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再会
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しおりを挟むそもそも、聖月は皇帝と名乗ったことは一度もない。本人にとって甚だ不本意なその呼名が故に、先程そのワードが出てきたときに反応できなかったのだ。夜の街で暴れすぎた代償だと聖月は思っている。繰り返し言うが、甚だ不本意なのだ。
「けどまぁ、なぁんか悪い事しちゃったかも」
長い入学式を終え、クラス発表を終え、クラスメイトとの顔合わせを終え、偶然にも同じクラスだった蓮と寮まで一緒に帰り、段ボールが散乱する部屋で一人ベットに寝転がる。特待生特権の授業料免除と一人部屋を甘受する。必要以上のなれ合いを苦手とする聖月にとって一人部屋は何より重要だった。
それはともかく。だらしなく寝転がったまま聖月はスマホに指を走らせる。厳重にロックした先に保存された写真を呼び出す。
Nukesの溜まり場として利用しているカフェの前で撮られた写真。10人程度の少年達が肩を組んで笑っている。中央にはそっと寄り添う様に立つ精悍な顔をした逞しい青年と、キャップを目深に被った白い少年。Nukes結成当時に撮ったものだ。聖月の数少ない宝物。
訳あって姿を晦ましたのだが愛すべき仲間たちは今でも探してくれていたらしい。連絡をすることすらままならなかったこれまでを振り返り聖月は微苦笑した。
「まさか、入学した先で皆集結してるとはね。ってか、死んでるっていう説が有力で、こんなに時間たってるんだもん。普通諦めるだろこの馬鹿どもが」
奇跡ともいうべき状況。腕が経ち頭も良い癖に、頑固で馬鹿どもの集まりであった事を思い出し、クスクス笑う。彼らの心が温かくて、心地よくて、切なくて。聖月の頬を光が滑り落ちる。やや躊躇った後、聖月はメール画面を開く。ゆっくりと時間をかけてアルファベットと数字を組み合わせてアドレスを形作っていく。一つ一つ記憶をなぞる作業に、胸が締め付けられる。
十数名分のアドレスを打ち込み、本文を考え考え作ってゆく。完成した後も、画面をじっくり眺め、送信マークを押そうとして躊躇う。暫くそうしていたが、意を決すると、そっと送信マークに触れる。一瞬の間を置いて「送信しました」の確認画面が表示される。聖月はスマホを放り出し大きく息をつくと、毛布を頭から被り丸くなる。眠れない長い夜が更けていった。
これが、青年達の二回目の始まりだった。
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