《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう

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一章 契約と回帰

十二話

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二十キロ走を終えて、校庭に薄い夕陽の色が差し始めたころ、ソラは汗で湿ったシャツを気持ち悪そうに引っ張りながら帰路についた。走り切った達成感はある。それでも胸の奥に重く残っているのは、ゴール地点で自分より先に走り終えていたカイトの背中だった。

 ――同じ一年目。それなのにあいつは一位で、オレは五位。

 もちろん、五位は悪くない。周囲の生徒から見れば充分に優秀な結果だ。
 だが、ソラが見ているのはほかの誰でもない。前の人生での因縁の相手――カイトだ。

 靴を脱ぐ音が家の玄関に軽く響く。扉を閉めて息を吐くと、肩に掛けていたバッグの中がもぞもぞと動いた。

「ふぅ……やっと家だ」

『……まったく、あの走りのあとによくそんなに落ち着いて帰れるな。わたしなら寝てしまうところだぞ』

「クロは走ってないだろ……」

 白い前足がバッグの口からぬっと出て、黒猫――クロがふわりと床に降り立つ。ソラはリビングの床に腰を下ろし、ようやく胸の内にあった質問を口にした。

「なぁクロ……オレとカイトって、どれくらい差あるんだ……? 今日の結果だけじゃなくてさ」

 クロはしばし目を細め、尻尾の先をゆらりと揺らした。言うべきことを選んでいるようにも見えた。

『まず、スキルを使わない状態の差は――正直、大したものではない。お前も見ただろう? カイトは走り終えたあと木陰で休んでいた。走り終えた直後は息も荒く、完全に余裕があるわけではなかった』

「まぁ、確かに……」

『対してソラ、お前は汗はかいていたが、脚の動きも安定していたし、息も整っていた。――これは、走り方そのものの差だ』

 クロの分析は淡々としていた。だが、その言葉はソラの胸に静かに染み込んでいく。

「……じゃあ、スキル込みだと?」

 問うと、黒い瞳が鋭く光った。

『スキルを入れるとなれば話は別だ。カイトは身体能力強化のスキルを持っている。双剣のスキルもあることを含めると、お前が雷魔法を使ったとしてもまともにぶつかれば勝つのは難しいだろう』

ソラは拳を握りしめた。
 わかっていた。結果だけを見れば、今日の時点で既に差がつき始めている。

 だけど――だからこそ、気になる。

「……でも、クロ。オレ、負けたくないんだ。前の人生で負けっぱなしで……それが悔しかったからやり直したのに、また同じ結果になるのは嫌だ」

『知っている。だから言うのだ』

 クロは一歩前へ出る。
 猫の体躯なのに、言葉には不思議な風格があった。

『――差を覆す裏技がある』

「! 裏技……?」

『ああ。ただの小手先ではない。お前が私と契約してからこそ教えられる、普通の人間には決してできない物だ。だから“裏技”と呼んでも差し支えないだろう』

 ソラは前のめりになる。

「どうやるんだよ、それ!」

『……家では教えん。外のほうが都合がいい。それに――』

クロは窓の外に視線を向ける。
 西日が残るギルドの方角。

『実際に見せたほうが早い。ギルドの訓練場へ行くぞ、ソラ』

「今から!? まだ疲れも……」

『疲れままでかまわん。この方法は身体的な疲労はあまりないからな』

 ソラはしばらく逡巡したが、結局立ち上がった。疲れていたはずなのに、胸がどこか熱くなる。

「わかった、行こう。どうせやるなら、今日のうちに知りたい」

『その意気だ。行くぞ』

 クロがソラの後を飄々と付いていく。
 家の玄関を出ると、夕空に残る橙色が、今日の努力と悔しさを照らしていた。

 ソラは拳を軽く握る。

(カイト……今日は負けた。でも、次は絶対――)

 その誓いを胸に、ソラはギルドへと足を向けた。

ギルドの訓練場に到着したソラは、息を整えながらクロへ問いかけた。

「で、今日は何をやるんだ?」

肩にかけたバッグの中から、クロがひょこっと顔を出す。
その金の瞳はどこか真剣味を帯びていた。

『まずは訓練場の端のほうへ行くぞ、ソラ。人の少ない場所だ』

言われるまま、ソラは訓練場の端に歩いて行く。
そこには少し盛り上がった土の段差があり、ちょうど腰掛けるのに良い高さだった。

ソラが腰を下ろすと、クロが言う。

『正面を見ろ。他のシーカー達が訓練しているだろう?
 あいつらをよく見ていろ』

「見る? 何を?」

『すぐにわかる。わたしがサポートしてやる』

そう言うと、クロはバッグから抜け出し、ソラの背後へ回った。
そして、そっとソラの背中に小さな前足を置く。

途端に――

視界が変わった。

「え……?」

訓練しているシーカーたちの腹部――丹田のあたり。
そこから、ふわりと白い湯気のような“何か”が立ちのぼっているのが見えた。

薄い霧のようでいて、それでいて確かに“流れ”を持っている。
炎ではなく、煙でもない。それは人の身体の奥から湧き上がるようにして現れていた。

「な、なにこれ……?」

『見えているな。あれが――“魔力”だ』

クロの声はどこか誇らしげだった。

『魔力は丹田に宿る。お前が今見えている白い霧のようなものは、
 その魔力が、身体の中を巡る“流れ”だ』

ソラは驚愕しながら、さらに目を凝らす。

剣を振りかぶるシーカーがいる。
その瞬間、白い霧が――丹田から腕に向かって、吸い寄せられるように集まっていった。

振り下ろしが終わると、霧はまた丹田のほうへ戻っていく。

「……本当に、流れてるんだ」

『本来、魔力の流れを見るのは不可能だ。
 だがわたしがお前の感覚を補助することで、こうして視える』

クロはそこでソラの背中から手を離した。

その瞬間から、白い霧は急速に、薄れ……そして完全に消えた。

「見えなくなった……」

『普通の状態では見えん。だが、意識を極限にまで集中すれば、
 先ほどと同じように“魔力”が見えるようになる』

ソラは無意識に息を呑む。

そんな芸当、自分にできるだろうか。

『やれ、ソラ。先ほど見えた魔力を思い出し、
 同じイメージを視界に重ねるんだ』

ソラは深呼吸し、目を閉じ、そしてゆっくりと開く。

……だが、何も見えない。

「……全然、見えない」

『集中がたりん』

「もう少しヒントは……」

『ない。集中あるのみだ』

クロはそう言って、ソラの頭を軽くたたく。

「い、痛っ。厳しいな……」
ソラは唇を噛み、もう一度前を見る。

魔力が……流れ?……白い霧?……丹田から腕へ……

目が乾いてきても、白いものは見えてこない。

少しでも気を抜けば、ただの訓練風景でしかない。

『もっと集中しろ。視ようとしろ』

クロの声が背中を押す。

だが――

どれほど意識を尖らせても、答えは返ってこなかった。

日が傾き、訓練場のざわめきが減っていく。

シーカー達が帰っていき、残ったのはソラとクロだけ。

ソラは最後まで魔力を見ることができなかった。

「……今日は、ダメみたいだ」

『ソラ、お前が魔力を見れるようになれるまでは授業以外でのトレーニングは禁止だ。』

クロの言葉にソラは驚き理由を聞いたがクロはまだ秘密だといい。モヤモヤしたままその日の夜を過ごした。
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