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オレ、故郷の津軽に、高速バスと電車を乗り継いで帰ってきた。
そんで今、お寺のお坊さんが貸してくれたコートを着て、
また借りたシャベルで、親の墓を雪かきして発掘中。
何も考えたくなくて、夢中で雪をかいて、墓を磨いて、
とっちゃが好きだった酒カップと、かっちゃが好きだった大福を置いて、手を合わせた。
もう、できることはないと思ってた墓参りができて……ちょっとだけ、洸に感謝した。
結局することもなくて、ずっと夢見てた健康ランドの休憩室で一泊。
オレ自身も、呪いの上下も丸洗いして、さっぱりした。
そして今朝、ついにパトラッシュを購入。
読みながら東京に戻ってきた。
まずは、渋谷。
日本のパトラッシュこと、ハチにごあいさつ。
いろんなことが叶って、ほくほくしながら渋谷をぶらつこうとした――その時。
スクランブル交差点の巨大パネルに、洸が映し出された。
まわりの奴らが「なんだなんだ」とザワつく。
アナウンサーが神妙な声で、「人気俳優・白瀬洸さんの緊急記者会見です」と説明する。
いつものキラキラは消えて、なんだか洸はやつれて見えた。
悲壮な顔で、ぽつりぽつりと話しはじめる。
「……実は、ミケが家を出てしまって……」
アナウンサーが、少し慌てた声で聞き返す。
「えっと、洸さんの飼い猫ちゃんが逃げちゃった、ということでしょうか?」
洸は、ただ一点を見つめていた。
ぽろりと、涙が頬を伝う。
あまりに綺麗な涙に、まわりの空気が止まったのがわかった。
そっとハンカチで目元を押さえる女子までいる。
「けっ……」
あんなに「実家の猫には数回しか会ったことない」とか
「会えなくても寂しくない」とか言ってたくせに。
やっぱり、俳優さまだけあるわ。
「全国の皆さまにお願いです。どうか、ミケを見つけてください」
美しい洸が、画面に向かって深々と頭を下げる。
それだけで、まわりの奴らが自然にこくりと頷いてるのがわかった。
みんなが、同じ気持ちになってやがる。
「ミケは三白眼で小柄、『ミケ』と赤字で名前が入ったシャ〇ルの白いスウェットの上下を着ているはずです」
アナウンサーの声が裏返る。
「えっ、ミケちゃんは……猫じゃなくて……え? えっ!?」
ふと、そばに立っていた、くりくり目の若い男と目が合う。
うさみみフードをかぶった、へんな奴。
そいつの視線が、下へ――オレの呪いの血塗りパーカーへ――下がっていき、
「ミケ……」
「言うでねばよっ!」
うさみみ野郎が、慌てて口を手でおさえる。
……が、もう遅い。しっかりだだ漏れてやがる。
オレは、三白眼でにらみを効かせてやった。
すると――
やたら綺麗な水色の目の男が、うさみみ野郎をかばうように一歩前に出てきて。
その瞬間、まわりにブリザードみたいな冷気が走った。
「おめ……ほんとに人間だが?」
画面の中では、洸がまた訴えてくる。
「それから、ミケは猫語を流ちょうに話し……」
ざわっ、とまわりが騒ぎはじめる。
「え、今のって猫語じゃね……?」
「あ、あいつ、ミケ!?」
一斉に、まわりの奴らがスマホを向けてくる。
「シャーーッ!」って威嚇してみるが――
効力ゼロ。
アナウンサーの声が高まる。
「今、連絡が入りました!ミケさんは渋谷スクランブル交差点で確認されました!」
洸の目が見開かれ、
次の瞬間、立ち上がってカメラの前から走り去っていく。
そこへ、画面にぐいっと割り込んでくるのは、洸の不健康マネージャー。
「ミケさーん!オレが間違ってたっす!
洸さんにはミケさんだけっす!帰ってきてくださいっす!
俺、首になるっす!!」
画面が切り替わり、洸が走る姿が映る。
オレのまわりは、人だかりと、スマホだかり。
テレビ局のカメラまで現れて、オレを取り囲む。
オレはパニックを起こして、駆け出した。
カメラ、カメラ、カメラ。
どこへ行ってもカメラに追いかけられ、新しいカメラが向けられてくる。
ゴロンッ!
足がもつれて、ひっ転ぶ。
もう、逃げられない……
そう思った、その時――
「ミケ!!!」
洸がキラキラした笑顔で、両手を広げてくる。
「洸……洸……」
オレは最後の力を振り絞って立ち上がり――
「なーにしてけでらんずや!」
と、必殺の飛び蹴りをかましてやった。
後を追ってきた息もたえだえのアナウンサーが、
「ミケさん、見事な猫語です、また飛び蹴りです!」
……訳の分かんないことを言ってやがった。
結局、オレは洸の腕の中に捕獲され、カメラの集中砲火を受ける中――
洸が、ぐいっと、その腹立つほど綺麗な顔を寄せてきて。
「好きだよ……ミケ」
「や……やめれって! てれび、だば……!」
オレは必死にじたばたもがくが、
洸に叶うはずもなく――
そのまま、洸はオレにキスを落としてきた。
……結局、オレたちは、熱烈なキスを日本中にお見舞いする羽目になった。
-------------------------------------
これにて、本編は完結です。
最後まで読んでくださった皆さま、フォローやいいね、コメント、本当にありがとうございました。
いつも大きな励みになっています。
今後少し忙しくなるため、いったん本作を「完結」として閉じさせていただきますが、
時間ができたら、ふたりの「その後」――ミケのデレは出るのか?!――を描いた番外編を、
不定期でお届けできたらと思っています。
いずれは、玲もユズも……!
また覗いていただけたら嬉しいです。
あらためて、ありがとうございました!
そんで今、お寺のお坊さんが貸してくれたコートを着て、
また借りたシャベルで、親の墓を雪かきして発掘中。
何も考えたくなくて、夢中で雪をかいて、墓を磨いて、
とっちゃが好きだった酒カップと、かっちゃが好きだった大福を置いて、手を合わせた。
もう、できることはないと思ってた墓参りができて……ちょっとだけ、洸に感謝した。
結局することもなくて、ずっと夢見てた健康ランドの休憩室で一泊。
オレ自身も、呪いの上下も丸洗いして、さっぱりした。
そして今朝、ついにパトラッシュを購入。
読みながら東京に戻ってきた。
まずは、渋谷。
日本のパトラッシュこと、ハチにごあいさつ。
いろんなことが叶って、ほくほくしながら渋谷をぶらつこうとした――その時。
スクランブル交差点の巨大パネルに、洸が映し出された。
まわりの奴らが「なんだなんだ」とザワつく。
アナウンサーが神妙な声で、「人気俳優・白瀬洸さんの緊急記者会見です」と説明する。
いつものキラキラは消えて、なんだか洸はやつれて見えた。
悲壮な顔で、ぽつりぽつりと話しはじめる。
「……実は、ミケが家を出てしまって……」
アナウンサーが、少し慌てた声で聞き返す。
「えっと、洸さんの飼い猫ちゃんが逃げちゃった、ということでしょうか?」
洸は、ただ一点を見つめていた。
ぽろりと、涙が頬を伝う。
あまりに綺麗な涙に、まわりの空気が止まったのがわかった。
そっとハンカチで目元を押さえる女子までいる。
「けっ……」
あんなに「実家の猫には数回しか会ったことない」とか
「会えなくても寂しくない」とか言ってたくせに。
やっぱり、俳優さまだけあるわ。
「全国の皆さまにお願いです。どうか、ミケを見つけてください」
美しい洸が、画面に向かって深々と頭を下げる。
それだけで、まわりの奴らが自然にこくりと頷いてるのがわかった。
みんなが、同じ気持ちになってやがる。
「ミケは三白眼で小柄、『ミケ』と赤字で名前が入ったシャ〇ルの白いスウェットの上下を着ているはずです」
アナウンサーの声が裏返る。
「えっ、ミケちゃんは……猫じゃなくて……え? えっ!?」
ふと、そばに立っていた、くりくり目の若い男と目が合う。
うさみみフードをかぶった、へんな奴。
そいつの視線が、下へ――オレの呪いの血塗りパーカーへ――下がっていき、
「ミケ……」
「言うでねばよっ!」
うさみみ野郎が、慌てて口を手でおさえる。
……が、もう遅い。しっかりだだ漏れてやがる。
オレは、三白眼でにらみを効かせてやった。
すると――
やたら綺麗な水色の目の男が、うさみみ野郎をかばうように一歩前に出てきて。
その瞬間、まわりにブリザードみたいな冷気が走った。
「おめ……ほんとに人間だが?」
画面の中では、洸がまた訴えてくる。
「それから、ミケは猫語を流ちょうに話し……」
ざわっ、とまわりが騒ぎはじめる。
「え、今のって猫語じゃね……?」
「あ、あいつ、ミケ!?」
一斉に、まわりの奴らがスマホを向けてくる。
「シャーーッ!」って威嚇してみるが――
効力ゼロ。
アナウンサーの声が高まる。
「今、連絡が入りました!ミケさんは渋谷スクランブル交差点で確認されました!」
洸の目が見開かれ、
次の瞬間、立ち上がってカメラの前から走り去っていく。
そこへ、画面にぐいっと割り込んでくるのは、洸の不健康マネージャー。
「ミケさーん!オレが間違ってたっす!
洸さんにはミケさんだけっす!帰ってきてくださいっす!
俺、首になるっす!!」
画面が切り替わり、洸が走る姿が映る。
オレのまわりは、人だかりと、スマホだかり。
テレビ局のカメラまで現れて、オレを取り囲む。
オレはパニックを起こして、駆け出した。
カメラ、カメラ、カメラ。
どこへ行ってもカメラに追いかけられ、新しいカメラが向けられてくる。
ゴロンッ!
足がもつれて、ひっ転ぶ。
もう、逃げられない……
そう思った、その時――
「ミケ!!!」
洸がキラキラした笑顔で、両手を広げてくる。
「洸……洸……」
オレは最後の力を振り絞って立ち上がり――
「なーにしてけでらんずや!」
と、必殺の飛び蹴りをかましてやった。
後を追ってきた息もたえだえのアナウンサーが、
「ミケさん、見事な猫語です、また飛び蹴りです!」
……訳の分かんないことを言ってやがった。
結局、オレは洸の腕の中に捕獲され、カメラの集中砲火を受ける中――
洸が、ぐいっと、その腹立つほど綺麗な顔を寄せてきて。
「好きだよ……ミケ」
「や……やめれって! てれび、だば……!」
オレは必死にじたばたもがくが、
洸に叶うはずもなく――
そのまま、洸はオレにキスを落としてきた。
……結局、オレたちは、熱烈なキスを日本中にお見舞いする羽目になった。
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これにて、本編は完結です。
最後まで読んでくださった皆さま、フォローやいいね、コメント、本当にありがとうございました。
いつも大きな励みになっています。
今後少し忙しくなるため、いったん本作を「完結」として閉じさせていただきますが、
時間ができたら、ふたりの「その後」――ミケのデレは出るのか?!――を描いた番外編を、
不定期でお届けできたらと思っています。
いずれは、玲もユズも……!
また覗いていただけたら嬉しいです。
あらためて、ありがとうございました!
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