ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
199 / 1,117
フリアダビア前哨基地編

いるなぁ…

しおりを挟む
「いるなぁ…」

「いるねぇ~」

「20体位いるな。
まぁ蜥蜴とか蛇は暗がりを好む物だしな。」


ノア、バラス、アルキラーの3人は地下墓地へと潜ると通路を石壁で塞いだ地点まで来ていた。

全員<気配感知>持ちの様で、既にモンスターの反応を感知している様だ。


「正面に6、右に3、左に4か…正面は自分が行きますが他は…」

「問題無い。」

「まっかせなさ~い。」

「では、石壁を開けたら速攻で向かいますね、ヴァンディットさん起きてますか?」

「はい、気分爽快です。」

「ははは、了解。それでは行きますよ…」


左手を石壁に這わせたノアは右手に抜剣した阿羅亀噛を持つ。
石壁に魔力を流し、石壁が崩れ去った瞬間に<渾身><集中><投擲術>を発動、真正面に向けて全力で投擲。

ヒュボッ!ドガッ!グギョアッ!?

阿羅亀噛は蜥蜴モンスターの首元に命中し、深々と突き刺さる。


「おお。」

「お~お見事。」


ノアはアルキラーとバラスの関心した声を気にする事無く次の手に出る。

投擲した際のポーズのまま右手をギュッと握り込む。

バシュッ!

「「おおっ?」」


首元に突き刺した蜥蜴の元へ転移したノアは、即座に阿羅亀噛を引っこ抜き、抜きしなに<渾身>を発動し、近くにいた蜥蜴、蛇モンスターの首を撥ね飛ばす。

ゾッ!ゾリッ!

一瞬の内に3体のモンスターが殺られた事で残りの3体が地下墓地の奥に逃げ出した。


「あ、くそっ!」


直ぐに追おうとしたが、後方にいる2人が全く動く気配が無く、2人目掛けて左右の蜥蜴型モンスターが攻撃を仕掛けようとしていた。

ノアは咄嗟に2人の方に向くが、バラスは手を後後ろ手に組み、アルキラーはコートに手を突っ込んだままじっとしていた。


「2人共!来てますよっ!」


と、ノアが叫ぶ頃には2人の側面にモンスターが迫っていた。


「47、48。」

「に~。」


2人がそれぞれ数字を口にした瞬間、アルキラーは両手に鎌の様な物を持ち、バラスは右手にカランビットナイフを持っていた。

アルキラーは最小限の動きで右手に持つ鎌の様な得物の先端を左側からやってきたモンスターの喉元へと突き刺す。
更に、素早くモンスターの背後に回りつつ左手に持っていた鎌の先端をモンスターの眼に突き刺した。
そのまま物凄い力で両側に腕を引くと、鈍い音を立てながらモンスターの首をへし折った。


その間のバラスはと言うと、右手に持ったカランビットナイフをモンスターの喉元へと突き刺すと、軽々とモンスターの体を持ち上げ地面に叩き付ける。

更にモンスターの顎に指を引っ掛け、喉元のカランビットナイフを引き、喉を掻っ捌いたかと思うと、出来た傷口に手を突っ込みモンスターの頚椎を掴む。

『グジャッ』

モンスターの体内から、鈍い破砕音が聞こえたかと思うとモンスターはぐったりして動かなくなった。

ズヂュッ!

モンスターの喉元から手を引き抜いたバラスが、真っ赤に染まった右手をノアの方に向けてヒラヒラと振る。


「こっちは2人でもだーいじょーぶ。
君は奥に行ったモンスターを倒してくると良いよ~。」

「ははは…凄いなありゃ…
分かりました!御言葉に甘えて行ってきます。」


そう言い残してノアは奥へと駆けて行った。







「15、3、82。」ドスッ!ザシュッ!ズバッ!

「よ~ん、あ、アル君、8貸して?」

「アル君言うな、はい、8。」

「良いじゃな~い、今は2人だけなんだ~、し!」ゴッ!ガッ!ゴチャッ!

「ま、それもそうか。16。」ブチブチッ!

「は~い、こっちはお~わり。アル君は?」

「こっちも終わったよ。
相変わらず君の戦い方は見てて惚れ惚れするよ。」

「な~に言ってるの、私の戦い方は只の力任せよ?
アル君みたいに手を変え品を変えって戦い方が苦手ってだけよ。」

「はは、御謙遜を。
しっかし、冒険者ってのも良いものだ。
どうだい?下の者が育ってきたら解体師兼暗殺稼業は辞めて、冒険者に復帰するのは?」

「良いわね~あっちでもこっちでも解体師兼暗殺稼業だったんだもの。
こっちに来た時に身分証代わりに冒険者カード作ったっきりだったから、第3の人生は冒険者やってみるのも良いかもね~。」

「今の所暗殺依頼は、あの取り巻き2人の殺害依頼だけだったから取り敢えずもう締め切ってしまおう。」

「あら~アル君結局依頼受けてたんだ~。」

「ああ、ヒュマノ聖王国の国王直々の依頼だ、無下には出来ないだろ?」

「それもそうね~。
でもどうやって処理したの?あの2人。」

「簡単だ、敢えて国王からミユキに取り巻き2人を殺害する様に指示を出す。
私達同様異世界の、特に日本の普通の少女だ、人殺し何て容易には出来ない。
あの取り巻き2人は何処へ行っても問題ばかり起こすから、勾留されてミユキとは引き離され、何かしら事情を聞かれるのは明白だ。
そしてそこで『国王直々の殺害指示』をその場にいる多数の者に周知させる。
そうすれば後は自然とそう言った状況が作られていく。
私がやったのは、牢の鍵を開けてモンスターがいる方向に誘導しただけだ。」

「じゃあアル君の計画通りだったって事?」

「成功するかは五分五分だったけどね。
まぁ最悪、期を見計らって私が処理するつもりだったよ。
彼女は仮にも【勇者】だ、暗殺の事は【暗殺】に任せれば良い。」

「ふふ~ん優しいのね~アル君。」

「何言ってんだ、私は元々優しいだろ?
ほら、ノア君の方も戦闘終わった様だ、死体を回収したらノア君の元へ行こう。」

「あいあいさ~。」







ザシュッ!


「…よし、と…これで全部かな…」

(『その転移の腕輪…なかなか便利だな。』)

(そだね、ヴァンディットの影と併用すれば戦術が広がりそうだよ。)

(『後は自身の魔力量をどう上げるか、だな。
今の状態だと転移20回程で魔力が枯渇するだろう?』)

(そ。
魔力量の上げ方は両親からも教わって無かったから、バラガスさんに指輪や装飾品を作って貰おうとしてるのさ。)

(『ま、『俺』も自己強化なら教えられるが、魔力量の上げ方は専門外だ。
【魔法使い】にでも教えて貰うんだな。』)

(取り敢えずそれ位しか無い、か。
それまではヴァンディットさんにマナポーション増産して貰お。)


「お~い、ノアく~ん。こっちは終わったよ~。」

「お疲れ様です。こっちも今終わった所です。」


ノアがいる場所は旧フリアダビア中央にある教会の真下。
地上に向かう礼拝堂への階段に立っていた。


「あれ~?てっきり地下墓地の奥の方まで逃げていったかと思ったけど…」

「ええ…急にこの階段の下でピタッと止まったかと思うと、階段を昇ろうとしてまごついていたので仕留めました。
上に昇ろうとしていた理由は<気配感知>でよ~く探ってみれば分かります。」


ノアに促されて上階の気配を探る両名。


「「あー、なる程。」」

「ね。」
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...