〖完結〗婚約者の私よりも、ご自分の義妹ばかり優先するあなたとはお別れしようと思います。

藍川みいな

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11、そろそろ話してください

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 「デイビッドお義兄様こそ、なぜエリアーナ様と一緒に居るのですか? 私のことを、あれほど可愛い可愛いと仰っていたではありませんか! 『エリアーナは可愛げがない』からと、私にベッタリだったくせに!」

 私の悪口を、キルスティン様に言っていたようだ。
 二人のやり取りを見ながら、美味しいお肉をパクリ。自分の悪口を目の前で言われているのに、次々にお肉を平らげていく。随分と、神経が図太くなっていたようだ。でも、美味しいのだから、仕方がない。

 「お前は、お世辞も分からないのか!? その顔で可愛いと言われて、本気にするとは正気ではないな!」

 キルスティン様に言われっぱなしは我慢出来なかったのか、記憶喪失設定を忘れて言い返すデイビッド様。

 「お、おい、デイビッド……」

 不味いと思ったのか、レイモンド様が止めに入るけれど、二人の言い合いは止まらない。

 「な!? そんなショボイ顔のデイビッドになんか、言われたくないわ!」

 とうとう呼び捨てになった。
 
 「お前よりは、マシだ!! 貧乏男爵家の分際で、俺に逆らうつもりか!? お前なんかを可愛がっていたのは、昔のエリアーナを思い出したからだ! もちろん、美しいエリアーナとお前では容姿は比べ物にはならないけどな!!」

 記憶があることを、自白してしまった。
 レイモンド様は頭を抱え、キルスティン様は口をパクパクさせている。キルスティン様も、記憶喪失のフリをしていたことは知らなかったようだ。

 「お前……!! 騙していたのだな!?」

 怒りのこもった声で、お店の別室から姿を現したのはおじ様だった。その後ろから、お父様とグレイ様、そしてアレン様が姿を現す。
 デイビッド様がこのレストランに姿を現す前から、皆さんには別室に隠れて話を聞いてもらっていた。
 
 「ち、父上!? これは、違うんです! これは……」

 真っ青な顔になりながら、 言い訳を必死で考えようとするデイビッド様。そんなデイビッド様に、ゆっくり近付いていくおじ様。

 「いい加減にしろっ!!」

 おじ様はデイビッド様を、思い切り殴りつけた。大きな音を立てて彼は吹き飛ばされ、床に転がる。

 「お前はどれほど、嘘を重ねるつもりなのだ!? エリアーナを傷付け、盾にまでしたそうだな? お前がエリアーナを愛しているのだと、ずっと信じて来たのに……」

 どうやら別室に隠れていた時に、湖でのことを聞いたようだ。
 おじ様は、本気でデイビッド様を信じていた。裏切られ、怒りの表情を浮かべながらも、こぼれそうなほど目に涙が浮かんでいる。

 「エリアーナ……エリアーナ、本当にすまない!! すまない……」

 おじ様は、何度も何度も謝りながら、床に頭をこすり付けた。

 「おじ様、頭をあげてください!」

 おじ様を、苦しめたいわけではない。

 「デイビッド様、そろそろ全てをお話いただけますか?」

 お父様がおじ様を椅子に座らせ、皆が席に着く。デイビッド様はゆっくり立ち上がり、切れた唇の端を拭いながら、観念して全てを話し始める。

 「……俺は、ずっとエリアーナが好きだった」

 デイビッド様は、いつも私を見ていた。グレイ様を兄のように慕い、アレン様のあとをずっと追いかけて行く私を。
 確かに幼い頃、私はアレン様の側から離れなかった。優しくて何でも知っていて、お父様のお仕事が忙しくて寂しい時もアレン様は『俺が居るから』といつも頭を撫でてくれた。デイビッド様も好きではあったけれど、彼との思い出はそれほどない。
 そして八歳の時、お父様とおじ様の間で婚約の話がまとまろうとしていた。その話を聞いたデイビッド様は、『絶対にエリアーナを自分の婚約者にする』と心に決めたそうだ。それから毎日、おじ様を説得しようと、『エリアーナを愛している』と言い続けた。
 そこまでは、お父様が話してくれたことで何となく理解はしていた。問題は、その後だ。

 「私の誕生日のあの日までは、デイビッド様は誠実でお優しい方だと思っていました。どうして、別人のようになってしまわれたのですか?」

 デイビッド様は、キルスティン様に会われてから変わったように思えた。

 「キルスティンを、幼い頃のエリアーナに重ねていたんだ。アレン兄上に向けるエリアーナの眼差し、俺には一度も向けてくれたことがなかった。もちろん、キルスティンの眼差しはそれとは違っていたけれど、『お義兄様、お義兄様』と、懐いてくるのが嬉しかった。本当はあの日、謝ろうと思っていたんだ……だが、邸に帰ったら、お前はアレン兄上と楽しそうにしていた。お前と居るより、エリアーナの姿を重ねたキルスティンと居る方が楽しくなっていた。それに、エリアーナがヤキモチを妬いてくれたら……そんな風にも思っていた」

 デイビッド様の話を黙って聞いていたキルスティン様の顔が、悪魔のような形相になっていた。どうやら彼女は、デイビッド様の気持ちに気付いていなかったようだ。
 ただ、その説明だと、私を盾にしたことと矛盾している。愛していたのなら、なぜ自分の身を守る為に私を犠牲にしようとしたのか……。

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