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再会
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しおりを挟む「聖月?」
訝し気な蓮の声に、聖月ははっと顔を上げた。大丈夫かと顔で尋ねてくる蓮に笑いかけ、壇上に立つ朱雀―高宮に目を細める。
「KronosとNukesって、仲いいの?」
そっと尋ねると、蓮は不思議そうな顔をしつつ、うーんと唸る。
「仲がいいってよく聞くよ?生徒会と風紀が一緒に活動しているのもよく見るし。それが?」
「そっか、良かった」
蓮の言葉に、安堵の言葉を舌にのせて微笑む。朱雀と龍の不仲は有名であったので、心配していたのだ。双方、頭が良いので滅多なことはないと思いつつ、憂いが残っていたのだが、漸く晴れた。いっそ愛おし気な瞳をした聖月は、舞台袖から現れた痩身がそっと高宮に寄り添うのをみて益々嬉しそうに笑みを零す。
「朝顔」
「入学、おめでとうございます。生徒副会長を務めております、嵯峨野凛と申します」
たおやかな容姿でありながら、名前の通り凛と咲き誇る花。朝顔の名でKronosに所属し、高宮の右腕を務めていた彼はいまだにそのポジションにいるらしい。聖月は、変わらないなぁとクスクス笑う。ひとしきり笑ったあと、視線を戻すと、聖月の大きな目が更に見開かれる。無意識に身を乗り出し、食い入るように舞台上を見つめる。
「聖月⁈」
慌てたような蓮の声も聞こえず、聖月の意識が壇上に立つ男一人に持っていかれる。夢にまで見た、会いたい男。
「風紀委員長の竜崎煌」
ぶっきら棒な挨拶。人づきあいが苦手、でも、優しい男。ああ、変わってない。すぐにわかった。あの男こそが、Nukes副総長だった龍。ずっと一緒にいた、大切な仲間。滲む視界を瞬きで無理やりに晴らすと、蓮を振り返る。
「あれがKronosとNukesの総長?かっこいいねぇ」
「それが、KronosはともかくとしてNukesの総長は違うらしいよ」
風紀委員長と名乗る位なのでてっきりNukesの総長かと思ったが、そうではないらしい。
「周りのみんなとか、最近Nukesに入った人達は皆竜崎委員長が総長だって思ってるけど、本人とか所謂初期メンツって人達が否定してるんだ。因みに会長と副会長その他少数もね」
「え、だとしたら誰が総長になる訳?流石に総長不在はマズいでしょ?」
仲間の顔を思い浮かべつつ、聖月は首を傾げる。龍がもっとも総長にふさわしいと聖月は思っていた。その所為で半年間龍と戦争をしたことすらあったのだ。総長の座を巡ってではなく、押し付け合って戦争するなど、俺たちらしいと高宮に呆れられたのが懐かしい。
「ちょっと、いきなり察し悪くならないでよ。既にワードは出したよ?」
聖月がぐるぐると考えている間にも、蓮の方はいつの間にやら探り合いモドキを楽しんでいるようだ。簡単に答えを教えるつもりが無さそうなのを見て取って、聖月が今までの会話を脳内に再生する。今までの会話の中で、一番言及が無かったワードは一つ。
「皇帝」
「正解。噂では滅茶苦茶強かったらしい。でも、何が一番って、頭がずば抜けてたらしい。数の差をその頭脳で埋めてトップ争いに食い込んでいったってのは有名な話だし」
何気に情報通な蓮の解説を聞くうちに、聖月の秀麗な顔が歪んでいく。
「そして、皇帝について一番よく聞く話がその正体について。彼は一切の手がかりを残さなかったらしい。常に目深にキャップを被り、ダボッとしたパーカーで体の線を隠す徹底ぶり。パーソナルデータは一切謎。唯一分かっているのが、身に付けるものは基本的に黒で、対照的に混じりけが一切ない真っ白な長い髪の男って事だけ……聖月?」
「……何でもない。で、そいつが死んだことになってるって?」
「噂ではね」
蓮が肩を竦める。生徒会を筆頭に行われた各委員会の長の紹介が終わり、長い理事長の話が始まった。気の無い素振りでそれを眺めながら、聖月はこめかみが痛むのを感じていた。正体不明の“皇帝”。ものすごく、ものすごぉく、心当たりがあった。
「俺、なんか死んだことになってるし。ってか、皇帝なんて大層な名前じゃないんだけど」
「なんか言った?」
「別にぃ」
その特徴などから“皇帝”が自分であることに気付き、深いため息を漏らした。それと共に思わず漏れた本音。幸運にも蓮には届かなかったようだ。心配そうな顔をする蓮に笑いかけ、聖月はこれからの事を思い描き始めた。
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