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蜜月
自業自得
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好きな奴に便所呼ばわりされるって、どんな気持ちなんだろうな。自ら肉便器という肩書きを名乗る奴もいるから、コウスケもそっち方面に足を踏み出せば案外幸せに生きられるのではと思わんでもない。
「お前のメンタルに深い傷が付いたのは分かった。オレの内申も似たようなものだから、そこの文句は聞かねぇ。オレも言わないからお前も黙ってろ」
これ以上深入りすると、とんでもない泥沼に引きずり込まれそうで恐い為、しっかり予防線を張ってから本題に入る。
「恐い人をけしかけるって、どういう意味だ?」
思い当たる人間は一人しかおらず、展開によっては最悪の事態だ。コウスケを問い質すと、非難するような目をこちらに向けながらも一通り説明してくれた。
今日の昼休み、先輩はスバルを呼び出し、オレに対する態度を改めろと迫ったらしい。オレのやらかした私塾についても色々と注意をされ、その流れ弾にコウスケは被弾したようだ。
「先輩から殴られたりしたのか?」
コウスケの顔は涙と鼻水だけではなく、殴られた痕だろう腫れで倍くらいになっている。控えめに言っても悲惨で、オレとしては生きた心地がしなかった。
先輩が嫉妬とかいう馬鹿らしい事を理由に手を出すとは思えなかったが、何の理由がなくとも人を殴る奴らが相手だ。暢気な先輩の注意をサラッと流せるほど、スバルもコウスケも人間が出来ていないのは嫌というほど知っている。降りかかる火の粉を払おうと、手を出した可能性があるんじゃあないかと、不安になってしまったのだ。
「ううん、あの三年に殴られた訳じゃないよ。これはバルちんが……ご褒美の相手がオレだったって聞いたバルちんが、うぅぅ」
これはどちらに同情するべきか……便所(だと認識している奴)にキスされていたスバルも災難だが、存在を便所扱いされてボコられるコウスケも不憫すぎる。その絵を描いたのはオレだが、元はと言えばコウスケが色気だしたのが悪いし、更に言えばコウスケが気の迷いを起こした原因はスバルがコウスケを犯したせいだ。
考えれば考えるほどに、どうしてオレはこいつらに関わってしまったんだと思わずにはいられない。
「先輩には手を出されてないんだな」
どうしようもない現実から目を逸らし、一番大事な所を再確認する。
「直接はね。でも、あれは絶対殺る気だったよ。空気読めないバルちんですら、ビビってオレを盾にしたもん」
先輩が殺る気とか、全くイメージ出来ない。二人に駄菓子でも握らせて、もう悪い事するなよとか言ってる方がしっくりくるんだが、コウスケが嘘を吐く理由もない。
「悪かったよ。寝ぼけたスバルに噛まれて迷惑してるって相談したから、注意しに行ったんだと思う」
「てか、あいつ一体なんなの? えべっさんの何?」
素直に謝罪すると、腫れ上がった顔でコウスケが凄んできた。これ以上便所にかまけている訳にもいかない。腫れた顔を軽く叩いて「オレにとってもお前にとっても先輩だよ」と答えて医務室に向かった。
それからの事は、思い出すのも嫌になるくらい大変だった。
医務室で布団にくるまり震えながら泣くスバルと引き合わされた。担任の前で私塾の内容を暴露され、コウスケの部分が便所と変換された説明に反論の一つも出来ず、結局オレが冗談半分でスバルに便所を舐めさせた事になってしまった。
オレには便所を再度コウスケと変換する度胸はなかったのだ。じいちゃんの前で男同士をキスさせてたなんて言えなかった。自分にキスを迫る男を避けるべく、便所を身代わりにするしかなかったと、苦しい言い訳を口にする度、自分の中の大事なものが削られていった気がした。
友人からのイジメを訴えるスバルのせいで、我が校はじまって以来の難題(圏ガクの暴力はコミュニケーションの一つとして数えられる為、学校側にイジメとかいう概念がない)に直面した担任は、じいちゃんがいるおかげで略式解決の体罰を封じられ、じいちゃんのお説教をステレオのように繰り返し、まるで小学生に言い聞かせるような生ぬるい説教をオレとスバルに聞かせた。
その説教の中、担任がやたら『ともだち』と連呼したせいで、スバルがオレを『ともだち』と認識してしまい、更に事態は混沌と化す。スバルは、担任とじいちゃんを巻き込んで『ともだち』ならどこまでヤってもいいかの議論を巻き起こした。
そのおかげで一方的にオレがスバルを虐めた訳ではないと、担任にも納得してもらえたのだが、スバルが語る赤裸々な男同士のあれこれに大人たちが目を白黒させていたのは、またしても生きた心地がしなかった。
友だち以前に男同士でキスはしないと、最初の方こそ担任は頑張ってくれていたが、スバルの無駄に無垢な無邪気さを前に敗北。けれど『ともだち』はキスしない、フェラしない、セックスしない、そんな頭の痛くなるような問答に最後まで付き合ってくれた。
「今は多いのか……春日野みたいな奴」
泣きつかれたのか話してる最中にスバルが寝落ちした後、酷く疲れた顔をした担任が独り言のように聞いてきた。多くはないだろうと無難に答えると「お前も……いや、いい」ボソッと呟き返されたが、オレは聞こえない振りをした。
「お前のメンタルに深い傷が付いたのは分かった。オレの内申も似たようなものだから、そこの文句は聞かねぇ。オレも言わないからお前も黙ってろ」
これ以上深入りすると、とんでもない泥沼に引きずり込まれそうで恐い為、しっかり予防線を張ってから本題に入る。
「恐い人をけしかけるって、どういう意味だ?」
思い当たる人間は一人しかおらず、展開によっては最悪の事態だ。コウスケを問い質すと、非難するような目をこちらに向けながらも一通り説明してくれた。
今日の昼休み、先輩はスバルを呼び出し、オレに対する態度を改めろと迫ったらしい。オレのやらかした私塾についても色々と注意をされ、その流れ弾にコウスケは被弾したようだ。
「先輩から殴られたりしたのか?」
コウスケの顔は涙と鼻水だけではなく、殴られた痕だろう腫れで倍くらいになっている。控えめに言っても悲惨で、オレとしては生きた心地がしなかった。
先輩が嫉妬とかいう馬鹿らしい事を理由に手を出すとは思えなかったが、何の理由がなくとも人を殴る奴らが相手だ。暢気な先輩の注意をサラッと流せるほど、スバルもコウスケも人間が出来ていないのは嫌というほど知っている。降りかかる火の粉を払おうと、手を出した可能性があるんじゃあないかと、不安になってしまったのだ。
「ううん、あの三年に殴られた訳じゃないよ。これはバルちんが……ご褒美の相手がオレだったって聞いたバルちんが、うぅぅ」
これはどちらに同情するべきか……便所(だと認識している奴)にキスされていたスバルも災難だが、存在を便所扱いされてボコられるコウスケも不憫すぎる。その絵を描いたのはオレだが、元はと言えばコウスケが色気だしたのが悪いし、更に言えばコウスケが気の迷いを起こした原因はスバルがコウスケを犯したせいだ。
考えれば考えるほどに、どうしてオレはこいつらに関わってしまったんだと思わずにはいられない。
「先輩には手を出されてないんだな」
どうしようもない現実から目を逸らし、一番大事な所を再確認する。
「直接はね。でも、あれは絶対殺る気だったよ。空気読めないバルちんですら、ビビってオレを盾にしたもん」
先輩が殺る気とか、全くイメージ出来ない。二人に駄菓子でも握らせて、もう悪い事するなよとか言ってる方がしっくりくるんだが、コウスケが嘘を吐く理由もない。
「悪かったよ。寝ぼけたスバルに噛まれて迷惑してるって相談したから、注意しに行ったんだと思う」
「てか、あいつ一体なんなの? えべっさんの何?」
素直に謝罪すると、腫れ上がった顔でコウスケが凄んできた。これ以上便所にかまけている訳にもいかない。腫れた顔を軽く叩いて「オレにとってもお前にとっても先輩だよ」と答えて医務室に向かった。
それからの事は、思い出すのも嫌になるくらい大変だった。
医務室で布団にくるまり震えながら泣くスバルと引き合わされた。担任の前で私塾の内容を暴露され、コウスケの部分が便所と変換された説明に反論の一つも出来ず、結局オレが冗談半分でスバルに便所を舐めさせた事になってしまった。
オレには便所を再度コウスケと変換する度胸はなかったのだ。じいちゃんの前で男同士をキスさせてたなんて言えなかった。自分にキスを迫る男を避けるべく、便所を身代わりにするしかなかったと、苦しい言い訳を口にする度、自分の中の大事なものが削られていった気がした。
友人からのイジメを訴えるスバルのせいで、我が校はじまって以来の難題(圏ガクの暴力はコミュニケーションの一つとして数えられる為、学校側にイジメとかいう概念がない)に直面した担任は、じいちゃんがいるおかげで略式解決の体罰を封じられ、じいちゃんのお説教をステレオのように繰り返し、まるで小学生に言い聞かせるような生ぬるい説教をオレとスバルに聞かせた。
その説教の中、担任がやたら『ともだち』と連呼したせいで、スバルがオレを『ともだち』と認識してしまい、更に事態は混沌と化す。スバルは、担任とじいちゃんを巻き込んで『ともだち』ならどこまでヤってもいいかの議論を巻き起こした。
そのおかげで一方的にオレがスバルを虐めた訳ではないと、担任にも納得してもらえたのだが、スバルが語る赤裸々な男同士のあれこれに大人たちが目を白黒させていたのは、またしても生きた心地がしなかった。
友だち以前に男同士でキスはしないと、最初の方こそ担任は頑張ってくれていたが、スバルの無駄に無垢な無邪気さを前に敗北。けれど『ともだち』はキスしない、フェラしない、セックスしない、そんな頭の痛くなるような問答に最後まで付き合ってくれた。
「今は多いのか……春日野みたいな奴」
泣きつかれたのか話してる最中にスバルが寝落ちした後、酷く疲れた顔をした担任が独り言のように聞いてきた。多くはないだろうと無難に答えると「お前も……いや、いい」ボソッと呟き返されたが、オレは聞こえない振りをした。
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