ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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フリアダビア前哨基地編

急いで運び出せ

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「手の空いている者は全員参加し、教会内の卵を急いで運び出せ!
【神官】の到着を急がせろ!今夜中には防御結界の発動まで漕ぎ着けるぞ!」

「「「おぅ!」」」


エルグランドが周囲の者に発破を掛けた後、自らも地下墓地の中へと入っていった。

先にも言った様に、教会内部には夥しい量の卵が産み付けられていた。
教会の入口は瓦礫で塞がり、街の中に数ヶ所ある地下への入口か、南門の近くに掘った侵入路しか入る所は無い為、立地的には産卵に持って来いの場所であろう。

ノアが細心の注意を図りつつ教会内部へ入ると、床や壁、梁にまで産み付けられ黙視では正確な個数が分からない程だった。

真っ暗な教会内に夥しい量の卵、まるでお化け屋敷である。

余談ではあるが、バラスは教会内の様子を見て「フェイ○○ガー出そう」と言っていたが、何のこっちゃである。





「うへぇ~デカイし、ぐにぐに、ぶにょぶにょで気持ち悪い~…」

「な~に言うとんのじゃ娘っ子、モンスターの卵なぞ大体こんな物じゃろうて。」

「私の世界じゃ、ダチョウ園に行かない限り見ないわよこのサイズは。」

「だちょう?が何かは知らんが、このモンスターの卵はなかなか乙なもんじゃぞ?
茹でて食いよると白身と成長途中の雛「もつ煮終わりにその手の話はノーサンキューで!」


ミユキとドワーフはやいやい言いながらも両手に卵を抱えて搬出を続けている。

全員が3往復位した頃だろうか、【神官】が前哨基地に到着した。
真っ白な法衣を身に纏った白髪の男性が平身低頭にエルグランドの元へとやって来た。


「貴方が【神官】のキール殿だな?」

「は!遅れてしまい申し訳ありません。」

「いやこちらも突然の事で申し訳無い。
昨日で戦況が一気に変わった物でな。」

「街はモンスターが跋扈し、地下墓地は狭く戦いに不向き。
その状況でまさか教会が奪還出来るとは思ってもみませんでした。」

「積もる話もありますでしょうが、早速中へ…」

「そうでしたな。
後は礼拝堂にある結晶が無事であれば、直ぐにでも結界の発動は可能でしょう。」


エルグランドと【神官】の男性が共に地下墓地への侵入路へと進む。
【神官】の姿を見た兵士や他の冒険者達は、防御結界の発動が間近だと察し士気が上がる。


「モンスターの卵ですか…?」

「ええ、全数はまだ把握出来ていませんが少なくとも600はくだらないかと…」

「ろ!?…そんな数が産まれてたとしたら…」

「想像したくありませんね…」






「あ、エルグランドさん…と、そちらの方は【神官】ですか?」


エルグランドと【神官】の男性が教会内に入ると、ノア、バラス、アルキラーの3人が卵を回収してアイテムボックスへと仕舞っている所であった。


「ああ、そうだ。
この方がいれば防御結界発動まで後僅かだ。
教会内の被害状況はどうだい?」

「産卵場所となっていたからか、屋根の数ヶ所に穴がありますが、大した事は無いでしょう。」

「教会内の何処かに台座と、少し大きめの結晶は無いでしょうか?」


【神官】の男性が周囲を見渡しつつ皆へ問い掛ける。
未だ全ての卵は回収しきれていないのと、夜間と言う事もあり視界が悪いのだ。

するとバラスの間延びした声が響く。


「あら~、もしかして壇上の上にあるアレの事?」


バラスが指差す方を見ると壇上の隅に花瓶でも置く様な台座と、その下に赤ん坊位の大きさの結晶が転がっていた。

それを見た男性は小走りになってその場へと向かう。


「おお!それです。
完全に魔力が抜けきっていて、少し時間は掛かりますが防御結界発動には問題ありません。」

「そうですか!では直ぐにでも取り掛かって下さい。」


【神官】の男性は結晶に手を当て僅かに魔力を流すと、台座の上に乗せる様に結晶を持っていく。
すると、ふわりと結晶が浮かび上がり、ある一定の高さでピタリと止まった。


「後は『オルレジオサンクチュアリ』を発動出来るだけの魔力を流し続ければ良いので、30分程頂ければ完了です。」

「そうですか…
長かった、ここまで来るのにどれだけ掛かったか…」


エルグランドが安堵の声と共に項垂れる様にその場でドカリと座り込む。
その様子からこれまでの疲労が見て取れる。

突然胡座をかいて座り込んだエルグランドに対して、周りの兵士や冒険者は何も言う事は無く作業を続けていた。








異変を最初に感じたのは、防壁の上で妖精2人と共に警戒にあたっていたエルフのユグであった。


ズズッ…


「ん?何だ、今の音は…」

「音?聞こえた?クリストロ。」

「んーん。聞こえなかったよ。」


種族の特性上耳が良いユグは身構え、耳に意識を集中させ、音の出所を探る。


ズズッ…


「また聞こえた、距離は500メルって所か…」

「聞こえるか!」
「聞こえてたまるか!」

「すまないサンドラ、私が指差す方向に稲光を起こして貰って良いか?」


ユグの真剣な表情にサンドラは渋々と言った感じで指を向ける。


「ほいほい、『ピカッ』とね。」


シュパッ  シュパッ!


2回程明滅し、ユグが指差す方向が一瞬だけ明るくなる。


「嘘…」
「マズイわ…」

「サンドラ!皆が気付く様、街の中に1発デカイ雷落とせ!」

「了解!『バチン』とね!」









「おぅ、若ぇの。
安心して腰でも抜けたかのぅ?」

「ははは、そんな所です…」

「上手い事言ったら酒盛りじゃな!」

「爺ちゃん達酒飲みたいだけでしょ?」

「「「そうじゃ!悪いか?」」」


座り込むエルグランドの元へドワーフ達が集まり労いの言葉を掛ける。
ミユキは酒狙いのドワーフ達に呆れ顔をしている。

その一連の流れをノアとバラス、アルキラーの3人はやれやれと言った感じで見やる。


「防御結界ってそんな効果あるんですか?」

「うーん…よく聞くのは身体強化とか光属性が付与される~とか?」

「逆に魔素の様な闇属性に対しては抜群な効果を発揮するぞ。」

「へー、そうなん…」


ノアが言葉を区切り押し黙る。
バラス、アルキラーも同様に黙り、何やら周囲を睨め回す。


シュパッ シュパッ!


「んお?雷かのぅ。」

「え!?さっきまで晴れ『ズガァアンッ!』きゃあっ!」


教会の真横に雷が落ち、周囲にいた者全てが黙る。


「敵襲!敵襲だ!昨日とは比較にならない量のモンスターがやって来るぞ!!」


街の外、防壁の上にいるユグが大声を上げ敵襲を報せる。

咄嗟にノアは両手に阿羅亀噛を持ち、教会の屋根に開いた穴に向け、<渾身><投擲術>を発動して阿羅亀噛をぶん投げる。

地上50メル程まで突き進んだ所で手を握り込み阿羅亀噛の所まで転移、別の手に持っていた剣を再度防壁までぶん投げて転移し防壁の上に着地。

即座に<夜目>を発動して北側を確認。

生きた津波の様にモンスターの群れが旧フリアダビアに向け迫っていた。
更にその奥には巨大な影が複数見える。

確認が終わったノアは教会の屋根に向け、再び阿羅亀噛をぶん投げ転移。


ズザァッ!

「全員教会から退去して下さい!昨日とは規模が違う!
戦える者は直ぐに準備を!
戦えない者は自身で出来る最大限の努力を!
巨大な影も複数見えます!
前哨基地全ての設備を特化運用して事態の対処をお願いします!」


これを聞いた兵士や冒険者は地下墓地、屋根の穴から次々飛び出し、各々配置に付く。


「篝火を赤々と焚け!少しでも街の中を明るく照らすんだ!
ドワーフ達が直してくれた大砲、バリスタ全てを使い、事にあたれ!」


既に切り替えが完了したエルグランドが周囲に指示を飛ばす。


「おぅ!兵士共!着いて来い!アレの使い方教えちゃるわ!
バド、ルド、そっちは任したぞぉ!」

「「あいよ!」」


ドワーフのロイは兵士を引き連れ地下墓地を出て行く。


「さ!キール殿も急いで退去を!」

「私は…ギリギリまでここに残り、防御結界の発動まで粘ってみます。」

「しかし…」

「それじゃ~私達がここに残ってこの人の護衛するよ~」

「数にもよるが、30分程なら引き受けよう。
エルグランド殿は前哨基地に戻り指揮にあたってくれ。」

「…分かった、任せたぞ。」


教会内にキール、バラス、アルキラーを残し、急いで前哨基地へと走り出すエルグランドであった。
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