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第5章
帰還
しおりを挟むしばらくして息が整ってきたらしいダークエルフは地に這いつくばったままの姿で下から僕をきっと睨みつけた。
「そ…ぞの、ぢから…何故お前が……ぞれ…は…」
何かを必死に喋っていたダークエルフは最後まで言葉を紡ぐことなく白目を剥きバサリと地面に倒れた。
口からは血が混じりピンク色になった泡が零れ出ており、よくよく見ればダークエルフの体は所々陶器のようにひび割れており、そこからは不思議なことに一滴も血が出ている様子はない。
ダークエルフは僕のこの魔力の力について何か知っている様子だった。
指輪を嵌めていれば問題ないにしても…あのような力を持っているのならば、それについて少しでも知らなければ僕は大切な人をも傷つけてしまいかねない。
殺しては駄目だと判断した僕はダークエルフを影の中に沈めて急いでアーバスノイヤー家へと転移した。
ドサ
「っ!ルナイス!!」
久々に開放した力に僕の体も疲労困憊になっていて、上手く着陸することが出来ず、アーバスノイヤー家の門前に情けなく打ち付けられてしまった。
丁度騎士服を身に着け、帯剣したにぃ様が居たようですぐに僕に気が付き優しく抱き起してくれる。
「医者を連れてこい!すぐにだ!ヒュー!一時行動停止だ!」
「なん…ルナイス!!」
僕を支えて聞いたことがないくらいのでっかい声で叫ぶにぃ様の声によって来たヒュー様が体をだらんとさせた僕を見て慌てて近づいてくる。
「あっち!どうしたこの熱は!」
「詳細は後だ!すぐに医者に…父上たちにもこのことを知らせてくれ」
「あぁ!」
大丈夫だとそう伝えたいが、どうにも体に力が入らない。
体どころか口を動かす元気もないが…あのダークエルフだけはどうにか生かして捕らえておいてもらわなくては…
何とか指差して影の中から出てくる気を失ったダークエルフを捕らえてもらうようにぃ様にお願いするとすぐに僕の言いたいことを理解してくれたにぃ様は近くの騎士に命令して、ダークエルフに魔力封じの枷を付け、転移魔法で数名の騎士達と共にその場から消えた。
「話は後で聞こう…と言いたいところだが、あまりゆっくりもしていられない」
顔を顰めてそう言うにぃ様に分かっていると頷いて見せる。
僕の体に触れていたにぃ様はすぐに僕の中の魔力が安定していないことに気が付いたようで、先ほどから魔力を循環させ整えてくれているから、此処に無様な姿で転移してきた時よりは大分回復してきている。
あとは眠たくて落ちてきてしまいそうな瞼をどうにか閉じないように踏ん張ってさえいれば、どういう状況であるかくらいはきちんと報告できる…はず…
「ルナイス。今城が落ちたと報告が入った」
僕が何とか口を動かそうともごもごしていると1人の騎士がにぃ様に近づいてにぃ様に耳打ちした。
そしてその騎士が離れると、にぃ様が城が落ちたことを僕に教えてくれる。
城が落ちたという事は、やはり反乱の核に居たのはあのダークエルフで間違いなかったということだろう。
ダークエルフが気を失ってからしばらくたっての落城が気になるが…枷を嵌められてから城が落ちたのだとしたらこの時差も分かる。
つまり気を失ってもダークエルフの魔力は放出され続けていて、城を浮かせていたことになる。
あのダークエルフをすぐににぃ様に捕らえてもらったのは良い判断だったと思っていいだろうか…
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