学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき

文字の大きさ
3 / 84
再会

3

しおりを挟む
 Kronos総長、朱雀。本名は高宮鳳我と言うらしい。族での活動は基本的に通り名や渾名で行う。それ故に朱雀の名前を俺は知らなかった。

 朱雀と出会ったのは、勿論、夜の街だ。俺は当時、どうしようもない感情の捌け口を求めて街を徘徊していた。幼いころから武術を習っていたため、誰も俺に叶う事は無かった。結果として、俺は敢えて危険とされる場所に足を運ぶようになった。喧嘩が好きだった。体を動かせば、溜まり澱んだ感情が弾けていった。体に走る痛みと満ち満ちた熱気が、俺が生きていることを教えてくれた。特殊なアルビノであった為に日光は平気だが、特徴的過ぎて目立つので普段は隠している白銀の髪と碧眼をさらけ出し、わずかばかりキャップで目元を隠して“普段とは違う自分”を開放していた。

 卑怯な事や曲がった事を酷く嫌悪する俺は、力の差に成す術ない者を助けることに愉しみを見出すようになった。ただの自己満足だったし、その場にいるだけで自業自得と言えなくも無かったが、それだけが俺の支えであった。やがて俺の名前は広まり、一人、また一人と仲間が出来た。

 どいつもこいつも個性派揃いで、面白かった。それぞれが、譲れない何かを持っていた仲間たちは、強く。一緒にいて心地よかった。

 他愛の無い話で盛り上がり、時にケンカして、それでも一緒に夜の街を駆けた。結果として、俺たちは族として扱われるようになっていた。そんなつもりはなかったが、その方が面白そうだとその時に結成することになった。

 そんな俺たちの族の名前はNukes。核兵器とかそういう意味を持つ英単語。少人数の癖に、周りに大きな被害を生んでは嵐の様に去っていく俺たちにピッタリだと付けたのだ。俺はというと、いつの間にかNukesの総長という扱いになっていた。俺としては、一番最初の仲間であるりゅうが総長になるもんだと思っていたので、かなり抵抗した。結局とんでもない規模かつ期間の大喧嘩の後、口八丁手八丁で丸め込まれたが。

 そして俺たちは、Kronosに出会った。最大勢力で古株の族。どのチームも彼らには一目置いていた。新興の俺たちも知っていた。奴らとどうして交流を持つようになったのか。答えは単純。徘徊している最中に偶然遭遇。そのまま喧嘩を吹っ掛けられたのだ。

 正直勝つとは思っていなかった。それは俺だけでなく、仲間全員の思いだっただろう。それでも良かった。確かに勝てればそれに越したことはないが、俺たちは仲間と暴れる事に意義を見出していたためだ。案の定、数時間に及ぶ戦闘の末、俺たちは力尽きた。相当数は減らしたが、如何せん数が違うのだ。すると何を思ったのか、当時のKronos総長が、俺に一対一を申し込んできたのだ。総長の想像以上の俺たちの力に、面白がったようだ。俺が申し出を断るわけもなく、闘った。

 結果は痛み分け。アルビノ特有の脆弱さゆえに体力のない俺は長時間戦闘が出来なかったので、その分短時間できっちり傷をつけさせてもらった。俺の優勢になった瞬間に俺の体力が付き、その時点で試合終了となったのだ。ああ、悔しいなと思っていると、何故かそのまま総長に気に入られ、Kronosのたまり場に連行された。怪我の手当てを受けている時に俺に話しかけてきたのが朱雀だったのだ。

 当時副総長だった朱雀は、右腕を連れて俺にチョッカイをかけてきた。そのまま意気投合し、朱雀が総長の座を引き継いでからも親交があったのだ。朱雀と龍はいがみ合っていたが、それ以外のメンツは仲が良かった。



 俺が、失踪するまでは。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

天使の声と魔女の呪い

狼蝶
BL
 長年王家を支えてきたホワイトローズ公爵家の三男、リリー=ホワイトローズは社交界で“氷のプリンセス”と呼ばれており、悪役令息的存在とされていた。それは誰が相手でも口を開かず冷たい視線を向けるだけで、側にはいつも二人の兄が護るように寄り添っていることから付けられた名だった。  ある日、ホワイトローズ家とライバル関係にあるブロッサム家の令嬢、フラウリーゼ=ブロッサムに心寄せる青年、アランがリリーに対し苛立ちながら学園内を歩いていると、偶然リリーが喋る場に遭遇してしまう。 『も、もぉやら・・・・・・』 『っ!!?』  果たして、リリーが隠していた彼の秘密とは――!?

処理中です...