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1章
3.
しおりを挟むアルトさんは私を抱っこしたまま扉を開けると真っ直ぐに受付へと向かった。
「リタ、ギルマスに報告があるのだか」
「了解致しました。確認して来ますので少々お待ちください。で、その子はアルトさんのお子さんですか。いつの間に。今まで何処に隠してたんですか。」
受付嬢のリタさん。言いたい事だけ言ってさっさと二階に確認に走っていった。
真面目そうに見えて中々面白い人みたい。
「アイツ。いつもながら言いたい事だけしっかり言いやがって、、、」
ブツブツぼやくアルトさん。
いつもなんだ。笑
さほど時間も掛からずリタさんが戻ったきた。
「ギルマスがお会いになるとの事です。執務室までお願いします。そうそう、お子さんも一緒にどうぞとの事ですよ。よかったね、お嬢ちゃん」
「俺の子じゃ無い。変な勘違いで妙な噂になったら面倒だろうが。」
「あら、そんな事、最初から分かってますよ。貴方はそんな面倒な事をするタイプじゃ無いでしょ。面白いから揶揄ってるだけだし気にしないください。さぁ、ギルマスがお待ちですのでどうぞ。」
さらっと流された。
リタさん中々の強者だ。
二階への階段を上がり突き当たりがどうやらギルマスの執務室らしい。
一体どんな人かも分からないし、私の話を信じて聞いてもらえるかも疑問で正直不安しかない。
アルトさんに抱っこのままで連れられ、俯き気味に廊下を見下ろした。
「ミーナ、ギルマスは人柄の良い、信頼のおける人だからそんなに気にしなくても大丈夫だ。部屋に入ったらまず、簡単に事情を説明して君の知人を呼んで貰うから」
そう説明され、アルトさんはドアをノックする。
「【疾風の刃】リーダーのアルトです。」
「入れ」
中から男性の声がした。
アルトさんの肩から顔を上げ、ギルマスに視線を向けてみる。
「アルト、俺に話があるとの事だが、まさかお前の子供か。それの報告に態々出向いたのか。」
ギルマスと思われる男性は笑いを堪えて此方に声を掛けた。
「急に訪ねてすいません。報告がありますが先ずは子供の事ではありませんので。」
苦笑いでアルトさんが答える。
「あはは。ちょっと面白いからお茶食ってみただけだ。で、報告とは。」
「、、、はい。実はマース街の近くで馬車が襲撃されている処に出くわし、この子を保護したのですが何やら重要な事を黙っていてここ王都のギルドに知人を訪ねる予定だったからその人に会うまで事情を説明出来ないと言われてとりあえず連れてきました。なので、この子の知人を呼んでいただいて本人に説明させたいのですが。」
要約、本題に触れた処で床に下ろしてもらい、正面からギルマスの顔を覗いた。
「あっ、エド叔父さん。なんだ、ギルマスって叔父さんだったんだ。変に緊張して損した。」
「うん?おー、ミーナか。なんだ、態々襲われる馬車に乗ってたのか。相変わらずというかなんというか。」
そこに立っていた男性は私の知人、エド叔父だった。
とりあえずソファを進めてもらったので掛ける。隣に半分呆れて顔のアルトさんと共に。
「君の知人はギルマスと言う事ですね。なんか色々心配して損した気分です。じゃあ、とりあえず事情を説明してくれるのかな。」
「まあ、そう焦るなアルトよ。この子はアズベリー領の子で来年学園に入学する為の準備に今回呼んだわけだ。領土の就学制度の対象でしばらくは俺の家にいるから逃げも隠れもしないだろう。まあ、気にはなるだろうし、この後時間ぎあるなら家で飯でも食いながらこいつの話を聞くってのでどうだ。なぁ、ミーナ。おまえもここより家でゆっくりご飯食べながらのがいいよな。」
「その方が良いよ。なんだかんだで朝からなんにも食べて無いしお腹空いた。アルトさんそうして欲しいです。ダメですか。」
ほぼ強引にこの後の予定を決め、1時間半後に叔父さんの家に集合との事でアルトさんは一度帰宅して行った。
さて、私はと言うとその後ちゃっちゃと仕事を片付けた叔父さんと馬車にゆられて叔父宅に到着。
エントランスにてご挨拶を済ませ今は応接室で叔父さんを待っている処。
「待たせたな。で、とりあえず先に説明して貰おうか。」
今日あった色々な事を漏らすことなく説明した。
「なるほどな。とりあえず、先ずは役人について行かず誰にも情報をもらいていないのは良い判断だ。でだ、実はマースで闇オークションが開催され、違法奴隷の取引があるのではとの噂が最近流れてて、明日その件で丁度城に行く予定だったからお前も一緒にこい。それでだ、ドラゴンの件だが先に契約してしまって国に報告したら良い。アイツもお前の事は知っているから無下にはしないだろう。後はアルトにどこまで説明するかだな。処で就学までの間、冒険者を続けるのか。」
「うーむ。一応そのつもり。両親から聞いてはいるけど今、アズベリー領の守護竜がいないんだよね。それでね、やっぱり守護竜になってくれる子をさがしたいの。竜が亡くなったから30年位は加護が継続するとは聞いたけど、私の生まれた年に居なくなったし後20年位でしょ。この黒竜が守護竜になってくれても嬉しいけど長寿の種族を何百年も縛り付けるのも可哀想だし、もし他にあの地に根付いてくれる子が居るなら探したいなと。ダメかな。」
確かに竜の事もだけどまだまだ冒険も続けたい。叔父さんに甘える事にはなるけど領主の事はせめて成人してからにしたいのが本音。うちの家系は特殊で直系の一番目の子供のみに相続権が有るから1年半前、5歳にして公爵位は継いだもののまだ、自由にしていたい。一応、建前は叔父さんがして行っていて、私の事は国王と極一部の重役しか知らないはず。まあ、私が子孫も残さず死んで仕舞えば相続順の高い人が継ぐことにはなるのだけど竜の加護の力が落ちてしまう。この事も極秘事項故に他人に説明も出来ないからあえて平民でいてる状況を利用しないのはないと考えてる。
「そうだな。但し条件がある。それが出来るなら構わない。俺が代理をしてる訳だし少し位此方の都合も聞いて貰いたいかな。」
中々ズルい大人だ。
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