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03 土人形ゴーレム
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ニコルとウルバン。彼らは私が作った土人形、通称ゴーレムだ。
ゴーレムを作るには、土魔法を中級までレベルアップしなければならない。私は土の中でいろんな物を収集している間に、いつの間にか中級を超えていた。
レベルは足りている。だがゴーレムを作る粘土はどれでも良いというわけではない。魔力を帯びた良質な粘土と、魔素を含んだ水を捏ねて作る。そして、仕上げに精霊石を土人形に埋め込んで、術者の魔力を注ぐのだ。
説明しよう。
精霊石とは精霊の亡骸の集合体といわれている。精霊は自然界のあらゆるところにいる。個体には力はない、小さな小さな存在である。しかし、集まればかなりの力を持ち自然界を揺さぶる。それは嵐となり雷となり、燃え盛る炎となる。そして力尽きる。
そうしてできたのが精霊石だ。
良質な魔力を帯びた粘土は土の中で見つけた。白っぽい粘土層に青白い光を帯びた粘土の塊があったのだ。げんこつぐらいの塊で中に精霊石の欠片が散らばっている。
魔素を含んだ水は、魔法のレベルが一定以上上がると、どの属性の魔法使いでも作れる。
私は魔力を帯びた良質な粘土を持ち帰って、魔素を含んだ水を作り、粘土を捏ねて半分を胴体にして足をつけた。精霊石の欠片を胴体に入れて、魔力を注ぎ込む。するとどういうわけかクモっぽくなったのだ。
多足の昆虫やら虫は好きではない。しかし、この不格好な見た目のクモっぽいゴーレムには愛着が持てた。
このクモは私によく懐き、穴掘りをすると私の後をちょろちょろと素早く追いかけてくる。穴の中で何かを見つけて私が喜ぶと、クモも跳ねたり手を叩いたりして喜んだ。
その所為かどうかは知らないが、このクモの特性が“探索”になった。穴の中でクモが突然閃くと、ここ掘れワンワンよろしく壁や穴底や天井を足でパシパシと叩くのだ。そこを掘ってみると、始めは布とか食器等のガラクタが埋まっていた。折角クモが見つけたものだ。私は土の中に倉庫部屋を作ってガラクタを収納した。
クモもレベルが上がるらしく、やがて硬貨や魔石などを見つけるようになった。賢いクモである。
私はそのクモに探索君一号という名前を付けた。
この探索君一号が、非常に良質な魔力を帯びた粘土層を探し当てたのだ。そして前回と同じように、精霊石の欠片が魔力を帯びた良質な粘土層に埋まっていた。
「これで頑張って人型を作るわ。探索君一号も作り変えようか?」
しかしクモは手足とか首を横に振って断ってくる。
「いいの?」
首を縦に振る。そう言えばこのゴーレムは最初からクモ型だった。
材料が手に入ったので、クモの次は念願の人型にした。クモは頭が良いけれど喋らない。人型にしたらなにがしかの返事ができるようになるかもしれない。
魔力を帯びた粘土と魔素を含んだ水を捏ねて人形を作る。材料からそんなに大きなものはできなくて五十センチくらいの人形だ。
最初は女の子にして、可愛いドレスとエプロンを着せた。
次に作った人形は、きりっとして強そうな男の子にした。服装も皮鎧に剣や盾を装備させてみた。
彼らの頭に精霊石を埋め込んで魔力を注ぎ込むと、土人形は最初はゆっくりとぎこちなく動いて私に挨拶をしたのだ。
『初メマシテ、アガーテオ嬢サマ』
『ヨロシク、アガーテ様』
そうしてできた私のゴーレムたちは、どういうわけか自我のようなものを持ち、私が土の部屋にいない時は、彼らの自由にさせているので、知らない内にレベルアップして身体も大きくなった。だけど心配なので、危険なことはしないようにお願いしている。
自分の作った土の部屋に帰ると落ち着く。侯爵家の自分の部屋よりも自分の家という感じがする。いつまでもここに居たい。
しかし、だいぶ時間が経っている。侍女たちが探しているかもしれない。
「“ディギング、センドサウンズ” 部屋に接続、音声送付」
壁に小さな穴を掘って、自分の部屋の様子をうかがう。
『アガーテ妃殿下~』
『まあ、どちらにいらっしゃったのでしょう』
『すぐにお探しして』
侍女たちが探している。彼女たちが中庭に来る前に戻ろう。
そうして私は、何食わぬ顔で中庭から部屋に戻ったのだ。
「まあ妃殿下、どちらに」
「テラスにいたの、ごめんなさいね」
侍女たちは深く追究しなかった。
「お疲れでございましょう」
「ささ、お休みくださいませ」
みんなにベッドに押し込まれてしまった。もう傷も心も癒やされてしまったのだけど。
ちなみに私がザルム侯爵家から連れて来ている侍女は、私の侍女ではなくお父様がつけた。私とヘルムート殿下を監視し、お父様に報告するための侍女だ。私のことは端からバカにして、世話をするのもおざなりだ。
◇◇
翌日になって、また侍女たちがいなくなったので庭に出る。地下の部屋に行くと少し様子が変わっていた。
ゴーレムたちは土人形に目鼻を描いた顔だったのだが、ほとんど人と変わらないくらいマシになって、服もどこであつらえたのか王宮の制服で、侍女も護衛もそのまま王宮勤務できる感じだ。
彼らは部屋を整え、周りから適当に道具を拾ってきて、修理と整備をする、出来る土人形なのだ。
「しかし、ニコルとウルバンのその服はどこで手に入れたの?」
後で何やかや言われるのは困るが。
『アガーテ様、これらはマドハンドが仕立ててくれました』
「マドハンド?」
『はい、“サモンマドハンド”』
ザッ!
いや、ちょっと、なに、床からたくさん手が生えた。
『マドハンドでございます。ちゃんと清めております』
ニコルが恭しく私に向かって紹介をする。
ゴーレムを作るには、土魔法を中級までレベルアップしなければならない。私は土の中でいろんな物を収集している間に、いつの間にか中級を超えていた。
レベルは足りている。だがゴーレムを作る粘土はどれでも良いというわけではない。魔力を帯びた良質な粘土と、魔素を含んだ水を捏ねて作る。そして、仕上げに精霊石を土人形に埋め込んで、術者の魔力を注ぐのだ。
説明しよう。
精霊石とは精霊の亡骸の集合体といわれている。精霊は自然界のあらゆるところにいる。個体には力はない、小さな小さな存在である。しかし、集まればかなりの力を持ち自然界を揺さぶる。それは嵐となり雷となり、燃え盛る炎となる。そして力尽きる。
そうしてできたのが精霊石だ。
良質な魔力を帯びた粘土は土の中で見つけた。白っぽい粘土層に青白い光を帯びた粘土の塊があったのだ。げんこつぐらいの塊で中に精霊石の欠片が散らばっている。
魔素を含んだ水は、魔法のレベルが一定以上上がると、どの属性の魔法使いでも作れる。
私は魔力を帯びた良質な粘土を持ち帰って、魔素を含んだ水を作り、粘土を捏ねて半分を胴体にして足をつけた。精霊石の欠片を胴体に入れて、魔力を注ぎ込む。するとどういうわけかクモっぽくなったのだ。
多足の昆虫やら虫は好きではない。しかし、この不格好な見た目のクモっぽいゴーレムには愛着が持てた。
このクモは私によく懐き、穴掘りをすると私の後をちょろちょろと素早く追いかけてくる。穴の中で何かを見つけて私が喜ぶと、クモも跳ねたり手を叩いたりして喜んだ。
その所為かどうかは知らないが、このクモの特性が“探索”になった。穴の中でクモが突然閃くと、ここ掘れワンワンよろしく壁や穴底や天井を足でパシパシと叩くのだ。そこを掘ってみると、始めは布とか食器等のガラクタが埋まっていた。折角クモが見つけたものだ。私は土の中に倉庫部屋を作ってガラクタを収納した。
クモもレベルが上がるらしく、やがて硬貨や魔石などを見つけるようになった。賢いクモである。
私はそのクモに探索君一号という名前を付けた。
この探索君一号が、非常に良質な魔力を帯びた粘土層を探し当てたのだ。そして前回と同じように、精霊石の欠片が魔力を帯びた良質な粘土層に埋まっていた。
「これで頑張って人型を作るわ。探索君一号も作り変えようか?」
しかしクモは手足とか首を横に振って断ってくる。
「いいの?」
首を縦に振る。そう言えばこのゴーレムは最初からクモ型だった。
材料が手に入ったので、クモの次は念願の人型にした。クモは頭が良いけれど喋らない。人型にしたらなにがしかの返事ができるようになるかもしれない。
魔力を帯びた粘土と魔素を含んだ水を捏ねて人形を作る。材料からそんなに大きなものはできなくて五十センチくらいの人形だ。
最初は女の子にして、可愛いドレスとエプロンを着せた。
次に作った人形は、きりっとして強そうな男の子にした。服装も皮鎧に剣や盾を装備させてみた。
彼らの頭に精霊石を埋め込んで魔力を注ぎ込むと、土人形は最初はゆっくりとぎこちなく動いて私に挨拶をしたのだ。
『初メマシテ、アガーテオ嬢サマ』
『ヨロシク、アガーテ様』
そうしてできた私のゴーレムたちは、どういうわけか自我のようなものを持ち、私が土の部屋にいない時は、彼らの自由にさせているので、知らない内にレベルアップして身体も大きくなった。だけど心配なので、危険なことはしないようにお願いしている。
自分の作った土の部屋に帰ると落ち着く。侯爵家の自分の部屋よりも自分の家という感じがする。いつまでもここに居たい。
しかし、だいぶ時間が経っている。侍女たちが探しているかもしれない。
「“ディギング、センドサウンズ” 部屋に接続、音声送付」
壁に小さな穴を掘って、自分の部屋の様子をうかがう。
『アガーテ妃殿下~』
『まあ、どちらにいらっしゃったのでしょう』
『すぐにお探しして』
侍女たちが探している。彼女たちが中庭に来る前に戻ろう。
そうして私は、何食わぬ顔で中庭から部屋に戻ったのだ。
「まあ妃殿下、どちらに」
「テラスにいたの、ごめんなさいね」
侍女たちは深く追究しなかった。
「お疲れでございましょう」
「ささ、お休みくださいませ」
みんなにベッドに押し込まれてしまった。もう傷も心も癒やされてしまったのだけど。
ちなみに私がザルム侯爵家から連れて来ている侍女は、私の侍女ではなくお父様がつけた。私とヘルムート殿下を監視し、お父様に報告するための侍女だ。私のことは端からバカにして、世話をするのもおざなりだ。
◇◇
翌日になって、また侍女たちがいなくなったので庭に出る。地下の部屋に行くと少し様子が変わっていた。
ゴーレムたちは土人形に目鼻を描いた顔だったのだが、ほとんど人と変わらないくらいマシになって、服もどこであつらえたのか王宮の制服で、侍女も護衛もそのまま王宮勤務できる感じだ。
彼らは部屋を整え、周りから適当に道具を拾ってきて、修理と整備をする、出来る土人形なのだ。
「しかし、ニコルとウルバンのその服はどこで手に入れたの?」
後で何やかや言われるのは困るが。
『アガーテ様、これらはマドハンドが仕立ててくれました』
「マドハンド?」
『はい、“サモンマドハンド”』
ザッ!
いや、ちょっと、なに、床からたくさん手が生えた。
『マドハンドでございます。ちゃんと清めております』
ニコルが恭しく私に向かって紹介をする。
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