ。たすけたいって思えたことが、一番たいせつなの」
ひなのは、ほんの少しだけ笑った。
その夜、ひなのが眠ったあと。
麻衣のスマホには、再び通知が表示された。
《スキル共鳴反応 検知》
《対象者:田仲ひなの》
「やっぱり……」
思わず麻衣は息をのむ。
まさか、わが子にも“スキルの片鱗”が芽生え始めているなんて。
でも、心配よりも先に、胸の奥がじんわりとあたたかくなる。
(この子の優しさが、ちゃんと世界に届くように……見守っていこう)
翌朝。
「ひなの、ことりさん、もうこわくないといいな」
保育園に向かう道すがら、そうつぶやいたひなのの言葉に、麻衣は小さくうなずいた。
もしかしたら。
この家には、“家族みんなで紡いでいくスキル”が、静かに広がっているのかもしれない。
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ひなのはママと手をつなぎながら、いつもよりちょっとだけ静かだった。
「ひなの、どうしたの? 眠い?」
麻衣がのぞき込むと、ひなのは小さく首をふる。
「ううん。……きょう、ほいくえんでね」
「うん?」
「ことりさん、いたの」
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「そー。おそとで、ちいさいの。……おともだちが、つかまえようとしてて……」
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「……こわがってた。ことりさん」
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「それ、ひなのに分かったの?」
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その夜、ひなのはいつもより早めにお布団に入りながら、お気に入りのくまさんぬいぐるみをぎゅっと抱きしめていた。
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「そっか……。ひなのもね、ことりさんの“きもち”が、なんとなくわかったの。……“こわいよ”って」
「うんうん、ひなの、やさしいね」
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そう言ってしゅんとなるひなのを、麻衣はぎゅっと抱きしめた。
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その夜、ひなのが眠ったあと。
麻衣のスマホには、再び通知が表示された。
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「やっぱり……」
思わず麻衣は息をのむ。
まさか、わが子にも“スキルの片鱗”が芽生え始めているなんて。
でも、心配よりも先に、胸の奥がじんわりとあたたかくなる。
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翌朝。
「ひなの、ことりさん、もうこわくないといいな」
保育園に向かう道すがら、そうつぶやいたひなのの言葉に、麻衣は小さくうなずいた。
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