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「ゼロから千まで」21話
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「ゼロから千まで」21話
千歳は祖母が用意してくれた朝ごはんを一瞬で平らげ、百合愛と一緒に外を散歩した。
いつも見慣れた光景のはずなのに、なんだか懐かしく感じるのは、自分が何週間も入院していたことを考えさせられる。通学路にある街路樹も、この間まで葉が青々としていたというのに、今ではすっかり葉を落としてしまっていた。それが千歳にはどうもおかしくて、不自然で、不思議なことに思えた。
「千歳ちゃん。」
振り向くと、一歩後ろを歩いていた百合愛が微笑んでくる。
「実はね、千歳ちゃんが入院している間に席替えがあってね。千歳ちゃん一番前になったって聞いたよ。」
「え!?うち、居眠りできないってこと!?」
千歳ががっくりしている様子を百合愛はクスクス笑う。
「意外と前の方が居眠りバレないって聞くよ?」
「そうかなぁ。前に怒られたことあるけどなぁ」
「あー、中学の時だね。あの時は運が悪かったよ、千歳ちゃん。」
「そうそう!まさかチャンヤマダに見つかるとはね~」
「あれ?山田先生って数学だったっけ」
「うん。」
もう二人の会話の内容は学校と大して変わらなくなっていた。
千歳の肯定を最後に二人の間に静寂が訪れる。
「千歳ちゃん。零一くんと何かあったでしょ。」
百合愛の言葉に千歳は黙り込む。百合愛は自分なんかより相手のことを見ていることを千歳は忘れていた。やはり自分は誰かに隠し事をするのに向いていないようだ。
「うん。」
また肯定すると、百合愛は少し困り眉をしたが、また前を向いて一緒に歩き始める。木枯らしがさあっと千歳の髪を撫でた。しかし、今はその冷たさも受け入れられるような気がした。
「あのさ。愛って、どういうものなのかな。誰かと一緒にいるってことなのかな。」
百合愛は千歳を一瞥してフフッと笑った。千歳は自分のした質問に自分で恥ずかしくなった。
「違うよ、千歳ちゃん。相手の将来のことを考えるのが、愛だよ。」
百合愛の言葉に木枯らしを浴びても醒めなかった頭がはっきりと働き始めた気がした。
「百合愛はやっぱり大人だなぁ」
「そんなことないよ。動揺して千歳ちゃんに酷い態度取っちゃうくらいには私、子どもなの。」と百合愛は苦笑した。
俯きながら歩く百合愛を千歳は眺める。すると、百合愛のポケットから何回か音が聞こえた。百合愛は溜息をつき、ポケットに手を入れ、通知音が鳴ったスマホを胡乱げな目で見遣る。
「ごめんね。最近、色んな同級生から連絡が来て」
すぐに百合愛はスマホを仕舞って千歳のすぐ後ろについてくる。
ーそうか。百合愛はいま誰とも付き合っていないから、前のように色んな人が百合愛に近づいてきてるんだろうな。
千歳は忙しくなった百合愛を見て申し訳ない気持ちが湧いてきた。しかし、他人の好意を操る能力など自分には無い。自分ではどうすることも出来ず無力感に苛まれながら、すっかり秋づいた歩道を歩いた。
遠くの空を越冬でやってきた鶴たちが飛んでいることも、今の千歳は気づくことができなかった。
千歳は祖母が用意してくれた朝ごはんを一瞬で平らげ、百合愛と一緒に外を散歩した。
いつも見慣れた光景のはずなのに、なんだか懐かしく感じるのは、自分が何週間も入院していたことを考えさせられる。通学路にある街路樹も、この間まで葉が青々としていたというのに、今ではすっかり葉を落としてしまっていた。それが千歳にはどうもおかしくて、不自然で、不思議なことに思えた。
「千歳ちゃん。」
振り向くと、一歩後ろを歩いていた百合愛が微笑んでくる。
「実はね、千歳ちゃんが入院している間に席替えがあってね。千歳ちゃん一番前になったって聞いたよ。」
「え!?うち、居眠りできないってこと!?」
千歳ががっくりしている様子を百合愛はクスクス笑う。
「意外と前の方が居眠りバレないって聞くよ?」
「そうかなぁ。前に怒られたことあるけどなぁ」
「あー、中学の時だね。あの時は運が悪かったよ、千歳ちゃん。」
「そうそう!まさかチャンヤマダに見つかるとはね~」
「あれ?山田先生って数学だったっけ」
「うん。」
もう二人の会話の内容は学校と大して変わらなくなっていた。
千歳の肯定を最後に二人の間に静寂が訪れる。
「千歳ちゃん。零一くんと何かあったでしょ。」
百合愛の言葉に千歳は黙り込む。百合愛は自分なんかより相手のことを見ていることを千歳は忘れていた。やはり自分は誰かに隠し事をするのに向いていないようだ。
「うん。」
また肯定すると、百合愛は少し困り眉をしたが、また前を向いて一緒に歩き始める。木枯らしがさあっと千歳の髪を撫でた。しかし、今はその冷たさも受け入れられるような気がした。
「あのさ。愛って、どういうものなのかな。誰かと一緒にいるってことなのかな。」
百合愛は千歳を一瞥してフフッと笑った。千歳は自分のした質問に自分で恥ずかしくなった。
「違うよ、千歳ちゃん。相手の将来のことを考えるのが、愛だよ。」
百合愛の言葉に木枯らしを浴びても醒めなかった頭がはっきりと働き始めた気がした。
「百合愛はやっぱり大人だなぁ」
「そんなことないよ。動揺して千歳ちゃんに酷い態度取っちゃうくらいには私、子どもなの。」と百合愛は苦笑した。
俯きながら歩く百合愛を千歳は眺める。すると、百合愛のポケットから何回か音が聞こえた。百合愛は溜息をつき、ポケットに手を入れ、通知音が鳴ったスマホを胡乱げな目で見遣る。
「ごめんね。最近、色んな同級生から連絡が来て」
すぐに百合愛はスマホを仕舞って千歳のすぐ後ろについてくる。
ーそうか。百合愛はいま誰とも付き合っていないから、前のように色んな人が百合愛に近づいてきてるんだろうな。
千歳は忙しくなった百合愛を見て申し訳ない気持ちが湧いてきた。しかし、他人の好意を操る能力など自分には無い。自分ではどうすることも出来ず無力感に苛まれながら、すっかり秋づいた歩道を歩いた。
遠くの空を越冬でやってきた鶴たちが飛んでいることも、今の千歳は気づくことができなかった。
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