王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

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第5章

待っていた護衛騎士

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「ダ…クエルフ…が、あの…しろ」


「あぁ。ダークエルフがあの城を浮かせていたんだな。あのダークエルフが反乱分子の親玉でいいか?」



「ん…たぶ、ん」



あー…しんどい

深い傷を負った訳でもないのに、どうしてこんなに体がしんどいの…



あの魔力を全開放した時のあの力と感覚はなんだろう。
あれのせいでこんなにしんどいのだとしたら、やはり指輪は今後も取らない方がいいし、1度きちんと調べてもらわないと…




確信を得られていない僕の返答に、にぃ様はすぐに部下に落ちた城を調べるように命令を下す。


「怪我は見受けられないか…呪いか?」


僕の異常に疲れ切っている様子に、にぃ様が呪いをかけられているのではと疑い出した。



「にぃ…ま…見せ、ます」


これ以上口頭で説明していては時間がかかる上に僕の気力も持たないと判断し、僕はそう告げるとにぃ様の額を人差し指をとんと弾いた。













にぃ様にしたのは僕の記憶を夢として見せる夢渡しの魔法。

今まで使う機会はなかったけれど、バグさんから習っておいて良かった。




しばらく目を瞑っていたにぃ様だけど、にぃ様は器用にも僕を支えたまま夢を見ている。

目が覚めてすぐに、にぃ様は僕に頷いてみせ

「おやすみ。ルナイス」

と瞼に唇を落としてくれた。




そのキスとにぃ様の優しい声にほっとして、僕は何とか持ち上げていた瞼を落とし意識を手放した。
















どれくらい眠っていたのか、意識が浮上し瞼を持ち上げた先に映ったのは真っ白で細かい装飾のある天井。

見覚えのない天井にぼーっとしていた意識がぱっと警戒モードに切り替わり、まず手や体が自由に動かせるかを確認。




体は問題なく動くことを確認できた後は、視線だけを動かして周りの状況を確認。

周りの壁や床も白く、そしてやはり細かな装飾が掘られていたりしていて見覚えのない場所であることを再確認した。




次に気配を探り部屋の中に僕以外の人がいないこと、そして部屋の扉の外に1人の人が立っている以外の人の気配がないことを把握したところで、僕はゆっくりと上半身を起こした。

僕が上半身を起こすと、すぐに部屋の扉か開いて、扉の前に立っていた護衛…ヨハネスが足早に近づいてきた。





「ルナイス様!」

近づいてきたヨハネスは僕の名を呼ぶと、僕が眠るベッドの傍に跪き僕の片手を取ると額を手の甲にぐっと押し付け、ふーっと深く息を吐き出した。



「今回…貴方をお護りする剣でありながら、貴方の剣となれず、申し訳ございません」


「僕が…1人でって」



ガスガスの声の僕にヨハネスは慌てて近くの机に置かれてあった水差しからグラスに水を注ぎ僕に渡した。

それを受け取ってゴクゴクと飲んで空いたグラスをまたヨハネスに突き出す。


空いたグラスにまた水を注いでもらって再び飲み干したところで僕はグラスをヨハネスがいる方とは逆にあるサイドテーブルの上に置き、改めてヨハネスに向き直る。






潜入をするにあたって、僕はヨハネスにウォード家の守護を命じ、同行を許さなかった。

それは1人の方が動きやすいことと、バレにくいことが理由で、決してヨハネスが弱いわけでも信用していない訳でもなかった。





ヨハネスは根っからの騎士だ。

潜入や人を欺くことに向いていないしなるべくそういう事はさせたくない。





今回、城が宙に浮いたことは想定外の出来事で、僕は本来情報収集を主としており戦闘はするつもりはなかった。

だから今回のような事になったのは考えの浅かった僕に原因があるのであって、ヨハネスが謝る必要は無いし、落ち込む必要もないことだ。

けれど、ヨハネスは主君である僕を今回傍で守ることが出来ず、帰ってきた主はぐったりとしていてなかなか目を覚まさないとなれば落ち込まずにいられない…という気持ちも理解できない訳では無い。





「もしも今度があったら…その時は傍に居て」

「御意。どんなに貴方が私を置いていこうとしても、もう二度とルナイス様の傍を離れはしません」



ヨハネスはそう言うと、改めて誓いを立てるように僕の手の甲に唇を落とした。

きちんと休みは取るようにだけ念押して僕からもヨハネスの頬をそっと撫でた。





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