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埋もれた真実
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「まるで詐欺師か泥棒のようね」
聖女は教会に集まった村人に向かい、そう言い放った。
アレンが「ちっ……」とうめき、ウロブ長老はぐっ、と言葉に詰まり、ディアスは瞳を伏せて俯いてしまう。
イブリースというアレンの弟は相変わらず不敵な視線を向けて来たし、村人の多くは目を伏せるかにらんでくるかのどちらかに別れた。
村長を含めた彼らはいきなり飛び出た自分たちへの非難に、戸惑いや怒りや恥じらいや悔しさや。
そして、よそ者が語るきれいごとだ、とばかりに怒りの色をその目に浮かべていた。
「まだら模様よりは蒼が良く売れたわけですか、村長。それにウロブ長老も」
「ライラ、それは違う……誤解だ」
ウロブが待ってくれと手を伸ばして語ろうとするが、ライラはその手を軽く払っていた。
汚らわしい、寄らないでと暗に告げていた。
聖女の怒りはおさまらない。
売った後に買い戻すわけでなく、奪い返すなんてそれこそ、恥知らずだわ。
子供を失った悲しみと、いずれは戻ることが決まっている安堵のはざまで、村人は子供たちを売り買いしていた。
同族が生き残るためとはいえ、それはやるべきことなの?
ライラはこの事実に思い至り、どうして自分に連絡が来なかったか痛く理解していた。
「私に何も言えないかった理由が良く分かりました。ついでに戻って来て欲しくなかった、その真意も、ね。どうして……こんなことになったの」
「だが、仕方なかった!」
「村長? 仕方ないことなどないでしょう! せめて、この十年間だけでも私を頼ってくれていたら……大神官様にお願いして状況を変えることだってできたかもしれないのに!」
悲しむ家族を救えたかもしれないのに。
子供を数年でも見知らぬ誰かのもとに、奴隷として売ることに抵抗がない親なんていないはずだ。
ライラはそう思う。
しかし、ウロブはそれは無理だ、と首を振って否定した。
「ライラ、これはこの村の行ってきたことなのだ。ずっと、昔からな……」
「呆れた……」
どうして! と、ライラは悲しみの声を上げる。
だが税が納められない貧しい家々はその子供を売ることで、代価を得て生活してきた過去があることも思うと、それ以上のことは言えなかった。
三年前から、取り戻すことを始めた首謀者だと思われるアレンがウロブに変わって口を開いた。
長老ばかりを責めるな、そんな感じだった。
「そうしなければ、誰もが罪人として処刑されただろうな、ライラ」
「アレン……貴方までそんなことを言うの」
「きれいごとじゃ生きていけない。この国では蒼狼は特にそうだ。扱いもひどく、身分も低い。子供が成長するのがある時期まで遅く、それを越えれば一気に成人になる。意味が分かるだろ? 人や魔族を買うよりも効率的なんだよ」
「効率的、なんて言葉をその口から言われるなんて思ってもみなかった。貴方は唯一の――精霊王様に誓いを立てた仲間だと思っていたのに」
「ライラ! だから、だろ。そうだったから取り戻すことにしたんだ。俺だって出ていなきゃ同じ目に遭っていた……ディアスのように、な」
師に名を呼ばれて真っ蒼のディアスはさらに俯いてしまう。
まだら模様よりも、蒼の方が価値がある。
それはライラの正しい予測だった。
つまり、ディアスは肉体労働に従事させるために売られた他の子供たちとは違ったというわけだ。
愛玩や物珍しい存在として――売られたのだろう。
その過去を掘る下げることが正しいとは、ライラには思えない。
つまり、これ以上むかしのことに言及するな、アレンは暗にそう言っていた。そうだったからと彼が言った一言もライラには安堵を与えた。
精霊王に誓ったあの約束を守り、アレンは自分のことを信じていてくれたのだと遠回しにだけど、分かったからだ。
「そうね……」
ライラはひとつだけ大きな間違いに気づいた。
推測の大まかな部分はただしかったけど、あることが大きく違った。
奴隷の売買ははるかな数世紀前からあったことだ。
それを今更、村の指導者たちを非難しても意味がない。意味はあるが、これから先止めさせるとかそれくらいにした役立たない。
誤りは、三年前からうしなった村人を奪還してきたことだった。
売って、それで得たお金で税金を払い、恣意的にだまって取り戻すようなことではなかったことだ。
いや、もしからしたらそれもあるかもしれないが……いまは正確ではなかった。
「いま広場に集められている子供たちはどういうことですか、村長」
「あれは隠していたんですよ、聖女様!」
「ゼフト神官、あなたまで――でも、そうね。あなたも関わっていた。隠していたとは?」
「あれだけ多くの神殿騎士がやって来たのです。最初はこの村にしにきたのかその本意がわからなかった。子供たちをさらう気なのかもしれない。そう思うのは当然です」
そう思うのも当然って……。
なんだろう、最後の一言が妙にこころを揺らした。なにかが頭の片隅に引っかかる、そんな感じだ。
奴隷の売り買い。
アレンと神官による奪還。
王太子の近衛騎士による誘拐事件。
どれが本当、なのとライラは聞いたすべてに首を傾げた。
聖女は教会に集まった村人に向かい、そう言い放った。
アレンが「ちっ……」とうめき、ウロブ長老はぐっ、と言葉に詰まり、ディアスは瞳を伏せて俯いてしまう。
イブリースというアレンの弟は相変わらず不敵な視線を向けて来たし、村人の多くは目を伏せるかにらんでくるかのどちらかに別れた。
村長を含めた彼らはいきなり飛び出た自分たちへの非難に、戸惑いや怒りや恥じらいや悔しさや。
そして、よそ者が語るきれいごとだ、とばかりに怒りの色をその目に浮かべていた。
「まだら模様よりは蒼が良く売れたわけですか、村長。それにウロブ長老も」
「ライラ、それは違う……誤解だ」
ウロブが待ってくれと手を伸ばして語ろうとするが、ライラはその手を軽く払っていた。
汚らわしい、寄らないでと暗に告げていた。
聖女の怒りはおさまらない。
売った後に買い戻すわけでなく、奪い返すなんてそれこそ、恥知らずだわ。
子供を失った悲しみと、いずれは戻ることが決まっている安堵のはざまで、村人は子供たちを売り買いしていた。
同族が生き残るためとはいえ、それはやるべきことなの?
ライラはこの事実に思い至り、どうして自分に連絡が来なかったか痛く理解していた。
「私に何も言えないかった理由が良く分かりました。ついでに戻って来て欲しくなかった、その真意も、ね。どうして……こんなことになったの」
「だが、仕方なかった!」
「村長? 仕方ないことなどないでしょう! せめて、この十年間だけでも私を頼ってくれていたら……大神官様にお願いして状況を変えることだってできたかもしれないのに!」
悲しむ家族を救えたかもしれないのに。
子供を数年でも見知らぬ誰かのもとに、奴隷として売ることに抵抗がない親なんていないはずだ。
ライラはそう思う。
しかし、ウロブはそれは無理だ、と首を振って否定した。
「ライラ、これはこの村の行ってきたことなのだ。ずっと、昔からな……」
「呆れた……」
どうして! と、ライラは悲しみの声を上げる。
だが税が納められない貧しい家々はその子供を売ることで、代価を得て生活してきた過去があることも思うと、それ以上のことは言えなかった。
三年前から、取り戻すことを始めた首謀者だと思われるアレンがウロブに変わって口を開いた。
長老ばかりを責めるな、そんな感じだった。
「そうしなければ、誰もが罪人として処刑されただろうな、ライラ」
「アレン……貴方までそんなことを言うの」
「きれいごとじゃ生きていけない。この国では蒼狼は特にそうだ。扱いもひどく、身分も低い。子供が成長するのがある時期まで遅く、それを越えれば一気に成人になる。意味が分かるだろ? 人や魔族を買うよりも効率的なんだよ」
「効率的、なんて言葉をその口から言われるなんて思ってもみなかった。貴方は唯一の――精霊王様に誓いを立てた仲間だと思っていたのに」
「ライラ! だから、だろ。そうだったから取り戻すことにしたんだ。俺だって出ていなきゃ同じ目に遭っていた……ディアスのように、な」
師に名を呼ばれて真っ蒼のディアスはさらに俯いてしまう。
まだら模様よりも、蒼の方が価値がある。
それはライラの正しい予測だった。
つまり、ディアスは肉体労働に従事させるために売られた他の子供たちとは違ったというわけだ。
愛玩や物珍しい存在として――売られたのだろう。
その過去を掘る下げることが正しいとは、ライラには思えない。
つまり、これ以上むかしのことに言及するな、アレンは暗にそう言っていた。そうだったからと彼が言った一言もライラには安堵を与えた。
精霊王に誓ったあの約束を守り、アレンは自分のことを信じていてくれたのだと遠回しにだけど、分かったからだ。
「そうね……」
ライラはひとつだけ大きな間違いに気づいた。
推測の大まかな部分はただしかったけど、あることが大きく違った。
奴隷の売買ははるかな数世紀前からあったことだ。
それを今更、村の指導者たちを非難しても意味がない。意味はあるが、これから先止めさせるとかそれくらいにした役立たない。
誤りは、三年前からうしなった村人を奪還してきたことだった。
売って、それで得たお金で税金を払い、恣意的にだまって取り戻すようなことではなかったことだ。
いや、もしからしたらそれもあるかもしれないが……いまは正確ではなかった。
「いま広場に集められている子供たちはどういうことですか、村長」
「あれは隠していたんですよ、聖女様!」
「ゼフト神官、あなたまで――でも、そうね。あなたも関わっていた。隠していたとは?」
「あれだけ多くの神殿騎士がやって来たのです。最初はこの村にしにきたのかその本意がわからなかった。子供たちをさらう気なのかもしれない。そう思うのは当然です」
そう思うのも当然って……。
なんだろう、最後の一言が妙にこころを揺らした。なにかが頭の片隅に引っかかる、そんな感じだ。
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