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二章
ホークス公爵
しおりを挟む「ホークス公爵に、お会いしたい」
カタリーナが門番に話す。けれど、門番は私たちの姿を見て首を傾げる。
私たち三人は、みんな護衛の格好をしているのだから不思議に思うのも無理はない。
「セリーナ・ブランカがお会いしたいと、お伝えください」
クリスティ様の誕生パーティーであれだけ目立つことをしたのだから、この国の貴族なら私を知っているはずだ。
「少々、お待ちください」
私の名を聞いたホークス公爵は、慌てた様子で門まで出迎えに来てくれた。
「まさか、セリーナ様が来てくださるとは思いもしませんでした! どうぞ中にお入りください」
ランドルク公爵家を三大貴族から外したのは私なのに、歓迎してくれている。私がなにをしに来たのかは、まだ察していないようだ。
ホークス公爵に案内されて、応接室へと通された。
「今日は、どのようなご用件でいらしたのですか?」
応接室のソファーに座ると、さっそく本題に入る。
「余計なやり取りは、やめましょう。率直にお聞きします。ホークス公爵は、ランドルク公爵となにを企んでいるのですか?」
「な……にを仰っているのですか? なにも企んでなどおりません」
動揺しているところを見ると、なにか企んでいるのは明らかだ。
「余計なやりとりは、やめましょうと言いましたよね? 二度目はありません。よくお考えになってから、お答えください。グルダ王国を、手に入れるおつもりですか?」
「それは……あの……」
ホークス公爵の反応は、認めたようなものだ。図星をつかれて、公爵の顔が真っ青になっていく。
強気で攻めたのには、理由がある。考える時間を与えないためだ。
本人に会ってわかったことがある。公爵は義理堅いわけでも、弱みを握られているわけでも、ランドルク公爵に利用価値があると思っているわけでもない。
ただ単に、自分が先頭に立って行動することができないのだ。
こんな小娘が強気に出たくらいで、額にうっすらと汗が滲むほど動揺している。言い返すこともできないくらい、気が弱いのだろう。
「全てわかっているので、先程の返事はけっこうです。ですが、今から言うことには答えていただきます。いいですね?」
「は……はい……」
認めたことにも、気づかないほど単純だ。
「ホークス公爵、私とランドルク公爵、どちらを選びますか?」
「…………」
きっとホークス公爵の頭の中は、どちらにつくか必死で考えているだろう。けれど私がここにいる時点で、彼の答えはひとつしかない。
だって公爵は、気が弱いのだから。
「セリーナ様に、従います」
思い通りに事が運んでくれてよかった。公爵に会うまではカタリーナに脅してもらうつもりだったけれど、武力を使わずにすんで安心した。
あまりにも簡単で、これは演技では? と考えたりもしたけれど、こんな演技ができるのなら、そもそもランドルク公爵になど従っていないだろう。
「では、出発の準備をしてください」
「……え?」
「私に従うと決めたのですよね? ランドルク公爵側のほかの方たちにも、お会いしなければなりませんから」
「はい……」
最初は、公爵を連れていくつもりはなかった。けれど、こんなに協力的なら連れていく方が、ほかの貴族を説得しやすいと考えた。
ここからは、ホークス公爵家の馬車で移動することにした。公爵の馬車なら、誰も疑わない。
それに今私は、護衛の格好をしている。警戒されずに、屋敷の中に入れてもらえるだろう。
馬車に乗り込むと、ホークス公爵は簡単にランドルク公爵を裏切った。
「一ヶ月後の議会で、ランドルク公爵はルギウス陛下の責任を追求するおつもりです」
その責任とは、グルダ王国周辺の国々がいっせいに攻撃してくるというものだった。ランドルク公爵は、周辺の国々に協力を求めたのだろう。
けれど、簡単に周辺の国々が協力するはずがない。大きな見返りを要求される。そこまでして、ルギウス様を国王の座から引きずり下ろしたいようだ。
次の王には、サイモン様をすえる気だろう。
そんなことになったら、この国は終わりだ。絶対に、阻止してみせる。
次の行き先は、ハーレス侯爵家。ホークス公爵の話によると、ハーレス侯爵は領民から多額の税金を取り立てている。
ハーレス侯爵がランドルク公爵に協力するのは、公爵位を約束したからだそうだ。さらに、広大な領地を与えると約束している。
その広大な領地の領民から、多額の税金を取るつもりなのだろう。
お父様が、私たちに教えてくれたこととは真逆な行為。許せない気持ちで、いっぱいになる。
次の相手には、容赦する必要はなさそうだ。
ホークス公爵から聞いた情報を、一刻も早くルギウス様とシェリルに知らせなければならない。手紙を叔父様に届けるよう、護衛に頼んだ。
八時間後、ハーレス侯爵家に到着した。
ホークス公爵家の馬車だからか、疑いもせずすんなり中に通してくれた。
「ホークス公爵! 連絡もなしに、どうされたのですか?」
「すまない、侯爵。実は……」
「私が、ハーレス侯爵にお会いしたいと無理を言いました」
応接室に入ると、ホークス公爵の後ろから前に出る。
「おまえは……!?」
どうやら、私が誰かわかっているようだ。
「おまえ……ですか……」
大きなため息をつきながら、侯爵を睨みつける。
「い、いや! これはこれは、セリーナ様ではありませんか! グランディ王国にいらっしゃるとばかり思っていたので、驚きました。そのようなお姿でも、相変わらずお美しい!」
「胡散臭い笑顔も、心にもないお世辞もいりません。私が来た意味を、お考えください」
侯爵の笑顔が、一瞬で引きつった。
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