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第一章 龍の料理人
第46話
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そして市場で何とか良い魚を手に入れ、来た道を引き返していると……。
「のぉ、ミノル。ちといいかの?」
「ん?なんだ?」
「さっき買っていた魚……妾は他の店でも同じやつを見た気がするのじゃが、敢えてあの店の物を選んだ理由はなんじゃ?」
「簡単な理由だよ。前にカミルに釣った魚の処理の方法を教えたろ?あれをやっていたからだ。」
カミルに簡単に理由を説明すると、彼女は納得したようでなるほど……と呟きながら頷いた。
しかし、今の説明に納得できなかったヴェルとマームは首をかしげている。
「その処理……って首のとこと尻尾のとこに傷をつけることなの?」
「そう。正確には中骨……私達で言う背骨を断ち切る処理のことだな。」
トントンと私は自分の首の後ろを軽く手で叩き、ヴェルに説明する。
「中骨を断ち切ることによって魚の血を抜くことができる。魚の生臭さの原因の一つが血だからな。」
「へぇ~……そうなんだ。」
今回購入した魚はどれもしっかりと血抜きがされているようだから、身に血が回っている……なんてことはまずないだろう。
「ちなみにそれが血抜きという作業なのじゃぞヴェル。」
自らの知識をひけらかすように、えっへんと威張りながらカミルはヴェルに言った。
すると、ヴェルは何かに気が付いたようでジト目でカミルのことを見つめる。
「……それ、ミノル受け売りの知識でしょ?」
「ギクッ……そ、そんなことないのじゃ~。」
ヴェルから視線を逸らすように明後日の方向を眺め、顔から一つ冷や汗を垂らしているカミル。もう仕草でバレバレなんだよな。
少し苦笑いしながらカミルのことを見ていると……。
「ま、まぁそ、それは一つ置いといてじゃな……今日の飯の話でもしようではないか?」
これ以上追求されることを拒んだらしいカミルは、別の話題を提案する。
「それは名案ね。ミノル、今日はいっぱい魚買ってたけど……それで何の料理を作ってくれるの?」
「今日は……そうだな。まず一品は刺身の盛り合わせだな。」
「さしみ?」
刺身という言葉にマームは首をかしげた。
「刺身っていうのはあの魚を食べやすいぐらいに切り分けた物のことだ。」
「おいしい?」
「あぁ、しっかり厳選した魚だからな。美味しいこと間違いなしだ。」
本当は醤油があれば刺身を食べるには最適なんだが……。今日もライムルソースかな。
頭の中で刺身に合わせるソースのことを考えていると、私の頭に一つある可能性が浮かんできた。
「……待てよ?ここは海街なんだよな。」
海街で売れ残った魚の行き先はどこだ?廃棄?……いや、そんなもったいないことはしないだろう。だとすれば何かしらに再利用している可能性がある。となればもしかすると……。
「魚醤があるかもしれない。」
魚醤とは、魚を発酵させて作る調味料のことで濃厚な旨味が特徴の調味料だ。見た目は完全に醤油だが、魚を発酵させているということもあって独特の匂いがする。
だが、魚醤があれば作れる料理の幅が大きく広がる。この世界にはある程度香草もあるようだし、魚醤とそれらを使えばタイ料理だって作れるはずだ。
「みんな、ちょっと寄り道してもいいか?」
「お、なんじゃ?何かまた買いたいものでも出てきたのか?」
「あぁ、だが売っているかどうかわからない。一旦この市場の人に聞いてみるよ。」
私は隅に隠れていた市場で働いている魔族の人に、この街で魚を発酵させて作る調味料はないか?……と尋ねてみた。すると、やはりあるらしいのだ。
そしてその人から教えてもらった市場の店へと足を運ぶと……。
「うっ……これは。」
「く、臭いのじゃあ~!!」
店の中に入っていないというのにこの悪臭……。臭いを表現するなら、完全に魚が腐っている臭いだ。強烈な悪臭にカミル達は鼻をつまんでいる。
まぁ……中では本当に魚を腐らせているのだから当然といっては当然なんだが……それにしても臭い。
「こ、こんな臭いところにいったい何があるというのじゃ!?」
「それは買ってみてからのお楽しみ……ってことで。カミル達はここでちょっと待っててくれ。すぐに買ってくるよ。」
カミル達を店の外で待たせて、私は一人中へと足を踏み入れる。店の扉を開けると、中には巨大な木の樽がいくつも並べてあって、その上に人がいた。
「すまない、魚を発酵させて作った調味料がほしいんだが……。」
「あ、今そっちにいきますね~。」
巨大な木の樽の上で何か作業をしていた魔族の男性は梯子から降りてこちらへと駆け足でやって来た。
「お探しのものはこちらで間違いないですか?」
そう言って私に差し出してきたのは瓶に入った朱色の液体……。間違いない。コレが魚醤だ。
「間違いなさそうだ。試しにちょっと味見とかってできたりしないか?」
「もちろんできますよ。多分ここでは臭いがキツくて味もなにもわからないと思うので……こちらにどうぞ?」
そして私は別室へと案内された。
「ふぅ、想像はしていたがやはり凄い臭いだな。」
「初めて来た人はそのせいで皆店の前で引き返していっちゃうんですけどね。まま……こちらをどうぞ。」
味見用に差し出されたそれを受け取り、私はまず匂いを嗅いだ。
「……意外と匂いはしない。」
「そうでしょう?そちらは青魚を原料にした比較的臭いの少ないやつなんです。でも味は濃厚ですよ?」
ペロッ……と舌で舐めてみると濃い塩味と濃厚な魚の旨味が口の中に広がった。そして後から鼻を抜ける青魚の匂い……。
「うん、思っていた通りの味だ。」
「他にもいろんなのがあるんですよ。例えば……こんなのなんてどうです?」
そして私は勧められるがまま色んな種類の魚醤を味見した結果、最も癖が少なかった青魚で作られた魚醤を購入したのだった。
「のぉ、ミノル。ちといいかの?」
「ん?なんだ?」
「さっき買っていた魚……妾は他の店でも同じやつを見た気がするのじゃが、敢えてあの店の物を選んだ理由はなんじゃ?」
「簡単な理由だよ。前にカミルに釣った魚の処理の方法を教えたろ?あれをやっていたからだ。」
カミルに簡単に理由を説明すると、彼女は納得したようでなるほど……と呟きながら頷いた。
しかし、今の説明に納得できなかったヴェルとマームは首をかしげている。
「その処理……って首のとこと尻尾のとこに傷をつけることなの?」
「そう。正確には中骨……私達で言う背骨を断ち切る処理のことだな。」
トントンと私は自分の首の後ろを軽く手で叩き、ヴェルに説明する。
「中骨を断ち切ることによって魚の血を抜くことができる。魚の生臭さの原因の一つが血だからな。」
「へぇ~……そうなんだ。」
今回購入した魚はどれもしっかりと血抜きがされているようだから、身に血が回っている……なんてことはまずないだろう。
「ちなみにそれが血抜きという作業なのじゃぞヴェル。」
自らの知識をひけらかすように、えっへんと威張りながらカミルはヴェルに言った。
すると、ヴェルは何かに気が付いたようでジト目でカミルのことを見つめる。
「……それ、ミノル受け売りの知識でしょ?」
「ギクッ……そ、そんなことないのじゃ~。」
ヴェルから視線を逸らすように明後日の方向を眺め、顔から一つ冷や汗を垂らしているカミル。もう仕草でバレバレなんだよな。
少し苦笑いしながらカミルのことを見ていると……。
「ま、まぁそ、それは一つ置いといてじゃな……今日の飯の話でもしようではないか?」
これ以上追求されることを拒んだらしいカミルは、別の話題を提案する。
「それは名案ね。ミノル、今日はいっぱい魚買ってたけど……それで何の料理を作ってくれるの?」
「今日は……そうだな。まず一品は刺身の盛り合わせだな。」
「さしみ?」
刺身という言葉にマームは首をかしげた。
「刺身っていうのはあの魚を食べやすいぐらいに切り分けた物のことだ。」
「おいしい?」
「あぁ、しっかり厳選した魚だからな。美味しいこと間違いなしだ。」
本当は醤油があれば刺身を食べるには最適なんだが……。今日もライムルソースかな。
頭の中で刺身に合わせるソースのことを考えていると、私の頭に一つある可能性が浮かんできた。
「……待てよ?ここは海街なんだよな。」
海街で売れ残った魚の行き先はどこだ?廃棄?……いや、そんなもったいないことはしないだろう。だとすれば何かしらに再利用している可能性がある。となればもしかすると……。
「魚醤があるかもしれない。」
魚醤とは、魚を発酵させて作る調味料のことで濃厚な旨味が特徴の調味料だ。見た目は完全に醤油だが、魚を発酵させているということもあって独特の匂いがする。
だが、魚醤があれば作れる料理の幅が大きく広がる。この世界にはある程度香草もあるようだし、魚醤とそれらを使えばタイ料理だって作れるはずだ。
「みんな、ちょっと寄り道してもいいか?」
「お、なんじゃ?何かまた買いたいものでも出てきたのか?」
「あぁ、だが売っているかどうかわからない。一旦この市場の人に聞いてみるよ。」
私は隅に隠れていた市場で働いている魔族の人に、この街で魚を発酵させて作る調味料はないか?……と尋ねてみた。すると、やはりあるらしいのだ。
そしてその人から教えてもらった市場の店へと足を運ぶと……。
「うっ……これは。」
「く、臭いのじゃあ~!!」
店の中に入っていないというのにこの悪臭……。臭いを表現するなら、完全に魚が腐っている臭いだ。強烈な悪臭にカミル達は鼻をつまんでいる。
まぁ……中では本当に魚を腐らせているのだから当然といっては当然なんだが……それにしても臭い。
「こ、こんな臭いところにいったい何があるというのじゃ!?」
「それは買ってみてからのお楽しみ……ってことで。カミル達はここでちょっと待っててくれ。すぐに買ってくるよ。」
カミル達を店の外で待たせて、私は一人中へと足を踏み入れる。店の扉を開けると、中には巨大な木の樽がいくつも並べてあって、その上に人がいた。
「すまない、魚を発酵させて作った調味料がほしいんだが……。」
「あ、今そっちにいきますね~。」
巨大な木の樽の上で何か作業をしていた魔族の男性は梯子から降りてこちらへと駆け足でやって来た。
「お探しのものはこちらで間違いないですか?」
そう言って私に差し出してきたのは瓶に入った朱色の液体……。間違いない。コレが魚醤だ。
「間違いなさそうだ。試しにちょっと味見とかってできたりしないか?」
「もちろんできますよ。多分ここでは臭いがキツくて味もなにもわからないと思うので……こちらにどうぞ?」
そして私は別室へと案内された。
「ふぅ、想像はしていたがやはり凄い臭いだな。」
「初めて来た人はそのせいで皆店の前で引き返していっちゃうんですけどね。まま……こちらをどうぞ。」
味見用に差し出されたそれを受け取り、私はまず匂いを嗅いだ。
「……意外と匂いはしない。」
「そうでしょう?そちらは青魚を原料にした比較的臭いの少ないやつなんです。でも味は濃厚ですよ?」
ペロッ……と舌で舐めてみると濃い塩味と濃厚な魚の旨味が口の中に広がった。そして後から鼻を抜ける青魚の匂い……。
「うん、思っていた通りの味だ。」
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