ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
88 / 1,124
旅立ち~オードゥス出立まで

10分程前

しおりを挟む
話は10分程前に遡る。


下層最深部に2人の冒険者が下りてきた。
2人は前日の朝から何も食べておらず、歩き通しの上に【隠密】の状態でひたすら隠れながら下層最深部を目指していた。


「バッツ、ここが最深部だぞ。」

「ああ、ここにいる奴らを街へ連れてきゃ、流石のクソガキでも止められまい。」

「不当な扱いを受けた街への仕返しを、中層のモンスターをわざわざ集めてけしかけたってのに…あのガキが止めやがって…」


2人が言う『不当な扱い』の一部を紹介する。


・ズタボロの状態で仕留めた獲物の買取り拒否
・他人の獲物の横取りに対しての警告
・宿泊施設、食堂等のツケ、滞納に対しての警告(約10万ガル)
・万引きに対しての罰金刑(未決着)
・ギルド内で暴れた事への罰金刑(未決着)


これに対して2人は『不当な扱い』と述べている。
寧ろこれだけやって捕らえられていないのが不思議な位だ。



「あのガキで止められるレベルだ、大した強さじゃなかったんだろう。
ギルドの説明だと下層のモンスターは強いらしいから少しは役立つだろうぜ。」 

2人は【隠密】状態のまま下層を進む。
運が良い事に2人が通る時には『猛毒大蛇』は『鬼苦万蜂』により肉団子にされ巣へと運ばれ、『暴走猪』と『ハルバードディア』の死骸を巡って他のモンスターが争い、2人は見向きもされていない。


これを2人は『気付かれていない』と勘違いしていた。


その考えは誤りである。
この階層に到着した時には既にモンスター達に気付かれているが2人を襲ってもモンスター達にとっては旨味が無いのである。

この階層にやって来る者は一定以上の『オーラ』若しくは『魔力』を有しており、モンスターにとっては脅威を感じる指標でもある。

肩に蝶が止まっていたとしても然したる脅威にはならないが、蜂がいたら危険とみなして払い除けるだろう。
【隠密】のごり押しで実戦経験もほぼ無い2人は然したる脅威とみなされず無視されていた。

例え襲ったとしても肉付きも悪く、食い出がない為何も食べ物が無かったら襲うか、程度の認識でしか無い。


2人は激しい戦闘音が響く開けた場所まで進む。
巻き込まれたくない2人は迂回して最奥付近まで進む。
この時も『一匹狼』と『バーサークベア』2頭には認識されていたが『羽虫』程度にしか思われていなかった。

「なぁ、あの熊なんか良いんじゃねぇか?狼圧倒してるし。」

「ああ、後はどうやって気を引くか…」

その時だった。


カサッ


2人は近くにモンスターが出た、と身構えたが視界の端に子熊を見付ける。
すると『バーサークベア』が動きを止めたので直ぐにあいつの子供だと勘付く。

2頭の戦いも終盤に差し掛かった様なので急いで子熊の方に向かう。
子熊は始めて見る人間に興味津々の様でバッツの足に纏わり付いてくる。

「うわーやっぱこれ位の大きさの動物は可愛いなぁ。」

「あぁ、純粋だから勝手に寄って来るし、力は弱いから仕返しされても大した事無いしな。」

「もしかしてガッツあれやるつもり?」

「あぁ、モンスター怒らすならこれが手っ取り早いしな。」

ガッツは【隠密】を【剣士】に変え徐に腰の剣を取り、子熊の顔を地面に押し付け、首に剣を突き立てる。


グシャッ!                 ドスッ「ギッ」


子熊に剣を突き立てたと同時に奥でも勝敗が着いた様だ。

「うはー、すげぇ揺れと音、あれなら街でも面白い事になりそうだな。」

今もガッツの手元では何とか逃げ出そうともがく子熊に対して柄に体重を乗せ、剣を更に押し込む。
少ししてピクリとも動かなくなり、ガッツが上体を上げるとこちらを見つめる『バーサークベア』の姿があった。

「やべっ、見られたぞ?」

「大丈夫だろ。後はいつも通り適正変えつつ街まで引っ張ろうぜ。」

「りょーかい。」

その発言の後2人は【隠密】になり樹上に上がり、枝伝いに下層5階の入口の方に向かう。


『バーサークベア』は目の前の光景が信じられないのかゆっくりと子熊に近付いて鼻を擦り付けたり、顔を押し付けたりしてみるが反応が一切返ってこない。


「あれ?逆効果だったんじゃね?」

「大丈夫大丈夫、少ししたら理解が追い付いてキレまくるハズだ。
最悪潰れたら別の奴引っ張って行こうぜ。」

「りょーかい。」

等と話していると


グゴォオオオオオオオオオオオアアアアッ!


「お、キレたキレた。」

「んじゃ、ちょいちょい姿見せて上ぎっ!


ゴシャアッ!ベキベキボキバキ!  ズズン!


我が子の死を理解した『バーサークベア』が隠れたつもりの2人に向かって大木をぶん投げた。
入口付近にいたバッツは巻き込まれなかったが木の裏に隠れていたガッツは諸に巻き込まれ、倒木に体が挟まれていた。

「な!?何で!?【隠密】で完璧に隠れられているハズ…」

自分の置かれた状況に頭が混乱したガッツだがそこに『バーサークベア』が近付く。

「ひ…!お、おい!バッツ助けろ!」

「む、無理だ!た、助けを呼んでくるよ!」

そう言い入口まで全力で駆け出すバッツ。

「ふざけんな!逃げんじゃねぇ!助けろっつってんだろ!?」

そんな2人の言い争いに構わず、ガッツの上に乗った倒木に徐々に体重を乗せていく。

「うぐごごがごが…」

全身の骨が砕ける音と体の中で何かが次々と破裂していく感覚を味わうガッツ。

ゴギボキぶぢっゴギばぢゅゴギぐぢゅメキ!

最後は口から中で潰れ、砕けた諸々を吐き出し死に至った。


「うわぁあああああ!ガッツ!?ガッツ!?」


ガッツの凄惨な死に様にバッツは咄嗟に【魔法使い】になり、高位魔法を発動する。


「そ、そせ、『蘇生』!『蘇生』!」


すると原形を留めていない元ガッツの体が光り出し、先程までのガッツの姿に戻る。

だがこの『蘇生』魔法、途轍もない程の魔力を消費する為、魔力が足りないと不完全な状態で復活してしまう。
それ以前にガッツは木の下敷きの状態で死んだ為、復活したとしても木の下敷きである事は変わらない。

片やバッツの方はというと『蘇生』を充分に発動出来る程の魔力量を元から有しておらず、即魔力が枯渇してしまい、体が動かせなくなる程消耗、その場に倒れ込んでしまった。


木の下敷きになっているガッツは絶望していた、一生分の痛みと苦しみ、辛さを味わって死んだ直後に、全く身動きが取れない状態で再び復活したのだ。


「ふざけんじゃねぇぞバッツ!?こんな状態で復活させやがってぇ!
ぃや!?ヤメロ!止めてくれ!や…ぐ、ぎ!ごごががごぶ…!」

再び木に体重を乗せ、押し潰しつつドスドスと背中に爪を突き刺し念入りに殺しに掛かる。


ガッツが死ぬまで恨み節を言われたバッツは一切身動きが出来ない状態で仰向けに倒れていると、ガッツを殺し終えた『バーサークベア』がバッツの元へやって来る。

「や…め…ぅが!…ごっ!がぁああああああ!」

バッツが懇願するも容赦なく爪で切り裂き、へし折り、潰し、引き千切る。
腕が飛び、足が飛び、中身が飛び最後に頭を潰され完全に仕留める。


2人を殺し終えた『バーサークベア』は一言も発さずふらふらと我が子の亡骸へ向かう。


我が子の元に辿り着いた『バーサークベア』は腰を落として亡骸を見つめ続けた。
しおりを挟む
感想 1,255

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...