34 / 102
「ちゃんちゃら」34話
しおりを挟む
「ちゃんちゃら」34話
雫と大知は家には泊まらず、実家に帰ることにしたようだ。大原が実家に車で送ることになったので、大原がガレージへ向かい、海斗たちは玄関の前で待機していた。
数時間前に雨が降ったからか、地面はまだ柔らかく、コンクリートも湿っていた。その代わり、星がはっきり見え、天体観測に向いた空になっていた。
「ねぇ、大地お兄ちゃんは、海斗お兄ちゃんと付き合ってるの?」
突然、大知が大地の裾を引っ張り訊ねる。思わず咽せそうになったが、いつもの冷静な顔を急いで取り繕って答えた。
「いや、これからだ。」
「ふーん。頑張りなよ。」
小学生に上から目線のアドバイスをされ、眉が吊り上がりそうになったが、我慢した。すると、今度は大地を小突き、悪戯っ子の表情をしていた。
「大原が送る間に告白しなよ。」
ーまた何を言っているんだ、この子どもは。告白は既にしているんだ。みっともないやり方になったけどな。ただ、今は恋愛している場合じゃなくて。
ここまで考えて、大地は海斗との関係性に発展はなにも見当たらないことに気づいた。海斗は自分をどう思っているのだろう。考えれば、海斗は周りの人間と仲が良くなっていくばかりで、自分は全く良いところを見せれていなかった。
客室にある黒い金庫が頭を過る。そんな大地の気持ちなど知りもしない大知は大地の顔を見て何やらニヤニヤしていた。
大地がなにか大知と話をしているのを見て海斗は微笑ましく思っていた。大地からあまり大知の話を聞いたことがなかったので仲が悪いのかと思っていたが、そうではないのかもしれない、と考えていると、雫が海斗に声を掛けてきた。
「ねぇ、二人は番になったんでしょ?海斗くんは大丈夫なの?」
海斗は茫然と聞き返す。
「大丈夫なのって?」
「え?番になると相手の匂いとかスキンシップがないとΩは落ち着かなくなることもあるでしょ。大地くん、これから本格的に働くからちょっと心配にならない?」
海斗はそういえば似たような話を南雲先生にされたことを思い出した。しかし、自分の身体に全くそんな気配がなかったので小首を傾げるしかなかった。その様子を見て雫は仰天する。
「えー!まあ、自分がΩだって気づかないくらいだもんね。ヒートの経験も無いだろうし。本当に海斗くんってフェロモン薄いんだね。」とまじまじと海斗を見ている。そう言われるとなんだか不安になってきている海斗を見て雫は慌てて肩に手を置いた。
「でも、Ωだとそれが煩わしいことが多いから俺は羨ましいよ。でも、もしものことも考えて、なにか大地くんの持ち物とか部屋に置いておくといいよ。」
海斗は唸った。大地に態々それを頼むのもなんだか気恥ずかしいという気持ちと、どこか遠い、今までと全く違うカタチになってしまったような、そんな不安感を覚えた。
雫と大知は大原が家の前に停めた車へこちらへ手を振りながら乗車していった。二人の笑顔を見て、今まで感じていた孤独感のようなものが小さくなっていくのを海斗は感じていた。横を見ると、どこか大地も安心した様子で見送っているのを見て、海斗自身も安心していた。
二人が横に並んで立つのは久しぶりのはずなのに、どこか初々しく感じた。
雫と大知は家には泊まらず、実家に帰ることにしたようだ。大原が実家に車で送ることになったので、大原がガレージへ向かい、海斗たちは玄関の前で待機していた。
数時間前に雨が降ったからか、地面はまだ柔らかく、コンクリートも湿っていた。その代わり、星がはっきり見え、天体観測に向いた空になっていた。
「ねぇ、大地お兄ちゃんは、海斗お兄ちゃんと付き合ってるの?」
突然、大知が大地の裾を引っ張り訊ねる。思わず咽せそうになったが、いつもの冷静な顔を急いで取り繕って答えた。
「いや、これからだ。」
「ふーん。頑張りなよ。」
小学生に上から目線のアドバイスをされ、眉が吊り上がりそうになったが、我慢した。すると、今度は大地を小突き、悪戯っ子の表情をしていた。
「大原が送る間に告白しなよ。」
ーまた何を言っているんだ、この子どもは。告白は既にしているんだ。みっともないやり方になったけどな。ただ、今は恋愛している場合じゃなくて。
ここまで考えて、大地は海斗との関係性に発展はなにも見当たらないことに気づいた。海斗は自分をどう思っているのだろう。考えれば、海斗は周りの人間と仲が良くなっていくばかりで、自分は全く良いところを見せれていなかった。
客室にある黒い金庫が頭を過る。そんな大地の気持ちなど知りもしない大知は大地の顔を見て何やらニヤニヤしていた。
大地がなにか大知と話をしているのを見て海斗は微笑ましく思っていた。大地からあまり大知の話を聞いたことがなかったので仲が悪いのかと思っていたが、そうではないのかもしれない、と考えていると、雫が海斗に声を掛けてきた。
「ねぇ、二人は番になったんでしょ?海斗くんは大丈夫なの?」
海斗は茫然と聞き返す。
「大丈夫なのって?」
「え?番になると相手の匂いとかスキンシップがないとΩは落ち着かなくなることもあるでしょ。大地くん、これから本格的に働くからちょっと心配にならない?」
海斗はそういえば似たような話を南雲先生にされたことを思い出した。しかし、自分の身体に全くそんな気配がなかったので小首を傾げるしかなかった。その様子を見て雫は仰天する。
「えー!まあ、自分がΩだって気づかないくらいだもんね。ヒートの経験も無いだろうし。本当に海斗くんってフェロモン薄いんだね。」とまじまじと海斗を見ている。そう言われるとなんだか不安になってきている海斗を見て雫は慌てて肩に手を置いた。
「でも、Ωだとそれが煩わしいことが多いから俺は羨ましいよ。でも、もしものことも考えて、なにか大地くんの持ち物とか部屋に置いておくといいよ。」
海斗は唸った。大地に態々それを頼むのもなんだか気恥ずかしいという気持ちと、どこか遠い、今までと全く違うカタチになってしまったような、そんな不安感を覚えた。
雫と大知は大原が家の前に停めた車へこちらへ手を振りながら乗車していった。二人の笑顔を見て、今まで感じていた孤独感のようなものが小さくなっていくのを海斗は感じていた。横を見ると、どこか大地も安心した様子で見送っているのを見て、海斗自身も安心していた。
二人が横に並んで立つのは久しぶりのはずなのに、どこか初々しく感じた。
37
あなたにおすすめの小説
あなたの家族にしてください
秋月真鳥
BL
ヒート事故で番ってしまったサイモンとティエリー。
情報部所属のサイモン・ジュネはアルファで、優秀な警察官だ。
闇オークションでオメガが売りに出されるという情報を得たサイモンは、チームの一員としてオークション会場に潜入捜査に行く。
そこで出会った長身で逞しくも美しいオメガ、ティエリー・クルーゾーのヒートにあてられて、サイモンはティエリーと番ってしまう。
サイモンはオメガのフェロモンに強い体質で、強い抑制剤も服用していたし、緊急用の抑制剤も打っていた。
対するティエリーはフェロモンがほとんど感じられないくらいフェロモンの薄いオメガだった。
それなのに、なぜ。
番にしてしまった責任を取ってサイモンはティエリーと結婚する。
一緒に過ごすうちにサイモンはティエリーの物静かで寂しげな様子に惹かれて愛してしまう。
ティエリーの方も誠実で優しいサイモンを愛してしまう。しかし、サイモンは責任感だけで自分と結婚したとティエリーは思い込んで苦悩する。
すれ違う運命の番が家族になるまでの海外ドラマ風オメガバースBLストーリー。
※奇数話が攻め視点で、偶数話が受け視点です。
※エブリスタ、ムーンライトノベルズ、ネオページにも掲載しています。
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
ふた想い
悠木全(#zen)
BL
金沢冬真は親友の相原叶芽に思いを寄せている。
だが叶芽は合コンのセッティングばかりして、自分は絶対に参加しなかった。
叶芽が合コンに来ない理由は「酒」に関係しているようで。
誘っても絶対に呑まない叶芽を不思議に思っていた冬真だが。ある日、強引な先輩に誘われた飲み会で、叶芽のちょっとした秘密を知ってしまう。
*基本は叶芽を中心に話が展開されますが、冬真視点から始まります。
(表紙絵はフリーソフトを使っています。タイトルや作品は自作です)
この手に抱くぬくもりは
R
BL
幼い頃から孤独を強いられてきたルシアン。
子どもたちの笑顔、温かな手、そして寄り添う背中――
彼にとって、初めての居場所だった。
過去の痛みを抱えながらも、彼は幸せを願い、小さな一歩を踏み出していく。
好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない
豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。
とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ!
神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。
そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。
□チャラ王子攻め
□天然おとぼけ受け
□ほのぼのスクールBL
タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。
◆…葛西視点
◇…てっちゃん視点
pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。
所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。
君の恋人
risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。
伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。
もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。
不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる