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第4章
なめてかかると痛い目を見るよ…ほんとごめん。
しおりを挟む大体話がまとまったところで報告の為とーさまと辺境伯様は転移で王都へ行くこととなった。
その間僕達はハデス家に滞在することになったのだけど、にぃ様が警備要員として残られたのでお話しできるなーっと思って鼻歌を歌ってしまうほどご機嫌になった僕ですが…
只今にぃ様をテトラ君に取られています。
僕がにぃ様にくっつく前にテトラ君がにぃ様に稽古をつけてくれと言って訓練場へと連れて行ってしまったのだ。
僕も慌てて後を追ったけれど、訓練場へ着いた時には既に稽古が始まっていた。
「…にぃ様容赦ない。」
「昔テトラ様を稽古と言ってぼこぼこにしていたしな。」
仕方なく見学していた僕は、にぃ様のあまりに容赦のない攻撃にちょっとテトラ君へ同情した。
しかしそこはテトラ君なので、寧ろ容赦のない攻撃を躱したり、受け止めれた時なんかはすごく嬉しそうで楽しそうにしている。
隣で呟かれたノヴァの言葉に学生の頃、直球すぎる物言いでちょっとやばめな質問を僕にしてきたテトラ君をしばいたにぃ様とヒュー様を思い出す。
身内贔屓の目で見ても、ちょっと大人げない。
だけど、それでお互い良しとしているのだから外野がやいのやいの言う必要はない。
しばらく見ていたのだけど段々僕もやりたくなってきた。
人が楽しそうにやってるのを見ると興味湧くよね。
それに僕意外と剣術とか戦闘訓練好き。
近くでテトラ君達の訓練を見ていた騎士に木刀の予備を貰い、未だ打ち合いをしているにぃ様達へ近づくと二人は直ぐに気が付いてくれて動きを止めた。
「ルナイス、危険だ。」
顔を顰めたテトラ君が邪魔をするなと言うように声をあげるが無視。
にぃ様はぽんっと僕の頭にぽんっと手を置いて「やるか?」と聞いてくれたので強く頷く。
「テトラ。今から私の代わりにルナイスが相手をする。」
にぃ様がテトラ君にそう言うとあからさまに嫌そうな顔をする。
というか「えー」っと声に出して不満を表している。
だけど、にぃ様が相手になるとお互い怪我をさせたくない気持ちが勝ってあまり良い打ち合いが出来ないのだ。
ここはテトラ君に相手をしてもらわねば。
そして僕より先ににぃ様に相手をさせた恨みも晴らさねば。
今度はにぃ様とノヴァ他騎士達が見守る中、僕とテトラ君の戦いが開始された。
テトラ君は僕が学園を卒業した後にも訓練を重ねていることは知らないし、学生の頃も魔法や魔術を使った戦闘をよくしていた僕なので剣術の方はあまりできないと思われているのだろう。
相手してやるかって感じの態度が気に食わない。
手始めにって感じで振り下ろされた木刀をスッと払い、木刀の持ち手の方でみぞおちに思いっきり打撃するとぐぅっと苦しそうな声をあげてテトラ君はすぐさま距離を取った。
だけどそこを追尾して更に今度は木刀を横に振るい脇腹を殴打する。
が、それは反応したテトラ君の木刀によって防がれてしまったので今度は僕がすぐに距離を取った。
「っ…ルナイス、お前」
「僕が剣術もそこそこ出来るって知らなかったでしょ。」
悔しそうに僕を睨みつけるテトラ君に笑いかけてやれば、テトラ君の瞳に一層力が宿る。
「どぅら!」
びゅんっと飛んできて間合いを瞬時に詰めたテトラ君の木刀の先が目前に迫るのを体を捻って寸前で避ける。
戦闘には力も必要だけど、体を柔らかく動かすことも大切。
猫みたいに体を捻ることができ且つ軽やかに動けると戦術の幅も広がる。
避けられるとは思っていなかったようで一瞬の隙ができたテトラ君目掛けて木刀を振り上げた。
「ぐふっ!」
「「「「「あ」」」」」
僕の振り上げた木刀は見事テトラ君の股間に的中し、一瞬白目を向いたテトラ君が地面に叩きつけられるのを慌てて頭をキャッチする。
意識はあるようだけど激痛のあまり内股になって声も出せず悶えているテトラ君に流石に申し訳なさすぎてどうにかしてやりたいと思ったが、今下手に動くと余計に打撃を与えてしまいそうでどうすることもできずオロオロするばかり。
見かねたノヴァが凄く嫌そうな顔でテトラ君の股間に手を翳し治療を施してくれてやっとテトラ君の体から力が抜けた。
額には汗が滲んでいて、痛みが取れた今は軽い放心状態。
「誰かテトラを自室に運んでやれ。」
流石に可哀想だと思ったのかにぃ様が近くにいた騎士達にそう声をかけると、テトラ君は2人の騎士によって屋敷内へと運ばれていった。
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