オヤジ栽培〜癒しのオヤジを咲かせましょう〜

草加奈呼

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草木好子4

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 もうダメだと涙した。
 その直後、男はなぜか盛大に転んだ。
 と、同時に、ガチャンと何かが割れる音がした。
 暗がりの中で、何があったのだろうか……?
 おそるおそる電気をつけてみると、男は転んだのではなかった。
 なんと、男の上に植木さんが乗っていたのだ。
 男は打ちどころが悪かったのか、気絶している。
 植木さんは…………。

「う、植木さんっ!!」

 植木さんは、倒れた拍子に植木鉢が割れ、足の根が剥き出しになっていた。

「好子さん……。怪我はありませんか?」

「わ、私はなんともないわ! それよりもあなたが……!」

「そうですか、好子さんが無事で良かった。
 昼間いただいた栄養剤のおかげで、なんとか動けました」

 動けるんだ!? と、驚いたけど、それどころではなかった。
 植木さんを、元に戻さないと……!
 私は、ちらばった土を集めようとしたが……。

「好子さん! 先に、警察に連絡ですよ!
 私は、少しの間なら大丈夫です!」

 そ、そうだった……!
 私は、すぐに110番通報した。

 警察は、すぐに来てくれた。男は途中で目を覚ましたようだけど、植木さんが上からガッチリと押さえつけてくれていたので、逃げられる事はなかった。
 夜遅く何事だと、様子を見に来た近隣の人達に、事情を説明して何度も謝った。

 犯人の男は、最近この辺りをターゲットにしていた強盗らしい。
 運悪く、私の部屋のベランダに侵入したのだ……。

 夜も遅いので、事情聴取は簡素に行われ、詳細は後日ということになった。
 犯人が逮捕されて、ようやく静けさが戻った。



 私は、あまりの出来事に呆けてしまっていた。
 そうだ、植木さんの植木鉢を直さないと……。
 警察が来ている間、私は植木さんの足元に布をかけておいた。
 変な詮索をされたら、説明が長くなりそうだったからだ。
 植木鉢のかけらを拾いながら、さっきまでの事を振り返っていた。
 植木さんが動いていなかったら、私は…………。

「植木さん…………。あの…………。
 ありが、とう…………」

 緊張の糸が切れ、私はポロポロと泣いてしまった。

「あと、ごめんなさい…………。植木鉢、割れてしまって…………。
 明日、新しいのを買いに行くから…………」

 植木さんは、ポンポンと、優しく頭を撫でてくれた。
 私は、年甲斐もなくわんわん泣いてしまった。
 その間、植木さんは何も言わずに、ただ私の頭を撫で続けてくれた。植木さんの足の根を戻さなきゃいけないのに、私は一晩中泣いてしまった。

 そして、夜が明けた。

「ご、ごめんなさい……!」

 私は、寝不足と涙で腫れ上がってしまった顔で、植木さんに謝り倒した。
 結局、朝まで植木さんを放置してしまい、少し萎れた感じになっていた。
 慌ててバケツを用意し、土をかき集め、植木鉢を用意できるまで入っていてもらう事にした。
 どうやって植木さんを担ごうかと思案したけど、人型植物は膝まであるので、まず椅子に座らせてからバケツに足の根を入れる事でスムーズにできた。
 そして大急ぎでホームセンターへ向かい、植木鉢を買ってきた。
 先程と同じ要領で、植木鉢に入れ替える。

「ありがとうございます、好子さん。
 これで、元気になれますよ」

 お礼を言うのはこっちの方なのに、植木さんは丁寧にお辞儀をした。

 その日からの私は、植木さんをとても丁重に扱うようになった。
 ……といっても、やる事はそんなに変わらないのだけど。

 今までは、毎日の水と、時々栄養剤をあげればいいと思っていたけれど、たまに土を入れ替えたり、植木鉢をきれいにしたりなど、思いついた事はできるだけやってきた。

 そして、数十年が過ぎた──────
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