私の婚約者を奪った妹が婚約者を返品してきようとするけど、返品は受け付けません。 どうぞご幸せに。

狼狼3

文字の大きさ
8 / 9
日常

婚約者からの贈り物②

しおりを挟む

 雨が降っている。
 ボチボチと、水溜まりを作りながら。

 雨が降る中を楽しそうにピョンピョンと跳ねていく蛙を窓から眺めていると、後ろから妹がやってきた。

「今日は雨も降っているし、レイン様来ないんじゃないの?レイン様は第二王子とはいえ王子様なんだから、風邪を引く原因となる雨の日には多分来ないよ。だから………レイン様の代わりに、子豚さんの相手をしてみたらどう?私は優しいから、今日だけ譲ってあげるよ?レイン様が来たら、私がレイン様の相手をすればいいし……ね?」

 こっちを見ながら、何処か上から目線で喋ってくるて言葉の内容の通り、私とあの豚を結びつけようと最近は特にしつこい。興味もないのに、あの豚の着ている服の特徴を言ってきたり、あの豚の得意な料理を言ってきたり……その癖、レインと私がデートする度に、レインがデートで何を食べたのか聞いてきたり、レインの好きな物について聞いてくる。


 妹に何度も言っているが、私はレインをテスラーと結婚させるつもりはない。レインの隣は私だ。テスラーではない。それに、雨で今日はレインは来ないかもしれないが、レインと私は毎日のようにデートをしている。テスラーと私なら、絶対に私の方がレインと距離が近い……はず。確信は持てていない。いくら彼に抱き締められたとしても、今回の場合のように私と彼の婚約が親の勘違いで破棄されてしまったら、私と彼の繋がりはどうなるのだろうかと、いつも心配に思ってしまうのだ。いつも妹に邪魔されてきた私は、人をあまり信用することが出来ない。だから、雨であろうと彼に会えない日があると、心配で眠れなくなりそうになる。

 彼が来ないかなと窓を覗きながら外の様子を見ていると、玄関のベルの音が鳴った。

「すみません。レインですが………レイナって居ますか…ね?」

 悔しそうなテスラーを置いて玄関へ行くと、そこには雨に濡れて髪がおでこに付いているレインが。雨のせいかレインの服は濡れていて、レインの引き締まった筋肉が所々透けていて、何処か興ふ………イケない、イケない。風邪を引いてしまったら大変だ。まずは、その乾いた服を乾かそう。
 
 私に気付いたのか、嬉しそうにこっちを見てくるレインに喜びを覚えながら近付くと、私は濡れて冷たくなった手を引っ張って、風呂場へと連れて行った。

■■■■■■■■■

「それじゃあ、これに着替えて。お父様のやつだから少し小さいかもしれないけど。」
「うん。ありがとう。それじゃあ、ちょっと着替えるね。」
「分かった。」

 彼に服を渡して風呂場から退出すると、私は無事彼に贈り物が出来たことに胸を安心させる。
 お父様のやつと言ったが、あれは嘘だ。
 実は私が彼の為にこっそり買った………自分好みの衣装。
 まだ裁縫道具は彼からプレゼントされていないが、元々持っていた裁縫道具で買ってきた衣装に、少し工夫をしてみた。服の隅っこにレインの名前を縫ってみたり、上からじゃないと分からないが、首の部分がハートになるようにしてみたり……

 気付いてくれたら嬉しいが、別に気付かれなかったとしても、彼が使ってくれるだけで嬉しい。
 彼に嘘なんかつかなければ、彼は優しいからそのまま使ってくれるはずだけど、彼に気を遣わせるのは嫌なのだ。レインは第二王子だから、王族としてパーティーや食事会に何度も参加することになるだろうけど、その度に私に気を遣ってそのまま着ていたら………嬉しいけど、彼を困らせてしまう。


 そんな私は、レインに抱き締められた時を思い出しながら、レインが着替えるのを待つ。
 すると少し経った後、私の衣装を着たレインが戸を開けて、私の前にやってきた。
    
「ありがとうレイナ。この服とっても着心地がいいよ。」
「お父様のやつだからね。当たり前だよ?」
「そうだね。……でも、この服から、返さなくてもいい? 凄く可愛いくてさ。」
「え? ……可愛い?」

 レインの顔から視点を動かして、上からなぞるようにしてレインの服を見る。見てみても、レインの服は可愛いとは思えない。……というよりも、レインの服は逆にレインの凛々しい顔をより格好良く見せる、格好いい服だ。何処が可愛いのだろうか?


 何処か嬉しそうにするレインに、私は首を傾げた。

「お父さんには、こんなにを貰うんだから、何かお返しをしないとね。」
「え? お返し?しなくていいよ。」
「いやいや。しないといけないよ。絶対に。」


 何処が強情なレインに、私は対抗する。
 お父様の古着でもないのに、レインに古着のお礼としてお父様に贈り物を送られたら、私がその服をレインに渡したことがバレてしまう。

 だから、強情なレインに私も強情になった対抗した。

「……お返し出来ないと、悲しいなぁ。」
「大丈夫だよ。お父様なんて気にしないから。服のことなんて。」
「それじゃあ、代わりにレイナが贈り物を渡しておいてくれない?実は、今渡せるんだ。」
「え?私が………それに今って?」

 
 鞄の中から何かを探し出すレインに、私は疑問を浮かべる。
 お父様の代わりに私が受け取って渡しておくのは分かったけど、今渡せる?何処か言葉の使い方がおかしいレインに、私の疑問は更に加速する。レインは、私がお父様の服を渡すことを予想していたの? いやいや。そんな訳がない。……どういうこと?


 私は、鞄から何かを出そうとしているレインを、ただ見つめた。

「それじゃあ………この服のお礼として、この裁縫道具を受け取って下さい。」
「裁縫道具?」
「ん? 別に、じゃないのなら、別に他の人が受け取ってもいいんだよ?」
「え?」

 まさか、気付いているのか?
 私が作った服ということに。

 レインが持っている裁縫道具に、私の胸はスピードを速める。
 裁縫道具は、私が好きなものとして答えた物だ。……それに、さっきの可愛いという発言。…これは、私が縫ったレインの名前や、首のところをハートのマークにしたのがバレているのか?

 レインの持っている、金色でいかにも高そうな裁縫道具に視点を合わせた。

「それじゃあ、この裁縫道具の中身を見てくれないかな?」
「え?中身?」
「うん。中身があるか、しっかりと見てほしいんだ。」

 レインに渡された裁縫道具を開けて中身を見てみると、全て金色の中、一つだけ違う光り方をしている物があった。
 これは……指輪? 

 私の目がおかしくなければ、裁縫道具の中に指輪が一つ入っていた。

「あれ? 指輪? こんなもの入れたつもりはなかったんだけどな。」
「え?」
「裁縫道具の中に指輪なんて必要ないし、代わりにレイナが受け取って貰えない?」
「わ、私が!?」

 何処か意地悪そうに笑みを浮かべるレインに、私の顔が急に熱くなっていくのを感じる。意地悪そうに笑みを浮かべるレインも子供らしくて何処か可愛いが、私に指輪をくれるの?

 私は、レインから渡された指輪を眺めるようにして、くるくると回転させる。
 すると、指輪の宝石じゃない部分に、何か彫られている。
 えーっと、何々………え!? 嘘!?

 指輪の宝石じゃない部分には、私とレインの顔が彫られていた。
 その下に、という言葉を添えて。


 急に渡された指輪に困惑していると、レインは私に向けて手を差し伸べて、そっと膝をつく。その姿は、物語に出てくる王を守るような騎士で、とても格好良く凛々しい。すると、レインは一度呼吸を整えると、真剣な眼差しで私の瞳を見つめた。

「こんな僕で良ければ、僕と結婚をしてください。」

 膝を付いているレインに、私はそっと抱き付いた。
 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません

編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。 最後に取ったのは婚約者でした。 ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。

私から婚約者を奪う為に妹が付いた嘘…これにより、私の人生は大きく変わる事になりました。

coco
恋愛
私から婚約者を奪う為、妹が付いた嘘。 これにより、後の私の人生は大きく変わる事になりました─。

妹のために犠牲になることを姉だから仕方ないで片付けないでください。

木山楽斗
恋愛
妹のリオーラは、幼い頃は病弱であった。両親はそんな妹を心配して、いつも甘やかしていた。 それはリオーラが健康体になってからも、続いていた。お医者様の言葉も聞かず、リオーラは病弱であると思い込んでいるのだ。 リオーラは、姉である私のことを侮っていた。 彼女は両親にわがままを言い、犠牲になるのはいつも私だった。妹はいつしか、私を苦しめることに重きを置くようになっていたのだ。 ある時私は、妹のわがままによって舞踏会に無理な日程で参加することになった。 そこで私は、クロード殿下と出会う。彼との出会いは、私の現状を変えていくことになるのだった。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~

畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。

婚約破棄されてしまいましたが、全然辛くも悲しくもなくむしろスッキリした件

瑞多美音
恋愛
真面目にコツコツ働き家計を支えていたマイラ……しかし、突然の婚約破棄。そしてその婚約者のとなりには妹の姿が…… 婚約破棄されたことで色々と吹っ切れたマイラとちょっとしたざまぁのお話。

天使のように愛らしい妹に婚約者を奪われましたが…彼女の悪行を、神様は見ていました。

coco
恋愛
我儘だけど、皆に愛される天使の様に愛らしい妹。 そんな彼女に、ついに婚約者まで奪われてしまった私は、神に祈りを捧げた─。

 それが全てです 〜口は災の元〜

一 千之助
恋愛
   主人公のモールドレにはヘンドリクセンという美貌の婚約者がいた。  男女の機微に疎く、誰かれ構わず優しくしてしまう彼に懸想する女性は数しれず。そしてその反動で、モールドレは敵対視する女性らから陰湿なイジメを受けていた。  ヘンドリクセンに相談するも虚しく、彼はモールドレの誤解だと軽く受け流し、彼女の言葉を取り合ってくれない。  ……もう、お前みたいな婚約者、要らんわぁぁーっ!  ブチ切れしたモールドと大慌てするヘンドリクセンが別れ、その後、反省するお話。  ☆自業自得はありますが、ざまあは皆無です。  ☆計算出来ない男と、計算高い女の後日談つき。  ☆最終的に茶番です。ちょいとツンデレ風味あります。  上記をふまえた上で、良いよと言う方は御笑覧ください♪

処理中です...