嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

文字の大きさ
142 / 178
第6幕:来るべき日の前奏曲(プレリュード)

第3-4節:弱い心をさらけ出すふたり

しおりを挟む
 
 ――まずヴァーランドまでの道中で、私たちはアンデッドの群れに襲われた。何かの妨害があるだろうと想定していたとはいえ、それを超えるほどの規模と罠。一歩間違えれば、全滅していたところだった。

 それを考えれば、被害が最小限だったのは奇跡と言っていいかもしれない。

 そして関所での一悶着ひともんちゃく。ノエルくんが気を利かせてアリアさんを出迎えに来させてくれなかったら、もっとややこしい事態になっていたに違いない。少なくともこんなにすんなりとヴァーランドへ到着できていなかったと思う。


 ……それからこれは個人的なことだけど、私にとって心理的な影響が大きいのはアリアさんの存在。私は彼女とリカルドの関係を勝手に色々と想像してしまって、心のざわめきが収まらない。

 そうした様々な出来事によって精神の疲労が半端なくて、私は我慢も片意地を張ることも出来そうになかったのだ。さすがにちょっと気弱になってるのかも……。

 だから私は素直に今の気持ちをリカルドに伝える。

「……うん。私、リカルドと一緒だと安心する。正直、ひとりでいると不安や怖さが破裂しそうになりそうでさ」

「……っ……シャロン……」

「あはは、ダメだなぁ、私……。こんなことを口にしたら、もっとリカルドに負担を掛けちゃうって分かってるのに。本当は妻である私がリカルドの精神的な支えになってあげないといけないのに。だってリカルドはもっと大変なはずだもん」

 自然と自嘲が漏れつつ、私はリカルドを見つめながら呟いた。


 ――と、その直後のこと。


 不意にリカルドは強く私を抱き締めてくる。さらに体を引き寄せるようにした上、その手にも徐々に力が入る。

 私の心と体を包み込む彼の匂いと体温。その心地良さに脳の奥が痺れる。突然の出来事に私は少し戸惑いつつも、為すがままになっている。

 そんな中、リカルドは想いを吐き出すように私の耳元でささやく。

「……キミは充分に僕の心の支えになってくれている。それに誰だって不安になる時はあるんだ、気にすることはない。だからあまり自分を責めないでくれ」

「リカルド……」

「僕も普段は気を張っているが、不安や恐怖がゼロというわけじゃない。でもシャロンを護るためだと思うと、その気持ちは不思議と消える。勇気が湧いてくる。実は僕はそういう小心者なんだ。臆病者なんだ。――ふふっ、失望したか?」

「ううん、リカルドは私やみんなのために頑張ってくれてる。偉いし、すごいし、頼もしいよ」

 私は想いを込めて抱き締め返しつつ、彼の後頭部を優しく撫でた。彼に対する母性のような愛しさがあふれ、不思議と心の一体感を覚える。ドキドキとした感情というよりも、安心感や護りたいという気持ちが強い。

 リカルドが自分自身の弱い部分を私にさらけ出してくれたからかな……。

「……こんな僕の本心、打ち明けたのはキミが初めてだ。姉上にだって話したことはない。今後もキミ以外にはありえんだろうな」

「あらためて思い返してみると、確かにリカルドは小心者なのかも。だって私が初めてお義姉様とお会いした時も、すごい取り乱し方だったし。あれはお体の弱いお義姉様にもしものことがあったらって、リカルドが不安に思ったからだもんね」

「あはは……そうだな……」

 今にしてみると、あれは私にとってもリカルドにとっても懐かしい思い出だ。

 まぁ、私たちが打ち解けるきっかけになった出来事でもあるし、強く印象に残っているのは当然だよね。

 ……そっか、リカルドが私に対して過保護な扱いをするのも、根本にそうした不安な気持ちがあるからなのかもしれない。だとすれば、私のこともお義姉様と同様に大切な存在だと想ってくれてるって捉えても良いのかな?

 でもそれは私にも同じような面があると言える。リカルドのことを大切に想っているからこそ、彼の心が気になったり嫉妬しっとしたり、命を賭けてでも力になりたいって感じたり。

 ひょっとすると、私とリカルドは似た者同士なのかもしれない……。

「で、僕たちが同室なのは良いとして、ベッドまで一緒なのは本当に良いのか? 僕は床で寝ようか?」

「いいよ、一緒で。床だと寒いし、疲れも取れないよ。それに私、もしリカルドにがあるなら受け入れても良いって思ってるから……」

 水くさいなぁと感じつつ、私はクスクスと微笑んだ。

 もちろん、今の言葉には別に変な意識があるわけじゃなくて、ごく自然のことというか、思っていることを純粋な気持ちで口にしただけ。あっけらかんとしていて、照れくささや後ろめたさのようなものはない。


(つづく……)
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています

鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。 けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。 指示を出さない。 判断を奪わない。 必要以上に関わらない。 「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。 それなのに―― いつの間にか屋敷は落ち着き、 使用人たちは迷わなくなり、 人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。 誰かに依存しない。 誰かを支配しない。 それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。 必要とされなくてもいい。 役に立たなくてもいい。 それでも、ここにいていい。 これは、 「何もしない」ことで壊れなかった関係と、 「奪わない」ことで続いていった日常を描く、 静かでやさしい結婚生活の物語。

無能と蔑まれ敵国に送られた私、故郷の料理を振る舞ったら『食の聖女』と呼ばれ皇帝陛下に溺愛されています~今さら返せと言われても、もう遅いです!

夏見ナイ
恋愛
リンドブルム王国の第二王女アリアは、魔力を持たない『無能』として家族に虐げられ、厄介払いとして敵国ガルディナ帝国へ人質に送られる。死を覚悟した彼女だが、あまりに不味い帝国の食事に耐えかね、前世の記憶を頼りに自ら厨房に立つことを決意する。 彼女が作った温かい家庭料理は、偶然離宮を訪れた『氷の皇帝』レオンハルトの孤独な心を癒していく。やがてその味は堅物騎士団長や宰相をも虜にし、食べた者を癒す奇跡から『食の聖女』と讃えられるように。 価値を知った故郷が「返せ」と言ってきたが、もう遅い! これは、料理で運命を切り開き、最強皇帝から世界一甘く溺愛される、美味しい逆転シンデレラストーリー。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい〜long version

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。 *こちらは元の小説の途中に、エピソードを追加したものです。 文字数が倍になっています。

【完結】島流しされた役立たず王女ですがサバイバルしている間に最強皇帝に溺愛されてました!

●やきいもほくほく●
恋愛
──目が覚めると海の上だった!? 「メイジー・ド・シールカイズ、あなたを国外に追放するわ!」 長年、虐げられてきた『役立たず王女』メイジーは異母姉妹であるジャシンスに嵌められて島流しにされている最中に前世の記憶を取り戻す。 前世でも家族に裏切られて死んだメイジーは諦めて死のうとするものの、最後まで足掻こうと決意する。 奮起したメイジーはなりふり構わず生き残るために行動をする。 そして……メイジーが辿り着いた島にいたのは島民に神様と祀られるガブリエーレだった。 この出会いがメイジーの運命を大きく変える!? 言葉が通じないため食われそうになり、生け贄にされそうになり、海に流されそうになり、死にかけながらもサバイバル生活を開始する。 ガブリエーレの世話をしつつ、メイジーは〝あるもの〟を見つけて成り上がりを決意。 ガブリエーレに振り回されつつ、彼の〝本来の姿〟を知ったメイジーは──。 これは気弱で争いに負けた王女が逞しく島で生き抜き、神様と運を味方につけて無双する爽快ストーリー!

プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!

山田 バルス
恋愛
 王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。  名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。 だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。 ――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。  同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。  そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。  そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。  レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。  そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春
恋愛
長年の夢である世界旅行に出掛けた叔父から、寂れた牧場を譲り受けた少女、イーヴィン。 彼女は畑を耕す最中、うっかり破壊途中の岩に頭を打って倒れた。 そして、彼女は気付くーーここが、『ハーモニーハーベスト』という牧場生活シミュレーションゲームの世界だということを。自分が、転生者だということも。 どうやら、神々の悪戯で転生を失敗したらしい。最近流行りの乙女ゲームの悪役令嬢に転生出来なかったのは残念だけれど、これはこれで悪くない。 近くの村には婿候補がいるし、乙女ゲームと言えなくもない。ならば、楽しもうじゃないか。 婿候補は獣医、大工、異国の王子様。 うっかりしてたら男主人公の嫁候補と婿候補が結婚してしまうのに、女神と妖精のフォローで微妙チートな少女は牧場ライフ満喫中! 同居中の過保護な妖精の目を掻い潜り、果たして彼女は誰を婿にするのか⁈ 神々の悪戯から始まる、まったり牧場恋愛物語。 ※この作品は『小説家になろう』様にも掲載しています。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

処理中です...