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再会
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しおりを挟むそうこうしているうちに、ホールへと到着する。
「入学式が体育館ではなくホール。そもそもホールがあるなんて、金かかってるねぇ」
「あのね?ここはお国の学校だし、お金持ちの後援者がいっぱいいるんだからね?」
ワクワクドキドキが半分、呆れが半分の聖月に、律儀に突っ込む蓮。彼は万年面倒見の良い苦労人ポジションなのである。空いている席を適当に選び腰を据え興味津々に辺りを見回す聖月。彼を困った顔で見つめていた蓮は、ふと伝え忘れていたことがあることに気付いた。
「あのね、聖月。大切な事を忘れてた」
「なぁに?」
舌足らずに尋ねてくる聖月。不覚にも可愛いと思ってから、蓮が取り敢えずの説明の中では最後の忠告をする。
「今の生徒会と風紀委員なんだけど、所謂“族”ってのが支配しててね」
「ええっと、何処から突っ込めばいいのか、というか、意味不明なんだけど?」
振り返って苦笑する聖月に、うーんと唸る蓮。
「そうだね、まず“族”ってのがあって」
「うん、それは大丈夫。チームと言うか、そういうグループがあるのは知ってる。問題は、不良の代名詞的な族がどうして生徒会と風紀?」
取り締まる側と取り取り締まわれる側。どう足掻いても繋がらない。いや、逆にソコを支配すれば自由に動けるのか?頭いい。
問いを発した後に、結論に至り、一人納得したようにうなずく。表情のクルクル変わる顔を見つめて苦笑する蓮。
「顔と質問が一致していない時点で何考えてるのか分からないけど。生徒会と風紀も何考えているのか分からないんだよね。ただ」
聖月の注意を引こうと一旦言葉を切る。すぐに聖月が意識を向けてきたのを確認する。
「彼らの人気は学園でもダントツ。だから制裁される可能性が一番高い。それだけじゃなくて。彼ら自身、かなりの実力者揃いだから怒りを買うのはお勧めしない」
「ふぅん?」
なんだ、それだけか。あっという間に興味を失い意識を逸らす聖月。ブレザーの下に来たカーディガンを弄り出す聖月の注意を必死で引く蓮。
「もうちょっとだけ!大事なことは、必要以上に彼らに近づかない事!だけど、それ以上に大切な事がある。絶対に言ってはいけない事があるんだ」
「言ってはいけない事?」
やるなと言われればやりたくなるのが人間。途端に目を輝かせる聖月だったが、蓮は聖月が考えている事は夢でも思いつかない。聖月の注意が戻ってきたことに胸を撫でおろす。
「彼らの大切な人が死んだ、ってことだ」
「へ?」
予想外の内容に聖月の目が点になる。
「ちょっと前に、彼らの大切な人が突然姿を消したらしい。彼らも探したけど見つからなくて。その内に彼らの取り巻きが言っちゃったんだ。もう死んじゃったのではって。その人自身も族に入ってたから、可能性としてはなくも無いからね」
「で?」
「結論から言うと、その取り巻きは退学したよ。原因は分からない。精神を病んだって言う人もいれば、暴力で全治何年って言う人もいる。ハッキリとした事実は、それを言った瞬間に彼ら全員が激怒したって事だけ。それから、噂話として話していただけでも逆鱗に触れる事が判明してね」
「なぁるほど。だからそんなに警戒しつつ話してるって訳か」
「そう。現に、周りの人が止めろって顔してるでしょ」
そっと声を潜めて蓮が教える。その挙動と周りの反応に納得がいった聖月は、ふと聞いていない事に思い至る。
「それで、その族の名前は?“大切な人”ってのは、名前とか判明してるの?」
-それでは、入学式を始めます-
アナウンスが聖月の声に被るように入る。目くばせし合い、そっと身を寄せ合った二人。蓮が視線で舞台を示す。
「ウチの学園は、入学式も生徒会と風紀が一枚かむんだ。だから舞台に上がるよ。そして、族の名前と、肝心の“大切な人”の名前だっけ?確か」
そっと蓮が遠い目をする。記憶を辿っているのだろう。その隣で聖月は目を見張り、舞台にくぎ付けになっていた。
何故なら。
「生徒会がKronos。風紀がNukes。探しているのは……皇帝って呼ばれてる人だったよ」
次の瞬間、壇上の青年の声が朗々と響き渡る。長めの黒髪をオールバックになでつけ、引き締まった体を制服に包んだ彼は。
「新入生諸君。まずは入学おめでとうと言っておこう。第九学園高等部生徒会長、高宮鳳我だ」
「……ひさしぶりだね、朱雀」
かつて、夜の街で暴れていた聖月と旧知の仲である、Kronos総長の青年だった。
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