遠すぎた橋 【『軍神マルスの娘と呼ばれた女』 3】 -初めての負け戦 マーケットガーデン作戦ー

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73 そしてマルスはカモメに助けられる

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 真夜中の突然の大爆発。

 それはアルム市街を挟んだ南でも同じだった。

 北東の方角からまるで曙のような光芒が八方に広がり、打ち上げ花火のように鮮やかな炎の矢が爆発音と共に次々と四散してゆく光景は美しかった。ヤヨイたちのいたコウリャン畑をも明るく照らしだし、その輻射熱は彼らの頬を弄るほどに暖かく感じられた。

 そして、最後に大音響と大爆風が彼らのいる平原を地獄の使者のように駆け抜けた。

 皆、ヘルメットを抑えて身を屈め、大爆風に耐えねばならなかった。

 爆風が収まるや、隊員たちは口に入った砂をペッと吐き捨てた。リーズルもヘルメットを抑えつつ、叫んだ。

「なにこれーっ!」

「『置き土産』って、こんなスゴかったっけ?」

 ウェーゲナーも唖然として呟いた。

「いや、違うな」

 ハーベ少佐もまた首をブルブルッと降って埃を払いつつ、言った。

「あれは・・・」


 

「あれは、弾薬庫だったのか・・・」

 その大爆発は川を挟んで対峙している、50ミリ砲の射程よりはるか遠いバンドルーの陣地からもハッキリと見え、爆風は機甲部隊にまで及び激しく舞い上がる砂埃のために一時射撃を中止したほどだった。

「謎の施設」

 小学校のギムナジウム(体育館)ほどもある大きな棟の立ち並ぶその施設は帝国から盗んだ情報や図面を元に大砲や小銃を生産する兵器廠であった。当然に砲弾や発射装薬などの火薬も作っていた。

 帝国ならば万が一の事態に備え砲弾は小分けして掩体を掘り、上を土砂やレンガを積んで厚く覆い、不意の事故などで一カ所が爆発を起こしても誘爆せぬように配慮する。

 そうした配慮もなく、施設の一棟に多量の砲弾や火薬が集積されていたのだろう。空挺騎兵隊の攻撃によって起こった大火災が火薬庫に引火、集積していた弾薬の誘爆を誘ったのだと思われた。大砲の図面だけ盗んでもその運用全てをカバーする思想を盗み損ねたがゆえの当然の結果であった。

 重要な施設だが、その性質上首都の近郊に置かず、チナが「仮想敵国」としていたミンとの境の近くに設置していたのだ。

「数万もの大軍を増援に寄越すわけだな。敵が守ろうとしたのは橋でも市街でもなかったのだ。敵が守ろうとしたのは、これだったのだ」

 バンドルーはようやく理解した。

 ナイグンの橋の爆弾といい、この兵器廠といい、チナはその構成員たる豪族をとことん信用していなかったのだということがこれでわかった。だから総じてチナは弱かったのだ。

 これではもう、敵は逃げて行くヤヨイたちに構っている余裕などないだろう。

「中隊に告ぐ、攻撃中止。本作戦を終了する。これより撤退する。砲兵隊から順に撤収を開始せよ」

 あとは「大工」と「マルス」が無事に漁師町まで逃げのびるのを祈るとするか。

 敬虔なカソリックのバンドルーはそう呟いて胸の上で十字を切り、両手を合わせて祈りに入った。


 

 そのバンドルーがもしそこにいたなら、その姿があたかも13人の弟子に囲まれたイエス・キリストのようにも映ったかもしれない。

 ヤヨイたちの一行はもう漁村まであとわずか、潮の匂いが香り始めるところまで来ていたが、一行の中のアルムの少年たちの目が、もう信仰に近かった。

 彼らは神を信じたことなどなかった。神という概念すら知らずに育った。だが彼らのヤヨイを見る目は、あたかも初めて神に触れその臨在を感じた者のように、無垢だった。

 暗闇の中で彼女の発する他人には見えない「オーラ」のようなものを感じ、それに触れたいと思う一方で、汚れた手で触れてはいけない神々しさをも感じ、彼女に着かず離れずの距離を保ちながら南への道を歩き続けていた。

「疲れませんか、ヤヨイさま!」

「オレ、おぶってさしあげますか、ヤヨイさま!」

 あのヤヨイにお灸を据えられた大柄な少年までもがヤヨイに傅き、大袈裟な気遣いを見せるのがどうにも可笑しかった。

 ちょうど、月齢28の月が東の山々の上に登って来た。

「やれやれ。またあの子の信者が増えたわね」

 リーズルはヤヨイが行く先々で「アイゼネス・クロイツの猛者」を崇拝する者達に囲まれるのを見て来た。ここ、敵国においてもそれが見られるとは。

 漁師町への深夜の道中。

 少年たちは「マルス」が彼女の指揮する小隊のコールサインであり、彼女の本名がかつて南の海に浮かんでいたという島国であるヤーパンという国の言葉で「3月」を意味するのを知った。そしてそこにまたもや少年らしい神秘を見出し、信仰の念を強くするのだった。

「ヤヨイさま♡」

 そんな風に呼びかけられ、くすぐったいような気持になる。だが露骨にイヤな顔もできず、ヤヨイは困ったような笑みを浮かべるのだった。

「わたしなら大丈夫。それよりもお互いに離れないようにね。こんなところで迷子になってしまったら大変よ」

 月が上り、控え目な月明りが、時折吹き付ける風が海砂を運んでくるその辺りのキビの畑をぼんやりと照らし始めていた。

 微かな月明りに浮かんだ「大工」と彼らの救出に当たった「マルス」たちの顔にも皆一様に安堵の色が浮かんでいた。もうすぐいくさも終わる。やがて来る戦士の休息を一足早く感得しているかのような雰囲気があった。

 それはヤヨイも感じていた。

 自分一人では到底なしえなかった任務。多くの上官と部下たちとに支えられ、共に勝ち取った「勝利」の甘い美酒に酔ってしまいそうになっていた。

「ヤヨイ、大丈夫か」

 え?

 もしかして、レオン少尉?

 ここ久しく声を聞いていなかった少尉が四次元の向こうから呼びかけて来たのか?

 だが違った。

 振り向けば少年たちの輪の中にウェーゲナーの優し気な顔があった。

 彼の顔を見た途端、美酒の甘い匂いと安堵の吐息が漏れそうになった。

 が、その時だった。

 ヤヨイの頬に緊張が走った。

 彼女は立ち止まった。

 これはなんだろう。地鳴り?

「中尉、何か、音がしませんか?」

「音?」

 ハーベ少佐も彼女の傍に寄って来た。

「どうした、少尉」

「聞こえませんか? 何か、地鳴りのような・・・。これは・・・。

 馬の蹄の音です! みんな、静かに!」

 一行は皆足を止め、全身を耳にして「異音」を聞き取ろうとした。

 ヤヨイだけではない、多くの者がその地響きを感じた。

「騎馬隊だ!」

「大工」の誰かが小声でその地響きの正体を言葉にした。一行に戦慄が走った。

 地響きはもうハッキリと大部隊の騎馬隊の姿をし始めた。まだ敵は暗すぎて視認できない。だが、この暗闇の先に馬蹄を響かせつつ接近中の騎馬隊がいるのはもう明らかだった。

 信じられないことだが、あの凄まじい大爆発にも拘わらず、アルムのチナ軍はヤヨイたちにしつこいほどの探索の手を差し向けて来たのだ。

「全隊、回れ右! 散開して、伏せ! 携行弾確認!」

 歴戦のハーベ少佐が野戦における歩兵操典に忠実に不期遭遇戦の要領をそらんじるように命じたとき、

 ピュンッ! ピュピュンッ!

 銃弾が頭の上で空気を切り、その直後に遠い発砲音を聞いた。

「ぐわっ!」

 誰かがくぐもった悲鳴を上げた。

「誰かやられたかっ」

「誰がやられた?」

 暗闇の中で殺気走った声が錯綜した。

「マックスです!」

「衛生兵! クリス!」

「追撃してくる騎馬隊を牽制する。照準不要! 北に向かって弾幕を張れ!」

 ズダダダーンッ!

「フェイロン! みんなもわたしの後ろに下がって伏せて! グレタ!」

 ヤヨイは周りにいた少年たちに素早く命じると身を低くしてグレタを呼び寄せ小声で指示した。

「グレタ。バンドルー中佐を。『我、敵の騎馬隊と思しき対象の追撃を受けこれと交戦中。指示を乞う』」

「了解。・・・こちら『マルス』、『猟犬』応答願います」

 すぐに「猟犬」が出た。

 そしてマイクの向こう側がバンドルーに変わった。

「バンドルーだ。敵か?」

 ヤヨイがヘッドセットを受け取って答えた。

「まだ視界がなく視認できませんが、撃って来ました。一名が負傷しました」

「周波数330で『カモメ』を呼び出せ。以降、相手の指示を受けろ」

「周波数330、了解。『カモメ』の指示を受けます」

「貴官たちの無事安着を祈る」

 バンドルーとの通信が終わるやすぐに指示を実施、グレタが「カモメ」を呼んだ。

「『カモメ』応答願います。こちら『マルス』。敵騎兵隊と思しき対象の追撃を受けつつあり!」

「マックスが脚を撃たれています。ここで処置します!」

 右手の方からクリスティーナの声が上がった。ヤヨイとウェーゲナーが声を頼りに駆け寄った。彼女の傍に来てみれば、儚い月明りの下で苦悶に顔を歪ませるマックスがいた。

「しっかりしろ、マックス」

 ウェーゲナーもヤヨイもその場に伏せた。

「太股の付け根に盲管銃創です。とりあえず、止血します!」

 クリスティーナが腹ばいになって処置しながら冷静に状況を教えてくれた。

「小隊長殿! ここはオレが食い止めます。行って下さい!」

 痛むのだろう。マックスは苦し気にそう呻いた。

「はあ?」

「オレはもう歩けません。オレがここで牽制します。イザとなったらこれで・・・」

 そう言って背嚢の中の迫撃砲弾をポン、と叩いた。自爆するというのだろう。

 ウェーゲナーの一喝が落ちた。

「バカ野郎! そんなことはオレが許さん!みんな一緒に国に帰るんだ!」

「でも、これでオレも役に立てます」

 頭の上でなおもピュンピュン鳴る銃弾。リーズルやビアンカや「大工」の兵らが蹄の音が大きくなってゆく方向に向かってダン、ダンッ、小銃の応戦を続ける中、ウェーゲナーはマックスの肩を掴んだ。

「・・・わかったぞ。エマだな。なんであんなにしつこく同行したがったのか不思議だった。お前投げやりになっているんだろう。まさか彼女の後を追おうなんて考えてるんじゃないだろうな」

「それは、違います!」

 痛みに耐えつつ、マックスは叫んだ。

「実感が、なかったんです。オレはなにをやったんだろう。エマは戦死しました。オレはまだ、生きてます。何かをやり遂げないと、エマに・・・」

「お前、何を浸ってるんだ、アホ!」

 ウェーゲナーはマックスの汗の浮いた額を指で弾いた。いわゆる、デコピンである。

「ちょっと! やめてください、中尉! 負傷兵ですよ、ケガしてるんですよ!」

 クリスティーナが猛然とウェーゲナーに食ってかかった。

「いいんだよ。コイツはな、ケツにケガしてるんじゃねえんだ。ここなんだよ」

 そう言って、拳でマックスの胸をツン、とついた。

「お前はやり遂げたじゃないか! 一緒にあの丘を守ったじゃないか。一緒に『大工』も救い出した。何を言ってるんだ、アホ!」

 きっとマックスは心が疲れているのだ。

 ウェーゲナーはそれを察して、彼の心を奮起させようとしているのだ。

 敵味方の銃弾が飛び交う中で行うやりとりではないと思ったが、ヤヨイは黙って見守っていた。

「生きて、国に帰るんだ。こんなとこで死んでエマが喜ぶと思うか!」

「小隊長どの・・・」

「それにオレは臨時だが『中隊長どの』だ。ちゃんと言い直せ」

 痛みを堪えているはずのマックスがプッと噴き出した。この状況でそんな下らないことを。そう思ったのだろう。ウェーゲナーも笑った。つられてヤヨイも笑った。

 こんな状況だからこそ、笑うことが大事なのだ。

 やはりウェーゲナーも指揮官なのだ。

 尊敬の念を込め、ヤヨイは「覗き魔」を見つめた。

「中隊長殿、少尉! 『カモメ』が出ました!」

 サッと身を起して背を丸めグレタに駆け寄りヘッドセットを掴んだ。

「こちら、『カモメ』! 」

「カモメ」はまるでヤヨイたちの到着を待っていたかのように応じて来た。

「『マルス』に次ぐ。貴官たちの大まかな位置を伝えよ。港までどれほどだ?」

「こちら『マルス』。漁港までおおよそあと4キロ程度と推定」

「敵の位置は?」

「当方より500から400程度北の模様」

「了解。ただいまより主砲の試射を行う。弾着を観測し、再度伝達せよ」

「了解。弾着を観測し、伝達します!」

 一行50名の静寂の間を陸から海に風が吹き抜けた。間断なく続く銃声の合間にもその風に乗ってさらに馬蹄の響きが大きく近く感ぜられてきた。

 と。

 背後の海からドーンッ、という爆発音が聞こえるや、間もなくゴーォッ、という空気音が空から降って来た。そしてそれは俄かにヤヨイたちのすぐ北に落ち、

 ド、ドーンッ!

 2本の火柱が相次いで立ち、黎明前の最も深くなった闇を切り裂いた。

 海軍の徹甲弾! それも、戦艦の主砲だ! 

 わずかの期間ではあったが旗艦ミカサの艦上でその威力を見せつけられた海軍最大の100ミリ艦載砲が弾着したのだった。徹甲弾を使用したのだと知れた。弾体そのものが爆裂四散する榴散弾と違い、徹甲弾なら砲弾の尾部から爆発が吹き上がるだけだ。ヤヨイたちに被害が及ぶのを配慮してくれたのだろう。

「『マルス』! 聞こえるか」

 通信機から再び音声が流れた。

「感度良好。只今の弾着、我々の現在位置より北方およそ500!」

「了解。これより弾種を榴散弾に切り替える。貴官たちは出来るだけ南に移動して砲撃に備えよ!」

 聞き覚えのある声に、ヤヨイは思わず懐かしさを掘り起こされた。

「チェン中佐ですね? ヴァインライヒです!」

「貴官たちを待っていた、ヤヨイ! 急げ! 砲撃が始まる」

 陸軍の末端のさらに末端、たかが2個小隊弱の兵たちのために、海軍の至宝とも言える戦艦がその主砲の巨弾を持って脱出の援護をしてくれているのだ!

 さすがのヤヨイも、これには驚いてしまった。

「了解! これより南に退避します!」

 ヤヨイは声を限りに命令を下した。

「これより海軍が砲撃を開始する! 全員、射撃止め! 回れ右、駆け足! 」

「おい、担ぐぞ!」

「大工」の兵だろう。誰かが叫ぶと4,5人がマックスに駆け寄って彼を担ぎ上げた。

「俺たちは『学者』に感謝してる。落下傘はみんな、仲間だ」

 そんな声がヤヨイにも聞こえた。


 

 夜の闇の中を登って来た細い月明りだけを頼りにヤヨイたちは走った。

 時には転んで躓きそうになるフェイロンたちを支え、その背を押しつつ、走った。

 走りながら、ヤヨイは理解した。

 ヤヨイたち、陸軍のたかが2個小隊のために連合艦隊が出張って来た。それを演出したのが誰か、ということをである。

 閣下しかいない。

 凛々しい東洋の風貌を持ち、堂々たる白いトーガに身を包んだ、帝国皇帝の子息にして元老院議員。ヤン議員その人だと。

 ヤヨイたちの上空を轟音を立てて飛翔する数発の砲弾が月の光に一瞬、煌めいた。

「みんな、伏せてっ!」

 落下傘の兵たちは一斉に地に伏せた。

 ズドドドーンッ!

 大音響とともに数発の爆裂弾が接地寸前に大爆発を起こし、その炸薬によって辺りの草原が瞬時に炎の海に変わった。

 ヤヨイたちは軍服の土を払って立ち上がり、燃え上がる草原をしばし注視した。いかにチナの騎馬隊が大軍勢であろうとも、これでは追撃は不可能であろう。

 第二斉射が行われ、さらに拡大した爆発と火災を遠望しつつ、ヤヨイは再びヘッドセットを取った。

「こちら、『マルス』。敵の騎馬隊は追撃を断念した模様。これより漁港に向かいます」

「了解。漁港に短艇を差し向ける。海軍は貴官たちの乗艦を許可し、歓迎する!」

 

 日の出前。

 黎明の漁港に着いたヤヨイたちが小さな波止場に現れると、それを遠巻きにした漁民たちの輪の向こうに小さなカッター(短艇)が何艘か着けられているのが見えた。

 懐かしい海軍の、風除けの付いたネイビーブルーの水兵たちが整列し、これまた懐かしい海軍式の右手を額に翳す敬礼を受けた。

「帝国陸軍落下傘連隊副連隊長ハーベ少佐、並びに前海軍士官ヴァインライヒ少尉に対し、敬礼!」

 誇らしさよりも懐かしさの方が勝り、ヤヨイもまた海軍式の答礼を返した。

「ヤヨイさまって、海軍にも知り合いがいたのかい?」

 またもや目を丸くして仰ぎ見るフェイロンに、ヤヨイは哀願した。

「ねえ、お願いだからその『ヤヨイさま』はやめてくれない?」


 

 そして・・・。

 ヤヨイたちを乗せたカッターが向かった先で、またもヤヨイ驚かされることになった。

 彼女らを出迎えに来てくれたのは輸送船ではなかった。

 短艇が横付けしたのは帝国の水雷戦隊の標準巡洋艦であるチャレンジャー級の一隻だったのだ。しかも、甲板に上がったヤヨイを出迎えたのは、これまた懐かしい、祖父のように温かい目で包んでくれる老人だった。

「やあ、ヴァインライヒ少尉! ご苦労だったなあ。よく無事に戻って来た!」

「提督! ワワン中将!」

 その場で身を正し、再び海軍式敬礼を送った。

「正しくは、『予備役海軍中将』だがな」

 前の第一艦隊司令長官。

 彼とはつい数か月前、お礼のためキールまで会いに行って以来だった。ミカサの作戦を終えて元老院で叙勲され正式に陸軍特務少尉に任官したヤヨイだったが、その推薦をしてくれたのがワワン中将だったのである。退役して予備役となった今はカジキ漁の漁師となっていた。

 金の縁取りのある銀の肩章を着けた老漁師は懐かしい日焼けした笑顔にさらに皺を加え、答礼した。

「帝国の国難に際し、のん気にカジキを獲っているわけにもいかなくてな。駆逐艦の一隻も操らせてくれればいいと思っていたんだが、艦隊の指揮を任されてしまってなあ。老体でも役に立てるならと渋々応じたのだが、貴官たちのような勇者を出迎える、こんな粋な役目ならまたいつでも何度でも引き受けたいと思うぞ!」

 老提督はそう言って笑顔でヤヨイたちを迎えてくれた。

「ありがとうございます、提督!」

 その時陽が昇った。

 老提督の高い肩越しに、頼もしい4隻の帝国海軍の象徴たるべき第一艦隊の雄姿があった。

 ミカサ、ビスマルク、エンタープライズ、ヴィクトリー。

 その懐かしく力強い戦艦群は、朝日を浴びて神々しくさえ見えた。

「フェイロン。さっきわたしたちを助けてくれた戦艦たちよ」

 10人のチナ人の少年たちは巡洋艦の船縁に捕まって生まれて初めて見る帝国海軍の力強い戦艦たちに魅入った。

 フレッチャー中将、チェン中佐・・・。

 ありがとうございます!

 ヤヨイは心の中で礼を言った。
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