ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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フリアダビア前哨基地編

旧フリアダビアまで300メル

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モンスターの群れが旧フリアダビアまで300メルにまで迫った頃、ドワーフのロイは準備を進める兵士達と共にいた。

ユグとノアの証言から、今回のモンスターの侵攻は過去最大かと思われる。
皆一様に言葉を発さず、沈痛な面持ちで装備を身に付けていた。


「なぁんが、お前ら、戦う前から死んだ様な顔するで無いわ!
お前ら死にに行く訳じゃ無かろう?
生き残る為に戦いに行くんじゃなかか!
気持ちは分かるが、こない時程笑うか叫ぶかして少しでもアゲとけ!
いざって時に動けんぞ、わしなぞこんな時でも酒飲んでアゲちょるんじゃ!
ほれ、一口で良い皆飲め!」


無理矢理酒の入った入れ物を兵士に押し付け、皆回し飲みしていく。


「今飲んだ酒の味を覚えておけよ?
これは皆それぞれへ向けた献杯じゃ無かぞ!
この苦難を乗り切った先にある祝杯の味じゃ!
皆で共に大酒飲んで讃え合おうぞ!」

「はは、結局最後は酒ですか。」


兵士の中で一番若い者が声を上げる。
良い感じに酒が入ったからか目付きが平時のそれに戻った様だ。


「今のお前らに必要なんは"余裕"じゃ。
お前らの体つきを見た限り平時はしかりと戦える兵と見受ける。
先程の強張った状態のままじゃ、モンスター所か犬にすら勝てんど。
酒は余計な力ば抜くでの、それでお前らに振る舞った。
酒はわしにとっちゃ金塊よりも価値がある、お前らには金塊の価値以上の働きば期待しとるぞ!」

「「「「おぅ!」」」」

「ガハハ!良い顔付きになったのぅ!
美味い祝杯飲む為、この死地ば乗り切ろうぞ!」


火の点いた目をした兵士を連れ、ドワーフのロイは南門から街の中へと入って行った。







ズズズッ…


「地鳴りか…真っ直ぐこちらに来てますね。」

「ああ、そうだな。サンドラ、クリストロ、準備は良いな?」

「おー!」
「やったるぞー!」


前哨基地とは反対にある北門の防壁の上には弓持ちのノアとユグのパーティが待機していた。
前線にいるのはどうやら比較的足が早い蜥蜴が殆どの為、壁を登ってくる事を考えての布陣である。


「奥にいるのは…ワニ…ですかね。」

「…その様だ。が、あの大きさは初めてだ。
奴らもアイアン系であれば骨が折れるぞ…」


迫り来る蜥蜴もそうだが、奥にいる巨大な影は形状的に見てワニであると思われる。

通常のワニですら硬い表皮に覆われているので、巨大になったとしたらどうなるか、想像するだけで気持ちが滅入ってくる様である。


「グリード、出て来てくれ。」

グルルォッ!


防壁の上に魔法陣が展開されニュルリと顔を出す。


「良いか、小型のモンスターが大挙して押し寄せて来るが後続に続く巨大なワニをお願いしたい。頼めるか?」

グルォッ!


グリードからの了承も得た所でモンスターとの距離が100メル、巨大ワニまで300メルまで近付いて来た時だった。

バギンッ!ガゴッ!

何かが割れる様な音がしたので音の出所を見てみると、グリードが口を開いた状態から下顎が左右に割れ、胴体の龍鱗で出来た甲殻に亀裂が走り、下から光の筋が現れる。

ヴォン!ヴォン!ヴォン!

「ねぇーぼっち君…この子何してるの…?」

「まさか…アレ撃つつもりか?
ワニまでまだ大分距離あるけど…」


アレというのは以前ヒュドラ戦でも使用した『プラズマレーザー』の事である。
ノアからの指摘を受けつつもその間もグリードの口や龍鱗に紫電が走り、体表に光を帯び始める発射体勢に入っている。
ヴォンという音も大きさを増し、いつ発射されても可笑しくない状態であった。

何となくグリードから"今"と言う意志が伝わって来た為、手を振り下ろして発射の意志を伝える。

ジュバァアアアアアッ!!

発射された『プラズマレーザー』は   ヒュドラ戦の時よりも数倍太く、強烈な光を発し、速度が衰えぬまま巨大なワニの頭へと着弾。

高厚の鱗を何事も無く削り飛ばして行く。
削り飛ばされた鱗は赤熱しており、『プラズマレーザー』の威力を物語っている。

グロロロロロァッ!

巨大ワニが悲鳴の様な咆哮を上げ、身を捩らせてグリードのプラズマレーザーから何とか逃れようとする。

が。

バシュウッ!ゴッ!? ドガアッ!


巨大ワニの頭部を貫通したプラズマレーザーは下腹部を突破して地面に到達。
大きく大地を捲り上げで大爆発を発生させた。

グォオオオオオオオオオアアアアアアアッ!

耳を鼓膜を破る様な声量で咆哮を上げたグリードは、魔法陣から全身を現し、防壁の上でとぐろを巻き、体のバネを利用して大きく跳躍。

目前に迫るモンスターの群れ目掛けプラズマレーザーを薙ぎ払う様に発射、大爆発を発生させた。

グリードはそのまま重力に導かれる様にモンスターの群れへと落下して行った。


「おーい、街にはプラズマレーザー撃たないでくれよー。」

グルルォァッ。

「よし!」

「よし!じゃないわよ!ぼっち君本当にアレは何なのよ!」


妖精のクリストロがノアの頬をぐにぐに押しながら詰め寄って来た。
押された頬はひんやりしてなかなか気持ちが良い。


「何なのって僕の契約獣ですよ。それ以上の事を聞きたいのなら本人に直接聞いてみて下さい。
それよりも、防壁に先頭集団が到達したみたいですよ。」


グリードが防壁の前で暴れまわっている様だが数が数だけに、溢れた蜥蜴共が防壁を登り始めた。

バシュッ!バシュッ!
シュパパパパッ!
『ズドーン!』
『アイシクルレイン!』


ノア、ユグが弓で這い登って来る蜥蜴を落とし、グリードがそれを食い殺していく。

サンドラは雷を蜥蜴に落とすと、近くにいる他の蜥蜴にも伝播していき、次々と壁から剥がしていく。

クリストロはアイシクルレインを放ち、蜥蜴共の動きを阻害、若しくは相手を凍らせ同様に壁から剥がす。


「くそっ!矢が足りん…」

「射ち切ったら皆街まで降りてそこで迎え撃って下さい!」

「君は?」

「殺れるだけ殺ってみますよ。
そういえば皆さん何か練習してたと聞きましたが?」

「ああ、広域殲滅魔法を編み出したが、ここでは巻き添えを食って自滅するだけだ。
今はまだ使い時では無いだろう。」

「それではモンスターがここまで来て離脱する際に発動させて下さい。
敵の目を全て僕に向けさせますので。」


ノアに何か策があるのだろうと思い、即座に了承したユグはサンドラ、クリストロにもその旨を伝える。

そうこうしている間に先頭の蜥蜴との距離が10メルまで近付いた所で周囲に転移の魔法時が次々と展開。

ジャァアアッ!
ジシャァアッ!
グルアッ!
ギュォオオオッ!

ノアは弓を背中に仕舞い、カランビットナイフを抜く。
サンドラ雷、クリストロは氷で作られた球状の結界を張りユグと共に上空へと上がる。


「ではノア君やるぞ!」

「了解!」


合図と共にノアは<殺気放出>を発動。
周囲にいた蜥蜴モンスター約150体全てがノアへと向かう。

ユグは弓を構えるが、手には矢はない。
するとサンドラとクリストロが手を翳すと雷と氷の混合矢が形成される。


「「ユグ!発射完了!やっちゃえ!」」

「ノア君!放つぞ!」


バシュッ!

放たれた混合矢はノアの足元に突き立つ。

即座にノアは【鬼鎧殻】を発動、周囲の蜥蜴がノアの頭や手足至る所に噛み付くも、混合矢から半径100メル程もある球体状の風の障壁が発生。

それと同時に細かな氷の粒子が舞ったかと思うと、風の障壁で遮られた半径100メル内全ての範囲に強烈な雷が炸裂。
瞬間的に周囲が昼間の様に明るくなる。

バヂィッ!

風の障壁が解除されると、【鬼鎧殻】に守られたノアは無事だが、それ以外のモンスターは全て真っ黒に炭化していた。


「どーだ!ボク、サンドラ考案、ユグダメ出し、クリストロが無理矢理まとめた超必殺技『バッバッシュバッ!』の威力は!」

「サンドラ…相変わらず名付けが酷い…」

「本人は気に入ってるんだ。好きに呼ばせよう。」


ユグはやれやれと言った面持ちで街の中へと降りていった。
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