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第90話『戻ってくる骨』怖さ:☆☆☆☆☆
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愛犬のポチが死んだとき、俺は裏山に小さな墓を作って埋葬した。十五年間一緒だった相棒への、せめてもの供養だった。
翌朝、玄関の前に小さな骨が一本置かれていた。白く漂白されたような、きれいな骨。ポチの足の骨だろうか。
また埋めに行った。今度はもっと深く、石も重ねて。
でも次の日も、また骨が戻ってきた。今度は二本。肋骨のような細い骨が、まるで俺の帰りを待っていたかのように玄関に並んでいる。
一週間が過ぎる頃には、毎朝違う骨が増えていた。背骨、頭蓋骨の一部、牙。ポチの全身が少しずつ帰ってきている。
だが、よく見ると骨の形が微妙に変わっていた。最初は確かに犬の骨だったのに、だんだん人間の骨に近づいている。
二週間目、ついに完全な人間の手の骨が置かれていた。五本の指が、まるで何かを掴もうとするように曲がっている。
俺は慌てて裏山の墓を掘り返した。そこには確かにポチの遺体があった。腐敗が進んでいるが、骨格は犬のままだ。
では、毎朝届く骨は何なのか。
その夜、玄関の音に気づいて外を覗くと、真っ暗な中に白い影が見えた。四つ足で歩いているが、骨だけの姿。ポチの骨格が組み上がって、カタカタと音を立てながら何かを運んでいる。
口にくわえているのは、人間の骨だった。
翌朝、新しい骨が追加されていた。今度は人間の足首の骨。そして小さなメモが添えられている。
『次はあなたの番です。少しずつ、お返しします』
字は震えていたが、確かに人間の文字だった。
その日から、俺の身体に異変が起き始めた。朝起きると、指の先が少し痺れている。夜になると、足首が妙に軽い感じがする。
鏡を見ると、皮膚の下で何かが動いているのが見える。骨が、少しずつ位置を変えている。
ポチは俺に骨を返しに来ているのではない。俺の骨を、少しずつ持って行っているのだ。愛犬の墓に一緒に入るために。
今朝、左手の小指が完全に動かなくなった。皮膚の下に、骨がない。
玄関には俺の小指の骨が、きれいに並べて置かれていた。
翌朝、玄関の前に小さな骨が一本置かれていた。白く漂白されたような、きれいな骨。ポチの足の骨だろうか。
また埋めに行った。今度はもっと深く、石も重ねて。
でも次の日も、また骨が戻ってきた。今度は二本。肋骨のような細い骨が、まるで俺の帰りを待っていたかのように玄関に並んでいる。
一週間が過ぎる頃には、毎朝違う骨が増えていた。背骨、頭蓋骨の一部、牙。ポチの全身が少しずつ帰ってきている。
だが、よく見ると骨の形が微妙に変わっていた。最初は確かに犬の骨だったのに、だんだん人間の骨に近づいている。
二週間目、ついに完全な人間の手の骨が置かれていた。五本の指が、まるで何かを掴もうとするように曲がっている。
俺は慌てて裏山の墓を掘り返した。そこには確かにポチの遺体があった。腐敗が進んでいるが、骨格は犬のままだ。
では、毎朝届く骨は何なのか。
その夜、玄関の音に気づいて外を覗くと、真っ暗な中に白い影が見えた。四つ足で歩いているが、骨だけの姿。ポチの骨格が組み上がって、カタカタと音を立てながら何かを運んでいる。
口にくわえているのは、人間の骨だった。
翌朝、新しい骨が追加されていた。今度は人間の足首の骨。そして小さなメモが添えられている。
『次はあなたの番です。少しずつ、お返しします』
字は震えていたが、確かに人間の文字だった。
その日から、俺の身体に異変が起き始めた。朝起きると、指の先が少し痺れている。夜になると、足首が妙に軽い感じがする。
鏡を見ると、皮膚の下で何かが動いているのが見える。骨が、少しずつ位置を変えている。
ポチは俺に骨を返しに来ているのではない。俺の骨を、少しずつ持って行っているのだ。愛犬の墓に一緒に入るために。
今朝、左手の小指が完全に動かなくなった。皮膚の下に、骨がない。
玄関には俺の小指の骨が、きれいに並べて置かれていた。
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