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第6幕:来るべき日の前奏曲(プレリュード)
第3-7節:アランとフィルザード家の関係
しおりを挟むそもそも話の流れを考えれば、なぜリカルドが何の脈絡もなくジョセフのことに言及したのかということも疑問だ。
そんな感じで私が訝しんでいると、リカルドがクスッと微笑んで声をかけてくる。
「シャロン、アランの顔を見て何か気付くことはないか?」
「……え?」
私は思わずキョトンとしてしまった。
だって気付くことと言われても、それだけではピンと来ないから。端整な顔立ちだとか、思ったよりも優しそうな印象だとか、視点や捉え方を変えれば気付くことなんてありすぎる。
でもきっとリカルドは私がアラン様に対して何か引っかかっていることを察して、そう問いかけてきたんだろうな。
アラン様とジョセフか……。
――って、あれ?
そういえば、よく見るとそのふたりって顔立ちがよく似ているような気がする。ううん、顔立ちだけじゃなくて雰囲気までそっくりだ。
そっか、そういうことだったのか!
ようやく私は確信のようなものに行き当たり、息を呑む。
「もしかしてアラン様はジョセフと血縁関係にある方なのでは? 実はアラン様が応接室に入ってきた時、どこかでお会いしたことがあるような気がしたのです。でも思い当たる節がなくて当惑していたのですが、やっとその理由に気付きました」
「さすがだな。アランはジョセフの実子なのだ。現在は王都で暮らしているサリド公爵に婿入りし、ポラストンへ単身赴任している。そしてサリド公爵は先王の弟の娘だから、キミの従姉に当たる。つまり僕たちはアランと親戚ということになるな」
「そうだったのですかっ!? なるほど、サリド公爵の旦那様という立場であると同時に、王国軍内では准将としてポラストンの統治を任されているのですね」
「細かい経緯は複雑なので省くが、結論としてはそういうことだ。さっき話に出たが、彼の発言力が云々というのはそうした理由からだ。状況次第ではアラン殿下とお呼びしなければならないこともあるだろう」
リカルドの話を聞き、私は納得して大きく頷いた。アラン様がジョセフの息子であるならふたりがよく似ているのは当然だし、リカルドやナイルさんと面識があってもおかしくない。
一方、私たちの反応を見たアラン様は苦笑しながら身を小さくする。
「私はあくまでも平民出身。軍人として王都の警護を務めていた際、たまたま妻との縁が重なったに過ぎません。由緒ある辺境伯直系のリカルド様や王家の血筋であらせられるシャロン様とは根本的に立場が違います」
「謙遜するな。息子のスコールがいずれは公爵を継ぐことになる。現在だってサリド公爵の婿という立場だ。出自がどうであれ、公爵家の一員なのは間違いないではないか。それに准将として王国軍でもポラストンの統治でも、しっかりと仕事をしている。もっと胸を張っていい」
「……全ての者がリカルド様のように寛大なお考えを持っていれば、私も苦労はないのですが」
「まぁ、確かに貴族の世界は色々と面倒くさい面もあるからな。せめて僕たちの前では少しくらい息をつくといい。遠慮も気遣いも無用だ。なによりフィルザード家では家臣であろうと使用人であろうと全て家族。当然、ジョセフの子であるキミも家族なのだから」
「っ! ありがとうございます……ッ!」
アラン様はあらためてリカルドに対して深々と頭を下げた。一瞬だからよく見えなかったけど、その瞳は涙で潤んでいたような気がする。
リカルドもアラン様も心が通じ合っている感じがして、なんか良いな……。
「シャロン、ちなみにアランは剣術においてナイルの兄弟子に当たる。実力も相当なものだぞ。その腕を買われ、ギル様から王家に伝わる宝剣のひとつを授かったくらいだからな」
「えっ? それは凄い! さすがポラストンの統治を担う御方、文武に優れて頼もしいことです!」
私の言葉に対し、アラン様は照れくさそうにしながら視線をナイルさんに向ける。
「確かに私もそれなりに剣を使えますが、腕はもはやナイルの方が上です。――そうだよな、ナイル?」
「いやいや、私なんてまだまだアランさんには及びません。そもそも得意な型が異なりますから、比較するのは難しいと思います」
「阿呆、そこは素直に頷いておけ。俺がお互いの実力を見抜けていないとでも思うのか? この場は兄弟子の顔を立てておこうだなんて生意気だし、それこそ失礼だぞ、ナイル」
「そうは言っても素直に頷いたら、それはそれでアランさんは怒るでしょうに。兄弟子への敬意を忘れるなーって。そうしたことを全て踏まえての返答ですよ」
「お前なぁ、そういうことは思ったとしても黙ってろ。何もかも真面目すぎるんだ、まったく」
アラン様はナイルさんとともに屈託のない笑みを浮かべた。
(つづく……)
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