圏ガク!!

はなッぱち

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蜜月

心配性な先輩

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 スバルのおかげで怒濤の放課後を過ごし、その疲労感は飯食って風呂入った今ピークだった。今にも倒れそうなオレを心配して、部屋に帰るなり狭間が即行で布団を敷いてくれたので、遠慮なくダイブする。

 先輩の所に顔を出す気力が湧かない。文字通り精も根も尽き果てた。間違いなく自業自得なので文句の一つも言えないんだが。

「寒くない?」

 狭間は布団を掛けながら律儀に加減を聞いてくれる。最近は夜に肌寒さを感じるようになって、掛け布団は欠かせなくなった。大丈夫だと答えると、狭間はせっせと残り三人分の布団に取りかかる。

「どこを探しても冬布団ってないんだ。だから、冬場は厳しいかもしれないね」

 厳しいなんてものじゃあないだろう。ペラペラのくせに無駄に重い布団だけで寝ろとはさすが圏ガク、普通に凍死しそうだ。

 少し先の話は、気にはなったが耳を右から左へと抜けていく。今はこの微妙な布団でも、眠気を誘う心地よさを得られる。点呼は皆元式で狭間に任せて、早々に眠ってしまおうと意識を手放した瞬間、勢いよく部屋の扉が開いた。

「夷川、ちょっと面貸せ」

 連日ご苦労な事で、矢野君が部屋に乱入し、布団からオレを引きずり出した。

 土足で部屋に入られた事で、布団を踏み荒らされキレる皆元を押さえて、狭間に軽く謝って外へ出る。

「今日は何?」

 疲れているせいで、ぞんざいな対応になったが、矢野君は気付かず用件を口にした。

「金城先輩がこっちに向かってる。下で待っててやれ」

 会いに行く気力はなくても、会いたい気持ちはある。完全にパシリと化してる矢野君に礼を言って、いつもの自販機前に向かう。

「あれ、先輩いないや……」

 けれど、そこに先輩の姿はなかった。矢野君にからかわれたのかと思いもしたが、上級生をダシに使って下らない事はしないだろうと、ベンチに座って先輩を待つ。

「ん? そういや矢野君の言葉おかしくね? 先輩に言われてオレを呼びに来た訳じゃあないのか……って、どんだけ気ぃ遣ってんだ!」

 先輩の姿を見かけて、先輩を無駄に待たせまいとしてオレを呼びに来たのか! 上級生至上主義もここまでくると笑えないな。体育会系の思考回路マジで恐い。それを下にも押しつけてくるタイプの人間だというのは明らかなので、まだまだ長い圏ガク生活を思うと深い溜息が出た。

「おや、夷川君じゃないですか。随分と疲れた顔をしていますね。大丈夫ですか?」

 だらしなくベンチに垂れていると、たまたま通りかかったらしい変態が気軽に声をかけてきた。一応礼儀だと思い、ちゃんと座り直すと「そのままで結構ですよ」と涼しげに返された。

「金城先輩の進路、決定されたそうですね。おめでとうございます」

 嫌味のない言葉にオレも素直に頷く。すると、柏木は穏やかに笑った。

「これで会長と君の確執もなくなりました。また、いつでも生徒会室に遊びに来て下さいね。僕の手作りではありませんが、六岡君の用意してくれているお茶とお菓子をご馳走しますよ」

 誰が好き好んで変態の住処に行くかと思ったが、いつか食べたアップルパイの味を思い出すと、突っぱねる事は出来なかった。そんなオレの態度に気をよくしたのか、柏木は無遠慮に距離を縮め、人の耳元に口を寄せてきた。

「肉便器の先達として、金城先輩との性生活のご相談にも喜んで乗りますよ。我が生徒会の総力をもってすれば、だいたいのプレイは実現可能です」

 今日のオレには、変態の戯れ言さえ単なる嫌味に聞こえる。本当になんて日だ。

「セイシュン!」

 やたらニコニコしている柏木にオレがげんなりしていると、先輩の声が聞こえてきた。

「おっと、待ち合わせでしたか。ならば、邪魔者は退散しましょう。では失礼」

 先輩の姿を見るや、柏木は逃げるように走り去った。入れ替わり先輩が息を切らせてやって来る。

「さっき柏木の姿が一瞬見えたが、大丈夫か?」

「大丈夫、ちょっと話してただけだから」

 心配そうな顔をする先輩にそう伝えると、少し怒ったような声で「柏木と何を話すんだ?」と聞かれた。

「別に普通に……あ、先輩の進路決定おめでとうって言ってたよ」

 肉便器という単語を挟んでくる会話は普通ではないなと、答えながら思っていると、不穏な空気が先輩に伝わってしまったらしい。先輩は隣に腰を下ろし、不機嫌そうな顔を隠しもせず、黙り込んでしまった。

 しかし、今日は本当に疲れた。普通に座っているのもしんどいので、都合良く隣にやってきた膝を枕にして寝転んでみる。膝から見上げると、先輩は何かを我慢しているような固い表情で目の前の自販機を見つめていた。

「………………なに怒ってんの?」

 人目がある所でイチャつくのは避けたいのだが、普通の距離感で話すような内容じゃあないなと、抱き合うよりマシな態勢を取ってみた。でも、男同士で膝枕ってのはやっぱりヤバイな。気付いてしまったからには落ち着かず、のそのそと起き上がり先輩の腕にもたれるよう背中を預けて座りなおす。すると、ぼそぼそと先輩が気持ちを吐露し始めた。
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