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キリトの過去
しおりを挟む「これから結界を張ります。集中したいので、明日の昼までは話しかけないでください。」
食事を終えたセリシアは、二人にそう告げると、部屋に戻って行った。
キリトの事が少し気になるけど、結界を張るのは早い方がいい。
セリシアは集中して結界を張り始めた。
「明日の昼までとは……セリシア様は大丈夫かのう?」
今から明日の昼までは、半日以上あった。
「……セリシア様は、スベマナでずっとそんな生活をしていたんだよ。」
キリトが騎士をしていたのは、スベマナ王国だった。キリトは父親みたいになりたくて、スベマナ王国で兵として働いていた。
キリトの強さは敵を寄せ付けず、ある戦場で手柄を立てた事で、前国王に認められ騎士となった。
そして国王が変わり、王妃セリシアを迎えた。
キリトはセリシアを尊敬していた。誰からも感謝されることもなく、誰からも認められない王妃は、スベマナの為に結界を張り、守り続けていた。
ジオン国王はそんな王妃に目もくれず、毎日モニカを寝室に呼び続けていたのだ。
そんなセリシアを見続けて一年が過ぎた頃、キリトは我慢が出来なくなり、国王ジオンに意見した。
『陛下!王妃様を敬ってください!』
ジオン王が騎士の意見などに聞く耳を持つはずはなく……キリトは国を追放された。
そんな事があった事さえ、セリシアには知らされてなかった。
「セリシア様はそんな扱いを……。そんな事は一言も言わず、こうしてこの村を守ろうとしてくれてる。健気な子じゃのう。」
「俺はセリシア様を守ってさしあげる事ができなかった。だから今度こそ、守りたい!」
二人がそんな話をしているとは、夢にも思わないセリシアは結界を張ることに集中していた。
翌日の昼過ぎ、キリトはセリシアの部屋のドアを叩いた。
コンコン……
「セリシア様、お疲れでしょう……食事にしませんか?」
バンッ!!
ガンッ!!
勢いよくドアが開き……キリトの顔にぶつかった!
「あ……えっと……キリト、大丈夫ですか?」
キリトは顔を手でおさえながら、
「だひじょうふれす……(大丈夫です……)」
キリトが手を離すと、唇が真っ赤になっていた。
「ごめんなさい……キリト。」
「ぜんぜんへいひれす!それひょり、なにかはったのれすか?(全然平気です!それより、何かあったのですか?)」
「結界が……完成したんです!」
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