嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第6幕:来るべき日の前奏曲(プレリュード)

第3-6節:王国軍人の来訪

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 リカルドの話から察すると、リカルドもナイルさんもそのアラン准将じゅんしょうという人と面識があるみたい。どんな人なんだろう?

 気になった私はリカルドに小声でいてみることにする。

「ねぇ、リカルド。アラン准将じゅんしょうって誰? 准将じゅんしょうってことは王国軍でそれなりに地位のある方のようだけど……」

「うむ、アランは王国軍の将官だな。現在はポラストンの統治を担当している」

「ポラストンっていうと、この地域の最西端に位置する王家直轄地で、風車の資材を荷揚げしている港や現在のトレイル王国との主要路であるドリュー隧道ずいどうもそこにあるんだよね?」

「そうだ。そのポラストンの総督そうとくとして、アランが今回の地方会議に参加するということだ。もちろん、直轄地の統治はあくまでも王様の代行という位置づけだから、有事の際の指揮系統においては爵位しゃくいを持つ各領主の下となる」

 リカルドの話を聞き、私は少しだけ状況を把握した。

 そっか、王国軍内では階級が高い将官であっても、身分はあくまでも平民。実質的に領地を所有して、その地での全権を有している『貴族』とは根本的に違う。だから爵位しゃくいの最下位である男爵だんしゃくよりも下ということになるわけか……。

 もっとも、将官にまで出世すれば、王家から小さな領地を賜って貴族同様の待遇を得ている人もいるだろうけど。

「ただし、彼の場合はちょっと特殊な立場にいるから、それなりに発言力を持っているがな。僕と同等かそれ以上か――いや、今は王家の血筋であるキミが僕に嫁いできたから、優劣の判断は難しいか」

「特殊な立場って、どういうこと? あ、それとリカルドやナイルさんはアラン様と面識があるようだけど……」

「ははは、それらについては彼がここに到着してから話すこととしよう」

 リカルドの反応を見る限り、アラン様の背景には色々と込み入った事情があるみたいだった。ただ、それを隠そうという感じはなく、あとできちんと話してくれるということなので今はくのを留めておくことにする。

 その後、程なくしてドアがノックされ、ナイルさんに続いて壮年の男性が応接室内に入ってくる。状況的におそらくその人がアラン様なのだろう。

 体格はゼファルさんと同じくらいにガッシリとしていて、茶色の短髪とキリッした目顔立ち。ほこりひとつない白色の綺麗きれいな軍服を身に付け、胸にはいくつものきらびやかな勲章、腰にはさやに見事な彫刻が施されているミドルソードが差されている。


 ……あれ? 私、どこかでこの人と会ったことがあったかな? なんとなく見覚えがあるような気がする。でも記憶を探ってもパッと出てこないから、他人の空似という気がしないでもない。

 私はスッキリとしない想いを抱えつつ考え込んでいると、アラン様と思しき人物が私たちの前まで歩み寄って最敬礼をする。

「大変ご無沙汰しております、リカルド様。そしてお初にお目にかかります、シャロン様。王国軍准将じゅんしょうで、ポラストン総督そうとくのアランでございます」

「久しいな、アラン。元気そうでなによりだ」

「初めまして、アラン様。シャロンです。以後、お見知りおきください」

 私はその場で立ち上がり、丁寧ていねいに頭を下げた。そして再び椅子に腰掛けると、それを見計らってリカルドがアラン様と会話を始める。

「わざわざ僕の宿所まで出向いてくるとは律儀だな、アラン。どうせ会議や晩餐ばんさん会などの場で顔を合わせるだろうに。挨拶あいさつならその時で構わなかったのだぞ」

「対外的にはそれで良いのかもしれませんが、リカルド様とは個人的なご縁がございます。そのため、リカルド様がヴァーランドへご到着との一報を受け、こうして飛んで参りました」

「そうか……。ちなみにジョセフだが、相変わらず元気で僕の力になってくれている。今回の会議でフィルザードを留守にする間も、公務は彼に任せてきた。本当に助かっているぞ」

「左様ですか。元気でいると聞き、私も安堵あんどいたしました」

 アラン様はいつになく穏やかな表情になって胸を撫で下ろした。

 でもその反応が私には不可解に感じ、思わず首を傾げてしまう。だってジョセフが元気でいると、なぜアラン様が安堵あんどするのか? 例えそのふたりが知り合いだったとしても、こんなにも柔和な顔をするものだろうか?

 つまりふたりの間には知り合いということ以上の何かがあるに違いない。


(つづく……)
 
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