オヤジ栽培〜癒しのオヤジを咲かせましょう〜

草加奈呼

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草木好子3

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 いつまでも、おじさんと言うのもなんなので、名前をつけることにした。
 うーん、うーん、おじさんっぽい名前……。

 植物……花……
 花太郎……花男……。

 ………………。

 ダメだわ。
 私ってば、ネーミングセンスが壊滅的ね。
 自分のセンスのなさをこれほど呪ったことはない。

 そうよ、別に下の名前にする必要なんてないんだわ。
 見た目堅苦しいおじさんだし、苗字でも……。

「植木さん、ってどう?」

「そのままですね」

「いいじゃない、わかりやすくて。
 はい、植木さん! 決定ーー!」

 私は安直に名前をつけたが、
 植木さんはなんとなく嬉しそうだった。






 植木さんとの同棲生活が始まってから数週間で、わかった事がある。
「おかえりなさい」と言ってくれる人がいるのは、悪くない。
 正確には人ではないのだけれど。

「ただいまー」

「お帰りなさい、好子さん」

 今日も笑顔で出迎えてくれる植木さん。
 なぜ植木さんが咲いたのかは謎だけど、あの花屋のご婦人が言ったように、なぜか癒される。
 植木さんには、着替えの間だけ布をかぶってもらっている。自分の腕(枝?)で取ることもできるけど、覗かれたことは一度もない。とても紳士だ。
 着替えが終わると布を取り、私をずっと見ている。
 ……きっと、植木さんなりに見守ってくれているのだろうけど、わりと恥ずかしい。

「すみません、好子さん」

「なに?」

「そろそろ、水をいただけませんか?」

「ああっ、ごめん、忘れてた!」

 植木さんの食事は水。朝と夜の2回、霧吹きで水をあげる。
 水をあげると、とても気持ちよさそうにするから、もっとあげたくなるけど、あげすぎはやはりダメなようで、一度止められたことがある。
 そろそろ、植物用栄養剤でも買ってあげようかと思っている。
 今度の週末に、ホームセンターでも行ってみよう。

 ──週末、買ってきた植物用栄養剤をあげたら、植木さんはとても喜んだ。

「ありがとうございます! 元気が湧いてくるようです!」

 なんとなく、若々しくなった気がする。
 ……気がするだけだけど。



 そしてその日の夜…………。

 ううーーん、なんだか寝付けないなぁ。
 時計を見ると、午前2時。明日も休みだから問題はないけど……。
 私は、水でも飲もうと起き上がった。
 植木さんは……。 …………寝てる。
 植物でも寝るんだ。
 ふふっ、寝顔見たの初めてかも。

 ちょっと風にあたろうと、ベランダに出ようとした時────

「えっ!?」

 見知らぬ男が、ベランダでうずくまっていた。
 ド、ドロボー!?

 私は、すぐに後退りした。
 窓を……! 

 窓を閉めようとしたが、男が何かを挟んできて間に合わなかった。
 私は身の危険を感じて、部屋の奥に逃げた。
 男はナイフらしきものをチラつかせて、室内に入ってきた。

「う、植木さん! 植木さんっ……!!」

 植物の植木さんに、何ができるかはわからないが、とにかく大声で植木さんを起こした。
 私が人の名を叫んだから誰かいると思ったのか、男は一瞬部屋を見回した。そして、私のほかに誰もいないとわかると、男はこちらに向かってきた。

「た……助けて……。助けてよ! 植木さん!!」
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