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# 34 悪夢ふたたび……
しおりを挟む倭の地……旧邪馬台国跡地。
確か三国志とかで有名な3世紀ごろの魏という国の魏志倭人伝って言う歴史書に載っていたとされる日本のどこかの地方にあった国。卑弥呼という女性が、治めていたらしいけど、実質、国を動かしていたのは弟で、姉は占いで国を支えるという精神的な柱として、トップに君臨していた、みたいな曖昧な記憶しかない。
九州説や畿内説……奈良県あたりにあったという説が有力だが、はっきりとした証拠がいまだに見つかっていない。
九州にしても奈良県あたりでも、豆丸の住んでいるところから、かなり遠い。行きと帰りに丸1日以上、留まるのに数日だと考えて、最低でも1週間分の食料やら、車2台が往復できるガソリンを確保しなければならない。
そのため、初めて雨と会ったホームセンターに寄った。
入り口のところが酸のようなもので溶かされている。
中は暗く、ひどく荒らされていた。
生存者はなく、食料品のところはメチャクチャになっていたが、お目当てのガソリン用の携行缶のところは、無事だったので、5缶あるだけ手に入れた。
──うん?
外でモリ達が戦闘を始めた。
すぐに戻るつもりだったので、外に残したモリは数が少ない。
でも大丈夫。
なぜなら。
「あら、早かったのね」
「遅いわよ、アンタ」
雨とカグヤ。
この2人が、外を見張ってくれていたので全く心配していなかった。
雨の能力は「水」──
とてもシンプルだが、ある意味、最強なのかもしれない。
水の弾丸が次々と熊の化け物を倒していく。
ただ一つ弱点があるとするなら彼女の水は有限であること。
持参した2Lのペットボトル。
その中にある水が彼女の武器の源である。
放たれた水は再び 回収できる。
だが、水の汚染が少しずつ進むため、無限ではないらしい。
一方、カグヤの能力は、2体の狛犬。
軽自動車並みの大きさの雌の狛犬と、大型バン並みの雄。
雌が地面に爪を突き立てると、前方に石柱が並ぶように地面から突き出て、熊型の化け物を串刺しにしていき、雄の突進は身体に黄金の風を纏い、熊型の化け物を次々と跳ね飛ばし、蹴散らしていく。
最近、熊型の化け物が、弱く見えてしまうが、そうではない。最初に遭遇した時、電柱をなぎ倒していく圧倒的なパワーを忘れはしない。ただ、雨やカグヤのスキルが、熊の化け物をはるかに凌駕しているという結果に過ぎない。
「そろそろ、ここから離れましょうか?」
「オジ様、後ろ!」
雨の視線は豆丸と歩茶の後方に向けられていた。振り返ると見覚えのある人物がそこにいた。
──村議?
以前、歩茶を病院に連れていった日、豆丸宅が襲撃された際、こつ然と姿を消した人物。
人型の化け物に成り下がった60代の男は、牙を剥き豆丸とその隣にいる歩茶へと飛びかかってきた。
村議だった化け物の武器は、青黒く伸びる不気味な舌。
狙いは歩茶。
カエルが昆虫を捕食するように舌を伸ばして歩茶を攫おうとした。
ちょっと前までの豆丸なら真っ先に歩茶を守ろうとモリ達に指示を出していた。
だが、今は違う……。
歩茶が髪の毛で、村議の気色悪い舌を縛りつけ、締め付けて千切った。
かつて、そのよく回る舌のせいで、さんざん嫌な思いをしてきた歩茶だった。
だが、それも昔の話。
今はその憎き舌を潰して、幾多の人をその心無い言葉の暴力で傷つけてきた村議の舌に引導を渡した。
「歩茶ちゃん、後は私に任せて」
歩茶にトドメをやらせないよう、気を遣った雨が素早く動いた。
「うばわぉわぁああ!」
歩茶と豆丸の前に立ち塞がった雨にやけくそ気味に突撃してくる元村議。
「あら残念ね、年上のオジ様は好きだけど貴方は論外」
豆丸は歩茶の両目をそっと覆った。
「地獄で、また村議に立候補なさい」
文字通り、複数の水の刃が村議を襲い、八つ裂きにした。
斎宮家の門番、馬鹿力のムキムキの天狗を倒した時もそうだが、豆丸のまわりにいる女性陣が強すぎて、豆丸のモリ達にほとんど出番が回ってこない。
まあ、これはこれでいいか。
肩の力が抜けて、車に戻ろうとした瞬間……。
「──ツタツタ!」
油断していた⁉
久しぶりに聞いたツタ忍の警告。
数本の蔦が止めてくれなかったら、ドリルで豆丸のこめかみが貫かれていた。
人型の化け物は村議だけじゃなかった。
見覚えのある人型。
以前、病院で村議の奥方のお腹に穴を開けた腕をドリルに変化させた男。
さらに背後に複数の人型。
その中には、以前、寺で襲われた時に話を交わした元Playerの3人も含まれていた。
そうなると当然……。
──いた!
人型達のはるか後方。
あの強烈な気配を忘れるはずはない。
「皆、逃げて!」
叫びながら、とっさに斎宮ハガネをストレージから出した。ハガネに時間を稼いでもらっている間に軽トラの助手席に歩茶を乗せ、アクセルを目いっぱい踏み込み離脱を図る。雨とカグヤも人型の後方にいる人外の化け物の存在を確認し、高級車に乗り込み、軽トラよりも先に加速して大きな道へと出た。
ドン、と軽トラの荷台に斎宮ハガネが着地したのをルームミラーで確認した。追いすがるドリルの腕を刀で弾き返して、何とか危機を脱した。
だけど、ホームセンターの駐車場に何体か逃げ遅れたモリ達を残してきてしまった。
仮想戦術領域で残してきてしまったモリ達を確認する。
動きからして逃げる素振りを見せず、自主的に足止めのために残ったモリ達。
仮想マップから1体、また1体と数が減っていき、完全にエリアからリンクしたモリ達の信号が消えてしまった……。
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