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逆襲
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ホワイトデーを!というsaya様のお言葉に感化されて。どうしようか、と考えてふと思い至ってしまいました。
……ホワイトデー、とは何ぞや。
ああ、まって、高宮君。そんな絶望した顔しないで。考えるから、考えたから、精一杯(多分、きっと、恐らく)。
という訳で、お楽しみいただけると幸いです。この程度か、なんて言わないで。これが作者の限界なんです(遠い目)。
**********
高宮凰我。
五大名家が一つ、高宮家の次期当主であり、容姿端麗、頭脳明晰、韋編三絶、勤倹力行、才徳兼備……。彼を表す称賛の言葉は尽きないだろう。控えめに言って、エリートである。
あるのだが。
「どうにもこうにも、不憫枠のイメージが強すぎる」
「ああ、私もそれ思っていました」
そうぼやくのは颯斗と嵯峨野。実に珍しい組み合わせである。それぞれが所属する組織にプライドを持っている事や、仕える主人に忠誠を誓っている事ため、主人やグループを抜きに会う事など、実は滅多にない。(颯斗に関しては、聖月を主人と認めているかは置いておいて、側に居ると楽しいからという理由な気もするが。)
「悪い遅くなった」
「ちょっと不憫枠第一席。人を呼び出しておいて、待たせるなんて。何様のつもり?ああ、不憫枠第一席様のつもりか。ゴメンゴメン」
「……おい、どこから突っ込めと言ってやがるコイツ。初っ端から飛ばしすぎだろ」
生徒会特権で一人部屋の嵯峨野の部屋。珍しい組み合わせが実現するに至った原因が遅れてやってきたかと思うと、早速毒を投げつけられ顔を引きつらせる。高宮だ。これくらいはほんの挨拶だ、と理解していても引きつる顔が堪えられないのは仕方ないだろう。
「ちなみに聞くが、不憫枠第二席は?」
「そりゃあもう。ここにいる嵯峨野君でしょ。なにせ、アイツに翻弄されつつ、アイツに良いように扱われて右往左往するアンタにも振り回されるんだから。あ、第三席は蓮君ね。なにせあの聖月に憑りつかれてるんだもん」
「私ですか。何となくそんな気がしていましたが、言葉にされると心に来るものがありますね……」
「って、地味に俺まで貶して無いかそれ?!」
明後日の方向を向いて、眦に光るものを拭う仕草をする嵯峨野。頭を抱えて叫ぶ高宮は、実は颯斗の言葉を否定しないという遠回しな方法で嵯峨野にすら貶されている事に気付ていないのだろうか。哀れである。
「って違う!そんな話をするために呼んだんじゃないっての!」
「だろうね。このために呼び出されたって知ったら、謹んでドM王子の称号を進呈するよ。さっさと本題入ってくれない?」
「もうやだコイツ!」
必死に話題を変えようとするも、追加ダメージ。俺はドMじゃない!と喚くが無視される。すでに颯斗に声をかけた事を後悔し始めるが、仕方ない。いつか絶対やり返す、と決意するが今日の本題の方が優先の為、脇に置いておく。
「ああもう!本題だ!一ヶ月前の事、覚えているだろ?」
「一ヶ月前?一ヶ月前って言うと……ああ、もしかしてあの馬鹿に一杯食わされたアレ?」
「そう。馬鹿にしてやられたアレだアレ」
小首をかしげて記憶を掘り返していた颯斗が嫌そうに顔をしかめる。そうそう、と頷く高宮は漸く話が進んでほっとしているようだ。二人そろって苦い顔をつき合わせている様を見て、嵯峨野が不安気な顔をしている。
「で?あれがどうかした?」
「ものは相談だがな。やられっぱなしなのは礼を逸すると思わないか?」
「つまり、やられた分、返礼をしたいって事?」
「その通り」
ニヤリと笑って持ちかける高宮に、颯斗の目が光る。ぎょっと目を見開く嵯峨野を忘れ去った様子で二人があくどい笑みを浮かべ始めた。
「ちょっと待ってください!死ぬ気ですか?!」
「……なんか、朝顔の聖月に対する恐怖心が透けて見えるよね。仕方ないけど」
「何を言ってるんだ相棒!ここで引いちゃあ男が廃る!って事で、協力してもらうぞ!」
「え、そんな、嫌ですよ!私はまだ死にたくありません!」
「大丈夫大丈夫。そうならない手があるからさ」
青ざめた顔で逃げ出そうとする嵯峨野。しかし、ここは嵯峨野の部屋。逃げ出す先がない。そこまで考えてこの部屋と指定したのか、変な所で頭を回すんじゃない!と声にならない悲鳴を上げるが、笑顔の主に捕まってしまえば嵯峨野にはどうしようもない。
この世の終わりと言わんばかりの様子である嵯峨野に、すすすっと近寄ったのは颯斗。コソコソとその耳に何事かを囁きかける。すると、少しずつその瞳が輝きを取り戻し。
「ああ、まぁそれなら」
「おい、お前ら。まさか俺を売る計画でも立ててんのか?!」
「ああ、それも良さそうですね」
「大丈夫。僕だって偶にはやり返したい気持ちあるから今回はリークしないよ」
慌てて高宮が牽制する。颯斗に笑顔でそれはない、と否定されたので疑わしそうな顔をしつつも追求を止める。聖月に倣っているためか、Nukusの者達に共通の特徴がある。それは、嘘はつかない事。決して正しいことも言わないが。
一応の信頼がおけるので、放置する。そのまま高宮は計画を二人に話し、さらに詳細を詰め始めた。
「大丈夫。何かあったら――失敗したら、高宮に脅されて、もとい命令されてって言えばいいんだから」
などと勝手に人身御供宣言されている事に気付いていない事は、幸せと言うべきか、何というべきか。
**********
竜崎さんのお返しの話を期待されている方がいらっしゃったらごめんなさい……。どうしても高宮君がやり返したくてしょうがないらしく、自己主張してきたもので……(責任転嫁)。
最終話とその一つ前のお話では彼も出てきて聖月君と絡みますので、よろしかったらそちらをご覧下さい。
……ホワイトデー、とは何ぞや。
ああ、まって、高宮君。そんな絶望した顔しないで。考えるから、考えたから、精一杯(多分、きっと、恐らく)。
という訳で、お楽しみいただけると幸いです。この程度か、なんて言わないで。これが作者の限界なんです(遠い目)。
**********
高宮凰我。
五大名家が一つ、高宮家の次期当主であり、容姿端麗、頭脳明晰、韋編三絶、勤倹力行、才徳兼備……。彼を表す称賛の言葉は尽きないだろう。控えめに言って、エリートである。
あるのだが。
「どうにもこうにも、不憫枠のイメージが強すぎる」
「ああ、私もそれ思っていました」
そうぼやくのは颯斗と嵯峨野。実に珍しい組み合わせである。それぞれが所属する組織にプライドを持っている事や、仕える主人に忠誠を誓っている事ため、主人やグループを抜きに会う事など、実は滅多にない。(颯斗に関しては、聖月を主人と認めているかは置いておいて、側に居ると楽しいからという理由な気もするが。)
「悪い遅くなった」
「ちょっと不憫枠第一席。人を呼び出しておいて、待たせるなんて。何様のつもり?ああ、不憫枠第一席様のつもりか。ゴメンゴメン」
「……おい、どこから突っ込めと言ってやがるコイツ。初っ端から飛ばしすぎだろ」
生徒会特権で一人部屋の嵯峨野の部屋。珍しい組み合わせが実現するに至った原因が遅れてやってきたかと思うと、早速毒を投げつけられ顔を引きつらせる。高宮だ。これくらいはほんの挨拶だ、と理解していても引きつる顔が堪えられないのは仕方ないだろう。
「ちなみに聞くが、不憫枠第二席は?」
「そりゃあもう。ここにいる嵯峨野君でしょ。なにせ、アイツに翻弄されつつ、アイツに良いように扱われて右往左往するアンタにも振り回されるんだから。あ、第三席は蓮君ね。なにせあの聖月に憑りつかれてるんだもん」
「私ですか。何となくそんな気がしていましたが、言葉にされると心に来るものがありますね……」
「って、地味に俺まで貶して無いかそれ?!」
明後日の方向を向いて、眦に光るものを拭う仕草をする嵯峨野。頭を抱えて叫ぶ高宮は、実は颯斗の言葉を否定しないという遠回しな方法で嵯峨野にすら貶されている事に気付ていないのだろうか。哀れである。
「って違う!そんな話をするために呼んだんじゃないっての!」
「だろうね。このために呼び出されたって知ったら、謹んでドM王子の称号を進呈するよ。さっさと本題入ってくれない?」
「もうやだコイツ!」
必死に話題を変えようとするも、追加ダメージ。俺はドMじゃない!と喚くが無視される。すでに颯斗に声をかけた事を後悔し始めるが、仕方ない。いつか絶対やり返す、と決意するが今日の本題の方が優先の為、脇に置いておく。
「ああもう!本題だ!一ヶ月前の事、覚えているだろ?」
「一ヶ月前?一ヶ月前って言うと……ああ、もしかしてあの馬鹿に一杯食わされたアレ?」
「そう。馬鹿にしてやられたアレだアレ」
小首をかしげて記憶を掘り返していた颯斗が嫌そうに顔をしかめる。そうそう、と頷く高宮は漸く話が進んでほっとしているようだ。二人そろって苦い顔をつき合わせている様を見て、嵯峨野が不安気な顔をしている。
「で?あれがどうかした?」
「ものは相談だがな。やられっぱなしなのは礼を逸すると思わないか?」
「つまり、やられた分、返礼をしたいって事?」
「その通り」
ニヤリと笑って持ちかける高宮に、颯斗の目が光る。ぎょっと目を見開く嵯峨野を忘れ去った様子で二人があくどい笑みを浮かべ始めた。
「ちょっと待ってください!死ぬ気ですか?!」
「……なんか、朝顔の聖月に対する恐怖心が透けて見えるよね。仕方ないけど」
「何を言ってるんだ相棒!ここで引いちゃあ男が廃る!って事で、協力してもらうぞ!」
「え、そんな、嫌ですよ!私はまだ死にたくありません!」
「大丈夫大丈夫。そうならない手があるからさ」
青ざめた顔で逃げ出そうとする嵯峨野。しかし、ここは嵯峨野の部屋。逃げ出す先がない。そこまで考えてこの部屋と指定したのか、変な所で頭を回すんじゃない!と声にならない悲鳴を上げるが、笑顔の主に捕まってしまえば嵯峨野にはどうしようもない。
この世の終わりと言わんばかりの様子である嵯峨野に、すすすっと近寄ったのは颯斗。コソコソとその耳に何事かを囁きかける。すると、少しずつその瞳が輝きを取り戻し。
「ああ、まぁそれなら」
「おい、お前ら。まさか俺を売る計画でも立ててんのか?!」
「ああ、それも良さそうですね」
「大丈夫。僕だって偶にはやり返したい気持ちあるから今回はリークしないよ」
慌てて高宮が牽制する。颯斗に笑顔でそれはない、と否定されたので疑わしそうな顔をしつつも追求を止める。聖月に倣っているためか、Nukusの者達に共通の特徴がある。それは、嘘はつかない事。決して正しいことも言わないが。
一応の信頼がおけるので、放置する。そのまま高宮は計画を二人に話し、さらに詳細を詰め始めた。
「大丈夫。何かあったら――失敗したら、高宮に脅されて、もとい命令されてって言えばいいんだから」
などと勝手に人身御供宣言されている事に気付いていない事は、幸せと言うべきか、何というべきか。
**********
竜崎さんのお返しの話を期待されている方がいらっしゃったらごめんなさい……。どうしても高宮君がやり返したくてしょうがないらしく、自己主張してきたもので……(責任転嫁)。
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