遠すぎた橋 【『軍神マルスの娘と呼ばれた女』 3】 -初めての負け戦 マーケットガーデン作戦ー

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27 ヤヨイ、遊撃隊を指揮する。そして機甲部隊の苦戦。

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 11月17日、1130。

 遊撃部隊は「東」中隊から各小隊持ち回りで出されることになった。

 一番手は昨夜夜間偵察を行ったことから「マルス」が請け負うことになった。

 今回は身軽な方がいいし、「覗き魔」が「監視」してくれる中で行うので通信兵は拠点に残した。グレイ曹長、リーズル、ヴォルフガング、フォルカー、フリッツ、そして機銃手と擲弾筒手が二人ずつの九名をヤヨイが指揮する。ビアンカは何故か落ち込んでいたので拠点に残した。自分がヘビごときで大騒ぎしたせいで皆を危険に晒してしまったのが恥ずかしかったのだろう。

「『覗き魔』、こちら『マルス』。これより拠点を出発、作戦を開始する」

「『マルス』了解。只今より追跡を開始する。貴隊に危険が迫れば信号弾で知らせる」

「『覗き魔』了解。アウト」

 日中のこと。ヤヨイたちは川の東岸の土手に隠れて北上した。

 丘からの事前の連絡で、集結していた敵はその数を増やし、しかもより丘に接近していることが分かった。後から来た兵たちがより南に、丘に近い方に進出してきたようだった。ヤヨイたちは東から、その最先鋒のあたりを側面攻撃する。

 敵を殲滅するのではなく、ニ三発お見舞いしたらすぐに退却する。途中敵が遊撃部隊に肉薄して来たら機銃で牽制してまともに敵と向き合わない。あくまでも味方の弾着距離内に逃げ込み、それでも追って来る敵は容赦なく各小隊の拠点からと丘からの擲弾筒の一斉射撃で滅多打ちにする。丘の至近に絶対に五十ミリ砲を近付けない。それを西と東両方から同時にやる。それが遊撃部隊の行動骨子だった。

 拠点から3キロほど北上し、前夜ビアンカがヘビに逆ギレした辺りで擲弾筒を据えた。

 土手の上に登ったヤヨイが双眼鏡を睨んで敵情を知らせ、擲弾筒の仰角を修正する。小隊の兵たちはヤヨイの周りで小銃を構え、警戒に当たる。

「仰角修正、いい? 」

 ヤヨイが確認した。

「修正完了。いつでもどうぞ」

「では、ファイエル!」

 ヤヨイにとって、初の実戦での攻撃命令となるものを下した。

 ズバッ! シューン・・・。

 擲弾は高い放物線を描いて敵陣上空に達し、地上10メートルほどで炸裂した。突然の攻撃に慌てふためく敵兵たちが双眼鏡に映った。

「次弾装填!」

「発射準備完了!」

「ファイエル!」

 第二弾目もほぼ同じ個所に落ち、爆発した。擲弾二発の攻撃で10数名ほどの戦果を挙げた。

「撤収!」

 ヤヨイたちが擲弾筒を分解して撤収作業を始めると、今度は数キロ先の西に爆発音が響いた。「西」中隊の遊撃隊がヤヨイたちと同じことを始めたのだ。

 最初は東に、次は反対方向の西に。敵陣地は合計でもわずか20名ほどのヤヨイたちに翻弄され、混乱し、昨夜の線まで撤退を始めた部隊もあった。

 このようにして遊撃作戦第一回目は成功裏に終わった。

 無事に全員帰営したヤヨイたちをカーツは労った。

「ご苦労だった。だが明日は敵も考えるだろうな。今度は砲兵隊を前面に出して牽制しつつ歩兵を肉薄させてくるかもしれないし、それと背後のゲリラたちを共同させて襲ってくるかもしれない。油断は禁物だぞ」

「今日は帯同しませんでしたが、やはり通信兵は必要だと思いました。二回目からは敵も警戒して的確に兵を送って来るかもしれませんので」

 ヤヨイの指摘に、カーツも頷いた。

「そうだな。信号弾による退却命令だけでは無理がある。二回目以降はそうしよう」

 とりあえず、降下二日目はそのようにして過ぎていった。

「学者」大隊はたった400弱の寡兵だが、寡兵なりによく四個連隊ほどに相当する大軍を抑えていた。そこへ機甲部隊によるゾマ陥落の知らせが届き、兵たちは皆気勢を上げた。

「チクショー! やってやるぜ、ゴラアッ!」

 お調子者のフォルカーが威勢よく拳を突き上げた。


 


 

 だがその翌日の18日。ゾマ陥落後さしたる待ち伏せもなく意気揚々と快進撃を続けていた機甲部隊は、ゾマにも勝る大きな壁に突き当たっていた。

 アイホーの橋は戦車の通行は無理だがトラックは可能。

 諜報員の「マーキュリー」はそう報告してきていた。

 だがそれよりも何よりも、原因は不明だが、航空偵察の時よりもはるかに川が増水し、水嵩も川幅も増していた。中の島に仮設橋を渡せば戦車は通れるはずだったのが、その肝心の中の島が水没し、仮設橋の敷設を不可能にしていた。さらに、敵は対岸の斜面を全て陣地化し、数十門の野砲を並べて待ち構えていた。

 これにはさすがの『バンディット』バンドルー中佐も渡河に二の足を踏まざるを得なかった。

 先に降りて渡河地点を制圧して待っていてくれていた空挺部隊の本隊、グールド大佐直卒の6個小隊は布陣する敵の関心を引いてしまったために強烈な圧力をモロに受けて、今も敵の砲弾が雨あられと落ち捲る中、耐えているのだった。家屋を拠点にできたナイグン部隊に比べ、自然の岩場を拠点にしていたアイホー部隊は最悪の環境に置かれていた。

 その彼らの負担を減らすべく、機械化歩兵のトラックは本来の橋を渡り、戦車だけ付近の川を仮設橋で渡河しようとしていたバンドルーは当てが外れたのを認めざるを得なかった。

「こりゃあ、空挺部隊の読みの方が正しかった。彼らの守る北に回るしか手がないな。3日は余計にかかるが、止むを得ん」

 とにかく、できるだけ早く渡河を終え、空挺部隊を解放せねば。

 だが、気は焦るもののその仮設橋接地作業は遅々として進まなかった。

 18日一日を空費し、よく19日。やっと待ちに待った仮設橋がトラックに乗せられて到着した。工兵大隊を指揮するのはヘルムート・シュミット中佐。ゾマで使い果たした仮設橋の代わりの橋を突貫作業で建造させ夜を昼に次いで不眠不休で帝国からはるばる持参した仮設橋とともにやって来た。

 中佐は太巻きのシガーをいつも咥えていて、なにしろ口汚かった。

「テメーら、いつまでモタモタしてやがんだ、アホンダラ! サッサと敵の砲兵を黙らせろ! これじゃあ橋なんか掛けられるもんじゃねえっ!」

 ちくしょう・・・。

 言いたいことをホザきやがって!

 バンドルーは耐えた。耐えるだけでなく、そこからさらに上流の粘土質の河床を渡河する地点まで戦車を回して敵の背後に躍り込み、砲弾を降らせている野砲陣を荒らしまわろうと思っていた。それには砲塔が旋回出来走行しながら自由に照準できるマークⅠ型がもう一個小隊欲しかった。それで上司に直訴した。

「騎兵の頃より厚かましくなったと思っていたが、やはり私の見立ては正しかったな」

 今は上司のイヤミに構っている余裕はなかった。

「第二機甲師団のマークⅠ型を下さい! 一刻の猶予もありません」

 自分のジョークに乗れないほどの部下の焦りを感じたフロックス少将は無線機を取り上げて後続の機甲師団の師団長を呼び出した。

「マイケル! 私だ。大至急マークⅠ型一個小隊を先頭まで寄越してくれ。私がジャックにかみ殺される前に、すぐにだ!」

 そう言って少将は通話を切った。

「これでいいかね? ジャック」

 バンドルー中佐はさっそく行動を開始した。

 10両に増えたマークⅠ型にガソリンをたらふく飲ませ、さらに3キロ北に向かわせて粘土質でぬかるんだ河床を渡河させ、土手を乗り越えて敵の砲兵陣地に殺到させた。敵の陣地に回り込みながら50ミリ砲を叩き込み続けるマークⅠ型は、砲弾の雨を降らせていた敵の砲兵陣地を瞬く間に沈黙させた。敵は砲を置き去りにして退却していった。

「やりゃあできるんじゃねえか、やりゃあよ!」

 シュミット中佐はペッと唾を吐くと配下の工兵隊に号令した。

「オラッ! 何をボヤボヤしとるっ! サッサと橋をかけんか、このアホンダラっ!」

 トラックからクレーンで下ろされた架橋資材は川端で組み立てられ、機械化歩兵も加わって人海戦術で河までせり出された。川、中の島、そして川。幾重にも渡された頑丈な橋を、やっと砲弾の雨から解放された空挺部隊員たちも架橋作業を援護し、架橋を文字通り自分たちの手で持ち上げて川にせり出すのを手伝った。

 架橋の上に仁王立ちになり、兵たちの音頭を取り号令するシュミット。

「いいかあっ! お前ら、力を合わせるんだ。せえーのおっ! もう一度。せえーのおっ!・・・」

 いかんっ! みんな伏せろッ!

 誰かが大声をあげて皆その場を離れて地に伏せた。架橋の上のシュミットは川に飛び込んだ。直後にそれはやって来た。

 数十発の砲弾が渡しかけていた架橋に集中した。鉄材が吹き飛び、辺りは砲弾が炸裂する凄まじい爆発と膨大な水煙に包まれ、水しぶきが上がり続けた。

 爆発が止み、シュミットは川の水面に首を出した。

 彼が、そして彼の部下たちが不眠不休で製作し持って来た仮設橋は粉々になって四散していた。

「・・・SHIT(くそ)!」

 ずぶ濡れのまま通信兵に駆け寄った彼はヘッドセットに向かって怒鳴った。

「『ハシゴ屋』から『タンス職人』へ。早く出ろ、この、クソッタレが!」

「ハシゴ屋」はシュミットの、「タンス職人」は帝国の工兵部隊架橋製造工場のコードネームだった。

 ズズ・・・。

「こちら『タンス職人』・・・」

「この、クソッタレ野郎! 今すぐアイホー用の架橋一式作って持って来い。3日以内にだ。出来なきゃお前のケツの穴に50ミリ砲を叩きこんでやる!」

 シュミットは決して安価ではないヘッドセットを地面に叩きつけて壊した。せっかく用意した仮設橋を壊されてよほど腹が立っていたのだろう。FUCKとか、ASS HOLEとか、およそ聞くに堪えない汚い言葉を連発した。シュミットもまたこの戦争を彼なりに戦っているのだった。

 だが、この機甲部隊のおかげで空挺部隊の本隊6個小隊は全滅を免れた。

 グールドはアルムとナイグンに籠る部下たちに連絡した。

「機甲部隊が到着し、アイホーの我が部隊は解放された。だがまだ機甲部隊は橋を渡れていない。アイホーの街も攻略されていない。戦いはこれからだ。機甲部隊と共に私もナイグンとアルムに行く。それまで、なんとしても持ちこたえるんだ! がんばれ、みんな! 帝国一のバカの意地を見せろ!」

 空挺部隊のボスが孤軍となっている部下たちを激励している横で、機甲師団のボスであるフロックス少将は憤懣やるかたなさを堪えていた。

「スピード。それが何よりも重要だ」

 作戦前のブリーフィングで部下たちに厳命したのは彼本人だった。そのスピードが目の前で失われ、俊足の機甲部隊は腹にガソリンと弾薬を抱えたまま無為に停止していた。

 敵は後方に予備部隊を豊富に持っていると思われた。戦車だけの、ただ滅多やたらに撃ちまくって走り去る騎兵的なやり方だけではダメだった。機甲部隊の戦果とは、戦車の後に機械化歩兵を送り込んで陣地を完全に掌握してこそ成り立つのだ。

 要はやはり、人なのだ。機械ではない。

 少将は司令部をゾマには置かず、早くもこのアイホーの手前の簡易陣地まで前進させていた。それほどに、彼は焦っていた。

 早くしないと空挺部隊も、帝国の国庫も、持たない。

 だが、焦るほどに、現実が彼から遠ざかってしまう。

 こういう時はふて寝するに限る。自分のテントに引き上げて少し仮眠を取ろうと歩き出した時だった。

「閣下!」

 振り向くと、すでに機甲部隊に追いついていた第三軍本隊の歩兵部隊大隊長の少佐が息せき切って走って来た。

「閣下! 緊急のお知らせがあります!」


 


 


 


 

 第三軍機甲部隊の進撃が遅れている。

 帝都の皇宮で行われていた最高戦争指導会議の最初の議題はそれだった。

「だいたい作戦名からして『マーケット・ガーデン』などと・・・。千年前のそれはアメリカ、イギリス、フランスがドイツを滅ぼすために立てた作戦だったのですよ! 我々ドイツ系への当てつけではありませんか?」

 作戦部長のシュタインがその赤ら顔をさらに赤く染め、憤りを含んで言った。

「よさんか、作戦部長! 陛下の御前だぞ。陛下のお御心は帝国内の『融和』であらせられる。今はいくさの最中だ。軍の作戦中枢にいる君がそれではイカンじゃないか!」

 開戦前には第二軍の「優等生」ハットンと第三軍の「老練な教師」モンゴメライとの間を調整することもできずにオロオロしてばかりだった統合参謀本部長アイゼンラウアー大将だったが、いざいくさが始まるや別人のようにその度量の大きさを見せ始めたことにヤンはやや、安堵を覚えた。

「見通しはどうなのだね、本部長」

 褐色の最高権力者は憂いを含んだ顔に皺を寄せて尋ねた。

「少なくとも現在のところは、ここ一週間以内にアルムに到達できる見込みがありません」

 アイゼンラウアー大将は正直なところを言った。

「今、破壊されたアイホーの架橋を大急ぎで再製作させています。それが到着するまでの間に機甲部隊が再度敵の砲兵陣地を攻撃。今回は機械化歩兵も徒歩で渡河させて敵地の完全制圧にあたらせる計画だと報告を受けました」

「ということは依然一週間以内に戦争を終わらせる目途は立たんということだな」

 本部長は最高司令官の下問に沈黙を持って答えた。

「では仕方がない。内閣府に戦時国債の発行の起案をさせ、一両日中に元老院の審議を通過させるよう手配しよう。慣例によって最初は貴族のみに募集を行う。ヤン、頼むぞ」

「かしこまりました、陛下」

「そして、前線の人的損耗だが、そちらの見通しは?」

「全戦線の規模に対し、目下人的消耗は最小限レベルであり許容できる範囲にあると報告を受けております。ただ、今後ナイグン、アルムに戦場が映りますと、事態が変化、悪化する可能性も十分に・・・」

「ということは、今の段階で手を打たねば間に合わなくなる恐れもあるということだな。やはり予備役招集は布告すべきだろう。それについては統合参謀本部の起草で元老院に書簡を送る体で為して欲しい」

「御意にございます、陛下」

 アイゼンラウアーは首を垂れた。

「最後に戒厳令布告の問題だが、布告の是非について、皆の意見は? ヤン、君はどう思うか」

 皇帝に名指しされたヤンは思うところを腹蔵なく述べた。

「今本部長も言及されたように、人的損害は最小限レベルで抑えられています。現時点で戒厳令を布き帝国の経済活動を抑えつけるのはむしろ不利益をもたらすのではないでしょうか。少なくともここ一週間の第三軍の動向で判断しても遅くはないかと」

「そうか。実は私もそう思っていた。軍としてはどうか」

「本国国内については今のところ小官も・・・」

 アイゼンラウアーも『国務長官』の意見に賛同する風を見せた。

「わかった。ではこの件は次回の会議に持ち越しとしよう」

 と皇帝は言った。

「次に西部戦線全体に関することだが、意見があればこの機会に開陳してくれたまえ。第三軍に対して第二軍のありようはいかがか。本部長。現在のまま、第二軍の活動は牽制にとどめ置いてよろしいのか。その費用に対し、効果を疑問視する向きもあるようなのだが」

「それについてですが陛下、」

 とアイゼンラウアーは威を正して持論を述べた。

「統合参謀本部といたしましては、第二軍にさらに敵中奥深く鋭く錐を捩じ込むよう督戦すべきかと考えます」

「当初の目標のクンカーを超えて、かね」

「左様でございます、陛下。

 この度の第三軍のアイホー攻略の苦戦に鑑みても、まだまだ第二軍の牽制が足りないのでは、と。

 思いますに、当初の戦争目的はチナをして全滅させるのではなく、あくまでも考えを改めさせ、あわよくば政変を起させるためのものであります。であるなら、何も第三軍にこだわる必要などない。それが可能であるなら、チナ中央を脅かすに第二軍でも十分に可能ではないかと」

「機甲部隊なしにかね? これから冬に向かうのに、第二軍の補給線の問題等の解決はついたのかね?」

 皇帝もまた実戦経験を持つ武人だった。通り一遍の薄っぺらな上面だけの説明には絶対に納得しなかった。

「あくまでも年を越さずに短期決戦する前提です」

「どうしてそのような前提が成り立つのかね? 第三軍の機甲部隊の見通しも立たないのに。機甲部隊は一万五千。第二軍は四万を抱える大部隊だ。補給一つにしてもそのスケールが違うのではないかね? 」

「第二軍はガソリンを必要としない分、本土からの補給も少なくて済み・・・」

「機械の口ではない。私は人間の口と弾薬のことを心配しているのだ。この真冬に、野も道も凍り付く厳冬に、しかもチナの最北端で作戦する部隊に、まさかの時は現地調達させるつもりだとでもいう気なのかね? 

 ましてや、当初の作戦計画ではいくさが終われば第二軍は北の野蛮人の蠢動に側背を脅かされぬ位置まで後退させる予定だったではないか。このまま第二軍を深入りさせて、その懸念に対する手当はどうするのかね? 後備の第二十と第二十四の軍団はいくさが終われば元の位置に戻す。代わりにどの軍団を後詰に据えるのかね?

 それこそ、作戦目的どころか帝国が全てを失う結果になりかねない。そうは思わんのかね?」

 アイゼンラウアーはついに黙った。こういう時の皇帝は梃子でも動かない頑なさを持っていた。皇帝にとって、誰もが納得する、筋道が通っていることが何よりも大切なことはこれまでの経験で分かり過ぎるほどにわかっていたのだ。

「この程度の反問に答えられないのならば、最高司令官として貴官の提案に裁可を与えることはできない。まずあくまでも当初の計画に基づき、第三軍の侵攻を促進できるようにするのが作戦主体としての貴官たちの役目ではないのかね?」

「仰せの通りであります、陛下」

「他になければ、会議は以上とする」

 他の参加者と同じく、ヤンもまた皇宮を後にして内閣府に戻った。

 一瞬は見直しかけた統合参謀本部長だったが、やはり彼には任が重かったのか・・・。

 またしても抱える憂鬱を増やしてオフィスに帰ると意外な人物が彼を待っていた。

「おじさん・・・」

 ウリル少将はその顔に苦渋を浮かべてそこにいた。
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