嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第6幕:来るべき日の前奏曲(プレリュード)

第3-5節:不自然な動きをするリカルド

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 それに対してリカルドは息を呑んでから、呆れたようにため息を漏らす。

「……バカモノ。その言葉、本気にしたらどうする? 僕だって男なんだ、感情が限界を超えたら自制できるか分からんぞ?」

「ふふっ、だから良いって言ってるのに」

「随分と積極的だな? 旅先で気分が高揚でもしているのか?」

「んー、どうなんだろ? 自分でもよく分からない。ただ、私はリカルドを愛しているし、心を許してるっていうのは本当だよ。……もっともっとあなたを知りたい」

「……っ!」

 突然、リカルドは頬も耳も真っ赤に染めて私から離れ、焦った様子で背を向けてしまった。そして顔だけをこちらに向けて、チラチラと私の様子をうかがっている。その黒くて美しい瞳は熱病にかかったかのようにボーッとしている。

 どうしたのかと気になって私が近寄ろうとすると、なぜか彼は手振りを交えつつ慌ててそれを制止させる。

「待て、シャロン! そのまま! うんっ、キミの気持ちは分かったからっ、そのままの位置にいてくれ! 頼む!」

「っ? 急にどうしたの、ホントに?」

「なんでもない! いやっ、なんでもなくはないがっ、なんでもないのだ!」

「ワケが分からないんだけど……」

 状況が掴めず、私としては困惑して眉をしかめるしかなかった。

 リカルドの行動の意味も、支離滅裂しりめつれつな言葉も何もかもが不可解だ。焦っているのと照れているのは、なんとなく伝わってくるけど……。

 その後、彼は私に背を向けたまま立ち上がり、大きく深呼吸をしてから依然として赤いままの顔だけをこちらに向ける。

「部屋とベッドの件は承知した。では、そろそろ僕は礼服に着替えることにする。キミも適当なところでドレスに着替えて、待機をしておいてくれ」

「あ、それなら私もさっさと着替えておこうかな。急に晩餐ばんさん会の案内をする人が来たら困るし」

「……っ……」

「どしたの、リカルド? そんな恨めしそうな目で私を見て」

「いや……だからこれから僕は着替えをするんだが……」

「もしかして見られるのが照れくさいとか? ふふっ、いいじゃん。むしろ手伝ってあげるよ。だから私の着替えも手伝ってくれると嬉しいな」

「ぼ、僕はナイルの部屋に行って着替えてくるっ! キミはここにポプラやリーザを呼んで、ドレスに着替えておくといい! そのあとは応接室で一緒にお茶でも飲んで休むこととしよう!」

 リカルドはそう言い放つと、乱雑に礼服を持って逃げるように部屋を出て行った。

 それにしても、なぜあんなにも取り乱していたのだろう? こちらには顔だけを向けるという不自然な体勢だったし。変なの……。





 リカルドが部屋を出て行ったあと、スティール家のメイドさんを通じてポプラやリーザさんを呼んでもらい、私は彼女たちの助けを借りてドレスに着替えた。ソフィアちゃんもリーザさんと一緒に来て、部屋の隅で様子をずっと眺めてたけどね。

 こうして着替えが終わると、私はポプラを連れて応接室に移動。そこにはすでに礼服に着替え終えたリカルドや軍服姿のナイルさんがいて、スティール家の執事さんからお茶をれてもらっている。

 ちなみにその執事さんはノエルくん直属の人みたいだから、お茶に毒が仕込まれているということはないだろうと思う。もちろん、それでも念を入れてナイルさんが飲む前にチェックをしていたけどね……。

 また、この時のリカルドはすっかりいつも通りの様子に戻っていて、りんとした表情でソファーに深く腰掛けている。そんな彼の隣に私は座り、雑談をしながらゆっくりとくつろぐのだった。

 そんな感じで時を過ごしていると、不意にドアをノックする音が室内に響き、執事さんが応対に出る。そして小声で廊下にいる誰かとやり取りをしてから、リカルドのところへ歩み寄る。

「リカルド様、玄関にアラン准将じゅんしょうがいらっしゃっているそうです。面会をご希望とのことですが、いかがなさいますか?」

「おぉ、アランか! 問題ない、通せ。――そうだ、相手がアランであればナイルが下まで出迎えに行ってやるといい。短い時間でもふたりだけで話す機会になるしな。ただし、僕に関する愚痴ぐちや悪口は程々にな」

愚痴ぐちや悪口なんて言いませんよ……。ただ、出迎えの件については承知しました!」

 リカルドの指示を受けたナイルさんは力強く返事をすると、素早い身のこなしで部屋を出て行った。しかもいつもは冷静な彼が、心なしか嬉しそうだったような気がする。瞳も輝いていたし。


(つづく……)
 
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