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「ちゃんちゃら」24話
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「ちゃんちゃら」24話
顔を上げて後ろを振り向くと空島の姿があった。
「空島。」
名前を呼ぶと空島はこちらへ歩いてくる。リュックサックが重そうなので、恐らく講義の後だろう。
「大地さん、こんなところでなに黄昏てるんすか?」
「まあ、大体想像つくだろう。」
空島は顔を青ざめた。
「フラれたんすか。海斗先輩に。」
大地は唸った。
「フラれたというか、俺の片思いというか。とにかく、海斗の反応がよく分からないんだよ。」
「はぁー、恋する男は大変ですね。」と空島は呑気に感心している。しかし、すぐ空島は海斗の話題を持ち出した。
「じゃあ、一先ず海斗先輩とは話出来たんすね。良かったですね。」と嬉しそうに笑っている。
空島は海斗とよくいるイメージがあった。元々、人懐っこい男だが、特に海斗には懐いている様子だった。そして、なぜかその様子をよく思わなかった自分がいた。今思えば、空島に対してどこか嫉妬の感情があったのかもしれない。
長年の自分の気持ちに気づき、どこか晴れやかな気持ちになっていると、空島は持っているのが辛くなったのか、リュックサックを安全柵の上に乗せた。
「これから出産と育児ってなると大変ですもんね。蟠りは少ない方が良いでしょ。」
大地の凍りついた表情を見て、空島も笑顔から青ざめた顔に一変した。
「え。ひょっとして。」
空島は、そう言うとすぐにハッとして口を噤んだ。暫く沈黙が流れたが、空島は小さく溜息をついた。
「まあ、そうっすよね。突き放されたら絶望もしますし、海斗先輩あんまり身内の話とかしたがらないですし、嫌な予感してたんすよねぇ。」
大地は俯く。空島の言葉でもう一度自分のした事を脳内で再放送された気分だった。
「俺も同じ状況だったら産まなかったかもしれないっすね。」
空島の少し引っかかる発言に眉を顰める。
「なんか、まるで産んだことあるみたいに言うんだな。」
すると、空島が目を丸くしてこちらを凝視する。その反応を見て大地もその場で固まった。空島はすぐに視線を泳がせ、やがて苦笑する。
「あー、まあ、色々あったんすよ。」
まさか空島にそんな過去があるとは知らず静かに仰天する。まさか周りにΩが二人もいて、どちらも妊娠経験があるとは思わなかった。
「なあ、こ、子どもって」
聞いていいのか分からず、言葉が詰まる。
「あー、なんかもうずっと向こうの家に引き取られて、それっきりっすね。」と踏み込まれたくないのか、話をすぐに打ち切られる。
「おまえ、結婚してたのか。」
「いや、籍入れてないっす。」
淡白な回答に目を白黒させる。空島はそんな大地を見て苦笑いを浮かべている。
「その人、責任感とかなくて、全部親頼みで本当辟易しちゃったんすよね。だから、」
空島は真っ直ぐ大地を見る。
「大地さんがちゃんと海斗先輩と話をしてるって知って、これでも感心してるんすよ。」
大地は目を見開く。まさか、褒められるとは思ってもみなかったからだ。
「俺、α嫌いっすけど、大地さんは嫌いじゃないっすよ。なんか、意外と誠意がありますし。」
意外と、という言葉は聞き逃してあげることにした。
「お前、α嫌いだったのか。」
「Ωみんながαが好きっていう偏見無くならないっすかねぇ。」と空を見上げて空島は唸る。
「Ωも色々と大変なんだな。」
「そうっすよ。」と安全柵に乗せていたリュックサックを空島は持ち上げる。
「俺が言うのもなんか変すけど、だから、海斗先輩のこと、よろしくっす。」
空島は照れ臭そうに頭を掻いて、踵を返した。それを見て慌てて大地は空島に訊ねる。
「なあ、妊娠した時、相手にどうして欲しいって思った?」
空島は足を止め、暫く立ち止まっていたが、蝉が鳴き始めたと同時にこちらを振り返った。
「抱きしめる、とまではいかないっすけど、手は握って欲しかったっすね。」と平然と言った。そうして、またすぐにこちらに背中を向けて歩き出していった。その背中は初めて会った時と比べて広く、しっかりしてるように見えた。
ここでようやく大地は空島に会ったら最初に言おうと思っていたことを思い出した。
「なあ!住所教えるから、海斗に会いに来てやってくれよ!」
空島はこちらを振り向き、腕全体を使って大きな丸を作った。
顔を上げて後ろを振り向くと空島の姿があった。
「空島。」
名前を呼ぶと空島はこちらへ歩いてくる。リュックサックが重そうなので、恐らく講義の後だろう。
「大地さん、こんなところでなに黄昏てるんすか?」
「まあ、大体想像つくだろう。」
空島は顔を青ざめた。
「フラれたんすか。海斗先輩に。」
大地は唸った。
「フラれたというか、俺の片思いというか。とにかく、海斗の反応がよく分からないんだよ。」
「はぁー、恋する男は大変ですね。」と空島は呑気に感心している。しかし、すぐ空島は海斗の話題を持ち出した。
「じゃあ、一先ず海斗先輩とは話出来たんすね。良かったですね。」と嬉しそうに笑っている。
空島は海斗とよくいるイメージがあった。元々、人懐っこい男だが、特に海斗には懐いている様子だった。そして、なぜかその様子をよく思わなかった自分がいた。今思えば、空島に対してどこか嫉妬の感情があったのかもしれない。
長年の自分の気持ちに気づき、どこか晴れやかな気持ちになっていると、空島は持っているのが辛くなったのか、リュックサックを安全柵の上に乗せた。
「これから出産と育児ってなると大変ですもんね。蟠りは少ない方が良いでしょ。」
大地の凍りついた表情を見て、空島も笑顔から青ざめた顔に一変した。
「え。ひょっとして。」
空島は、そう言うとすぐにハッとして口を噤んだ。暫く沈黙が流れたが、空島は小さく溜息をついた。
「まあ、そうっすよね。突き放されたら絶望もしますし、海斗先輩あんまり身内の話とかしたがらないですし、嫌な予感してたんすよねぇ。」
大地は俯く。空島の言葉でもう一度自分のした事を脳内で再放送された気分だった。
「俺も同じ状況だったら産まなかったかもしれないっすね。」
空島の少し引っかかる発言に眉を顰める。
「なんか、まるで産んだことあるみたいに言うんだな。」
すると、空島が目を丸くしてこちらを凝視する。その反応を見て大地もその場で固まった。空島はすぐに視線を泳がせ、やがて苦笑する。
「あー、まあ、色々あったんすよ。」
まさか空島にそんな過去があるとは知らず静かに仰天する。まさか周りにΩが二人もいて、どちらも妊娠経験があるとは思わなかった。
「なあ、こ、子どもって」
聞いていいのか分からず、言葉が詰まる。
「あー、なんかもうずっと向こうの家に引き取られて、それっきりっすね。」と踏み込まれたくないのか、話をすぐに打ち切られる。
「おまえ、結婚してたのか。」
「いや、籍入れてないっす。」
淡白な回答に目を白黒させる。空島はそんな大地を見て苦笑いを浮かべている。
「その人、責任感とかなくて、全部親頼みで本当辟易しちゃったんすよね。だから、」
空島は真っ直ぐ大地を見る。
「大地さんがちゃんと海斗先輩と話をしてるって知って、これでも感心してるんすよ。」
大地は目を見開く。まさか、褒められるとは思ってもみなかったからだ。
「俺、α嫌いっすけど、大地さんは嫌いじゃないっすよ。なんか、意外と誠意がありますし。」
意外と、という言葉は聞き逃してあげることにした。
「お前、α嫌いだったのか。」
「Ωみんながαが好きっていう偏見無くならないっすかねぇ。」と空を見上げて空島は唸る。
「Ωも色々と大変なんだな。」
「そうっすよ。」と安全柵に乗せていたリュックサックを空島は持ち上げる。
「俺が言うのもなんか変すけど、だから、海斗先輩のこと、よろしくっす。」
空島は照れ臭そうに頭を掻いて、踵を返した。それを見て慌てて大地は空島に訊ねる。
「なあ、妊娠した時、相手にどうして欲しいって思った?」
空島は足を止め、暫く立ち止まっていたが、蝉が鳴き始めたと同時にこちらを振り返った。
「抱きしめる、とまではいかないっすけど、手は握って欲しかったっすね。」と平然と言った。そうして、またすぐにこちらに背中を向けて歩き出していった。その背中は初めて会った時と比べて広く、しっかりしてるように見えた。
ここでようやく大地は空島に会ったら最初に言おうと思っていたことを思い出した。
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空島はこちらを振り向き、腕全体を使って大きな丸を作った。
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