幼馴染の王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな

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二章

別行動

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 グルダの国境付近に近づいたところで、馬車を止めてもらう。

「シェリルは元々乗ってきた馬車で、このまま王宮に向かって欲しい。シェリルが離れていた間に起こったことや、今の王宮の様子を知らせて。叔父様……ロイド・ブランカ子爵を通して、連絡は取り合いましょう」

 シェリルは、たった一人で戦っているルギウス様が心配なのだろう。不安を表に出さないようにしているけれど、一緒にいればわかる。
 そして、ここからが問題だ。

「レイビス様は、東から回って五人の貴族に会いに行ってください。私は、西から回って六人の貴族に会います」
「なにを言っている!? 別々になど、ありえない!」

 思った通り、レイビス様は反対した。

「私たちがランドルク公爵家側の人間に接触することを、ランドルク公爵に知られるわけにはいきません。つまり、時間との勝負になります。私たちは、別行動しなければなりません」

 これは、私とレイビス様でなければできないことだ。私たちの使いを送っても、貴族たちが話を聞くとは思えない。

「だが、セリーナを危険な目にはあわせられない!」

 レイビス様が、心配してくれているのは嬉しい。けれど、成功させなければならない。

「私には、カタリーナがついています。レイビス様……私、これでもかなり怒っています。元王妃様は、クリスティ様がどうして嫁がされたのか、前国王陛下がどうして王位を退かれたのか……あの一件で、なにも学んでいない」

 元王妃様もランドルク公爵家も、反省するどころかグルダを自分たちのものにしようとしている。

「私は、許せません。絶対に」

 相手が権力を使うというのなら、私も手段を選ぶつもりはない。ルギウス様とシェリル、そしてこの国を守るために全力で戦ってみせる。

「……そんなところにも惚れているのだから、仕方ないな。カタリーナ、決してセリーナから離れるな」
「必ず、セリーナをお守りします」

 どうなることかと思ったけれど、レイビス様が許可してくれてよかった。

「シェリル、先に行って。私たちの馬車は、ここに置いて行きましょう。目立たないように行動するために、私たちの護衛は二人にします。残りはここで、待機してください」
「セリーナ、本当に変わったわね。テキパキ指示する姿が、とてもかっこいい」
「からかわないで! シェリル、気をつけてね」
「セリーナもカタリーナも、ついでにお兄様も気をつけて」
「俺は、ついでか!」

 シェリルは笑顔を見せてから、馬車に乗り込んで王宮へと向かっていった。

「カタリーナ、服を貸してくれない? この服では、目立ってしまうわ」
「わかった。馬車の中で着替えよう」

 カタリーナから借りた服に着替えて、髪も結ってもらい外に出る。

「セリーナ……その姿も、似合っていて綺麗だ」

 私の姿を見たレイビス様が、いつものように褒めてくれる。

「いつもいつも褒めてくださいますが、あまり言われると軽く感じてしまいます」

 少し頬を膨らませると、レイビス様は慌てる。

「心からそう思ったんだ! いつだって俺は、真剣だぞ!」

 本当は、わかっている。レイビス様が、本心から仰ってくださっていることを。少し、いじわるだったかもしれない。

「……ありがとうございます」

 お礼をいうと安心したのか、微笑んでくれた。

「クゥーン」

 足元で、抱っこを要求してくるクウ。抱き上げて、頭を撫でる。

「クウ、ごめんね。もうコートは必要ないから、クウを服の中に入れるスペースがないの」

 ガレスタ王国ではコートが必需品だったけれど、グルダはコートを着るほど寒くはない。クウにも、馬車で待っていてもらうしかない。

「セリーナ、これを」
「これ……」

 手渡されたのは、肩からかけるタイプのバッグだ。

「親方に、こっそり作ってもらっていたんだ。これで、クウを連れて歩ける」
「嬉しいです! ありがとうございます! クウ、ここで大人しくしていてね」
「クウ、セリーナを守るんだぞ」
「レイビス様、まだクウは小さいのですから、私が守ります」

 レイビス様と離れることに、不安がないと言えば嘘になる。

「レイビス様、お気をつけて」
「セリーナも、気をつけるんだぞ」

 私たちは、同時に出発した。
 慣れない乗馬は少し怖いけれど、そうも言ってはいられない。馬車で移動しては目立つ。私たちは目立たないように、迅速に行動しなければならない。
 まず最初に向かうのは、ホークス公爵家だ。ランドルク公爵家が三大貴族だった頃から、親しい付き合いをしていた。
 ランドルク公爵家が三大貴族からその名を消した今も、ホークス公爵はランドルク公爵に従っているようだ。
 義理堅いのか、弱みを握られているのか、まだ利用価値があると思っているのかはわからないけれど、必ず落としてみせる。

「ホークス公爵の屋敷が見えてきた」

 先頭を走っていたカタリーナが、馬をとめる。

「セリーナ、準備は?」
「できているわ」

 ホークス公爵邸へ。
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