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第91話『最後の瞬間』怖さ:☆☆☆☆☆
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古い一眼レフカメラを骨董市で見つけたとき、俺は迷わず買った。レンズにはかすかな曇りがあったが、重厚な金属の質感が気に入った。
最初に撮った写真は、近所の猫だった。現像してみると、猫が車に轢かれる瞬間が写っていた。まだ生きている猫の、恐怖に歪んだ表情が鮮明に写っている。
翌日、その猫は本当に車に轢かれて死んだ。
偶然だと思った。だが次に撮った花の写真には、その花が枯れ果てる最後の瞬間が写っていた。花びらが散り、茎が折れ、根が腐る、その一瞬を捉えている。
一週間後、その花は写真と全く同じ状態で枯れた。
俺は恐る恐る、友人の田中を撮影した。現像した写真には、田中が首を吊っている最後の瞬間が写っていた。苦悶の表情、伸びきった舌、宙に浮く足。
慌てて田中に連絡すると、彼は元気だった。写真の出来事は単なる未来予知で、阻止できるのかもしれない。
だが三日後、田中は本当に自殺した。写真と全く同じ場所で、同じ表情で。
俺はカメラを封印しようとした。しかし、現像していない最後のフィルムが一枚残っている。それは俺が撮った唯一の自撮り写真だった。
震える手で現像した写真には、俺の死ぬ瞬間が写っていた。だが、それは俺が知らない場所だった。見知らぬ部屋で、見知らぬ服を着て、見知らぬ方法で死んでいる。
写真の俺は、ナイフで胸を刺されて息絶える瞬間だった。だが俺は誰も恨んでいないし、刺されるような心当たりもない。
しかも、写真の俺は明らかに今より歳を取っていた。シワが増え、髪が白くなっている。少なくとも二十年は未来の俺だ。
つまり、俺はあと二十年は生きるということになる。写真が示す未来は絶対だから、それまでは何があっても死なない。
安心した俺は、無謀な行動を取り始めた。高いビルから飛び降りても、車に轢かれそうになっても、毒を飲んでも、なぜか必ず助かった。写真の未来を変えることはできないのだ。
だがある日、鏡を見て気づいた。俺の顔が、写真の中の死ぬ瞬間の顔に近づいている。まだ二十年経っていないのに、急激に老け込んでいる。
そして今日、ついに写真と同じ顔になった。同じシワ、同じ白髪、同じ疲れ切った表情。
玄関のチャイムが鳴る。扉を開けると、見知らぬ男が立っている。手にはナイフ。
「写真の通りですね」男は微笑んだ。「あなたが撮った瞬間から、この日は決まっていました」
俺は逃げようとしたが、足が動かない。写真の中の俺と同じポーズで立ち尽くしている。
ナイフが胸に刺さる瞬間、俺は理解した。カメラは未来を写すのではない。撮影した瞬間に、その未来を作り出すのだ。
俺は自分で自分の死を撮影し、その通りに死ぬ。
カメラを手に入れた瞬間から、この結末は決まっていた。
最初に撮った写真は、近所の猫だった。現像してみると、猫が車に轢かれる瞬間が写っていた。まだ生きている猫の、恐怖に歪んだ表情が鮮明に写っている。
翌日、その猫は本当に車に轢かれて死んだ。
偶然だと思った。だが次に撮った花の写真には、その花が枯れ果てる最後の瞬間が写っていた。花びらが散り、茎が折れ、根が腐る、その一瞬を捉えている。
一週間後、その花は写真と全く同じ状態で枯れた。
俺は恐る恐る、友人の田中を撮影した。現像した写真には、田中が首を吊っている最後の瞬間が写っていた。苦悶の表情、伸びきった舌、宙に浮く足。
慌てて田中に連絡すると、彼は元気だった。写真の出来事は単なる未来予知で、阻止できるのかもしれない。
だが三日後、田中は本当に自殺した。写真と全く同じ場所で、同じ表情で。
俺はカメラを封印しようとした。しかし、現像していない最後のフィルムが一枚残っている。それは俺が撮った唯一の自撮り写真だった。
震える手で現像した写真には、俺の死ぬ瞬間が写っていた。だが、それは俺が知らない場所だった。見知らぬ部屋で、見知らぬ服を着て、見知らぬ方法で死んでいる。
写真の俺は、ナイフで胸を刺されて息絶える瞬間だった。だが俺は誰も恨んでいないし、刺されるような心当たりもない。
しかも、写真の俺は明らかに今より歳を取っていた。シワが増え、髪が白くなっている。少なくとも二十年は未来の俺だ。
つまり、俺はあと二十年は生きるということになる。写真が示す未来は絶対だから、それまでは何があっても死なない。
安心した俺は、無謀な行動を取り始めた。高いビルから飛び降りても、車に轢かれそうになっても、毒を飲んでも、なぜか必ず助かった。写真の未来を変えることはできないのだ。
だがある日、鏡を見て気づいた。俺の顔が、写真の中の死ぬ瞬間の顔に近づいている。まだ二十年経っていないのに、急激に老け込んでいる。
そして今日、ついに写真と同じ顔になった。同じシワ、同じ白髪、同じ疲れ切った表情。
玄関のチャイムが鳴る。扉を開けると、見知らぬ男が立っている。手にはナイフ。
「写真の通りですね」男は微笑んだ。「あなたが撮った瞬間から、この日は決まっていました」
俺は逃げようとしたが、足が動かない。写真の中の俺と同じポーズで立ち尽くしている。
ナイフが胸に刺さる瞬間、俺は理解した。カメラは未来を写すのではない。撮影した瞬間に、その未来を作り出すのだ。
俺は自分で自分の死を撮影し、その通りに死ぬ。
カメラを手に入れた瞬間から、この結末は決まっていた。
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