王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

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第5章

常時破壊魔法発動型

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どれくらいの時が経ったか正確な数字は分からないが、今城の窓から見える外には朝日が登り始めている。

宙に浮いている城に潜入するのは容易なことではないと分かるが、まだアーナンダ国の騎士達は来ないのだろうか…



そろそろ僕の体力も限界だ。





ぜぃ、はぁと息を乱す僕に対してダークエルフはふー、ふーっと息が荒いだけで僕程の疲労はないように見える。


重力魔法で動けないダークエルフの足元に何度も闇奈落魔法を展開するが、その度にカエルのように飛び回避される。

回避した先にもう1つ作っても体を猫のように捻り回避される。





ダークエルフの身体能力は予想以上のものだった。





1度、もう潰して殺してしまってもいいと言う気持ちで重力魔法をかけたが、ダークエルフは嘔吐しただけで黒い煙となり回避されてしまった。


しかもその黒い煙のまま僕の周りをウロウロしたり、僕を疲れさす為か場所を移動したりしてなかなか思うように仕留める事ができない。






ダークエルフを追いかけ、城を移動する途中で何体もの魔物が現れ僕の歩みを邪魔する。

いくら魔力量の多い僕でもこのままでは夕方くらいには魔力切れを起こす。








一番好ましいのはノヴァがこの場に現れることだが、それは難しいだろう。
この城に入り込む前のノヴァとのやり取りでは、孤児院の周りにはまだまだ子供等を狙う輩が沢山いると言っていた。

なんなら中々警備の緩まらない孤児院にイライラが募ったのか、うろつく者共が日に日に増えているとか。


そんな状況の孤児院からノヴァがこっちに来るのは無理だ。
僕が危険なだけで浮かんだ城はすぐにはアーナンダ国民の脅威にはならないだろう。

優先されるのは国。そして未来のある子供達。




応援が来るまでどうにか持ちこたえ、ダークエルフが他の者達に支持できない時間を作らなくてはいけない。







先に狐族を捉えられ、アーナンダ国へ送りつけられたのは良かった。

もしこの状況にあの狐族まで居たら、僕は今間違いなく彼女等に敗れ皮膚を切り裂かれいい様に体をいじくりまわされ、肉片か或いはキメラになっていたかもしれない。






これ以上は持たないと判断し、僕は逃げ回る黒い煙を追うのを止め足を止めた。


指に嵌めている魔力制御の指輪を外すと体に力がみなぎってきて、先ほどまで感じていた疲労感は何処かへと飛んで行った。
一気に体内から溢れてくる魔力に脳みそがぐわんぐわんと揺れて気持ち悪いが、僕はそのまま体の中に納まりきらない魔力を体外に衝撃波として放出する。





その魔力の衝撃波で近くの壁は全て壊れていき、近くをうろついていた魔物やキメラ達が吹っ飛んでいく。






衝撃波は広範囲に広がり、白の半分ほどは壊しただろう。


「ぐっ!!まさかまだこれほどの力を隠していたとは!」



少し離れた所からダークエルフの声が聞こえきて、ゆっくりと声のした方へと足を進めて行く。

全く抑制していないため、一歩踏み出す度に踏んだ地面がボロボロと崩れ壊れていく。



死ななかった魔物達はブルブルと震え、一匹も僕に近づいてくることはなく、むしろ一歩二歩と後退していく。







「なっ…貴様!常時破壊魔法発動型か!」


ダークエルフに近づく僕に気づいたダークエルフは僕が踏み出す度に壊れていく地面を見るとそう叫び睨みつけてくる。

常時破壊魔法発動型とはどういうことかは分からないが、今の僕のような状態のことを言うのだろうか?



こうして魔力を全く抑えていない状況になったのは本当に久しぶりのことで、今の僕の状態がどういったもので、正直僕も少しだけ驚いてはいる。
だが、それ以上に冷静な自分が居て、この状態が当然と思っていたりもするのだ。






「穢らわしい!!そのような力を只の人間如きが!!」


「黙れ」



ぎゃんぎゃんと吠えるダークエルフの声が耳障りで、足元に這いつくばっているダークエルフに静かにそう命令をするとダークエルフの口がぐっと閉じた。

しかしそれはダークエルフの意思ではないようで、ダークエルフが苦しそうにして喉を掻き毟っており、破れた皮膚からドロドロと血が流れだす。



徐々にダークエルフの顔は蒼白になっていき、唇の隙間からもドロドロと血が流れてきた。








このまま殺してしまおうと手を振り上げた時、ふっと一瞬我に返って手を下す。


そして慌てて制御の指輪を嵌めると僕の体から放出されていた真っ黒な魔力の陽炎が消えて、その場の生き物を全て圧死させてしまいそうな重苦しさも飛散した。




ダークエルフはがは!と息を吐き出し、まるで深海から必死に上がってきたようにパクパクと空気を必死に吸い込んでいる。
そんな彼女の口周りは真っ赤に染まっており、目は赤く充血していた。




ダークエルフの血も真っ赤なのだと、そんなことを思っている自分と先ほどまでの自分に戸惑う自分が同時に僕の中に存在していて、苦しそうに咳き込むダークエルフを僕はただじっと見ていた。








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