ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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再びアルバラスト編

許してくれ!

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「ゆ、許してくれ!」


ノアが防壁近くまであと50メルと言う所でカルルがノアの元に駆け込んできて開口一番に発した言葉がこれである。

が、その直ぐ後ろに続く者がカルルの発言に割って入ってきた。


「往生際が悪いぞカルル。
自身の手を汚さずに討伐依頼と言う形で制裁を加えようとした挙げ句、悉く撃破され、自身に矛先が向くと分かるや否や許しを請うとは何たる事だ!
最後は貴族らしく正々堂々と戦え!」


カルルの後ろからやって来たのは父親のルルイエと妹のミミカであった。


「ノア様、一昨日の無礼と今回の件誠に申し訳御座いません。」スッ…


妹のミミカは一昨日とは違い、真剣な表情でノアを見やった後頭を下げた。


「今回の馬鹿げた事柄の一端は私にも十分責任があります。
ノア様からの如何様な申し出にも応えさせて頂く所存に御座います。」

「…いや、貴女の様な貴族の方からそう言った声が掛かるぞ、と言った指摘は知り合いの方に前々から言われてましたので、その一部であると捉えていますのであまりお気になさらず。
兵の方を差し向けたのは少しやり過ぎかなとも思いましたが、体裁とか僕のよく分からない事情や、僕が矜持を傷付けた事があっての事だろうと勝手に解釈した上で受けたので、コレも気に為さらないで下さい。」

「そ、そう…ですか…」

「それに、僕はまだ冒険者1ヶ月目の身ですので、身の回りの事で精一杯。
結婚云々を考えるのはまだまだ先の事と思っております。
貴女の様な女性から求婚を受けるのは嬉しい事ですが、今回のお話は正式にお断りします。」

「ふふ、律儀ですのね。
こうして面と向かってお断りして貰う事はあまり無いので何だか新鮮ですわ。」


ミミカは前回と違い、感情に任せて激昂するでも暴言を吐くでも無く、柔和に笑顔を返してきた。


「…それで、ルルイエさん。
カルルさんに"最後は"と仰ってましたが、どう言う事ですか?」

「そのままの意味だ。
カルルは我領に帰り次第、爵位の取り消し、私財等を全て没収し今回のふざけた催し物で発生した損害の賠償に充てる。
その後、カルルは一般兵と同様に厳しい訓練に身を置いて貰う。」

「…っ、…。」


改めて自身の父親から今後の処遇を聞いたカルルは言葉を失い項垂れる。


「ふーん…まぁその辺りの方針はそちらの方にお任せします。
厳しい訓練に身を置いて改心する事を願ってますよ。」

「な!…んだと…っ!」


ノアが興味無さげに、だが励ましの様な言葉を掛けた所、カルルが苛立ちを込めて言い放つ。


「貴様には分からんだろう!
爵位を失い、平民同様の暮らしに身を置く私の気持ちが!
これから私は地面を這いつくばり、泥水を啜って訓練に費やす日々の始まりだ!」

「自分の身から出た錆びなので猛省して下さい。
それよりも言いたい事はそれだけですか?
他に無いならさっさと用事を済ませたいのですが良いですか?」

「よ、用事だと…?」

「このふざけた依頼の主であるあなたに仕返しに来たんですよ。
始めに言ってきたな、"許してくれ"って。
ここまで大事にしといて許すと思いますか?」


青筋を立てたノアがカルルに睨み付ける。
勿論の事だが、ノアは今回の件は頭に来ているのだ。

但し、輩共や他の冒険者パーティ相手に暴れたお陰で当初程の鬱憤は溜まっていない。

寧ろ現在のノアは、さっさと用事を済ませて休みたい気持ちで一杯である。


「ルルイエさん、良いんですよね?仕返ししても。」ブォンッ!


徐に右腕を振り上げて構えたノアがルルイエに確認を取る。


「ああ構わん。
蘇生薬が3本あるからなんなら殺して貰っても良い。」

「ち、父上、何を…」

「お兄様、覚悟を決めて歯を食い縛りましょう。」

「ミ、ミミカまで…
ま、待て貴様、貴族に手を出してどうなるか分かってるのか!?」


カルルは往生際が悪く、悪足掻きなのかノアに説得を試みてきた。



「ここ最近貴族を2人ぶん殴りましたけど特段問題は無いですよ。
それよりもご安心を、<峰打ち>を使いますので死ぬ事はありません。」



<峰打ち>…死亡クラスのダメージを受けても対象はギリギリ生き残る。通常はモンスターを捕獲する際等に使用。



「ま、激痛が続くので死ぬよりもキツいですけど、ねっ! 』

ズムンッ!「ウゲェァアッ!?」


<渾身><剛腕><峰打ち>を発動させた上に、瞬間的に赤黒いオーラを体から噴き出したノアがカルルの腹部に強烈な一撃を叩き込む。

カルルの口からは人間の物とは思えない悲鳴が上がった後、姿が霞む程の速度で後方の防壁に衝突し、めり込んだ。

ボゴァッ!メキメキメキ…

「うぶぇ…『ゴボッ』ビタタタタ…


カルルは防壁にめり込んだまま、口から纏まった量の血反吐を吐く。
血の色からして内臓も数ヵ所ヤっている事だろう。

めり込んだ手足は各々変な方向に曲がり、文字で言ったら『よ』の形になっている。


<<<<うわぁ…>>>>


ノアの後方に居る『エレメンタル・フェアリーズ』の面々から小さく悲鳴が上がっているのが聞こえるが無視だ、無視。




「が、かふっ…かふっ…
…あぇ、な…へ?…ぅがががががががががががが…が…がが…、…っ…」ガクッ


防壁にめり込んだカルルは、咳き込みながらも自身の状態を確認した所で一気に痛みがやって来た様で、全身を小刻みに痙攣させた後失神した。


「…ふーっ…」ジャリ…


仕返しし終えたノアが息を吐いて気を落ち着けた後にその場を離れようとすると、ルルイエから声が掛かる。


「もう仕返しは良いのか?」

「ええ。
八つ当たりはもう他の冒険者相手に行いましたし、これ以上はただの弱い者いじめになります。
それに、これからあなたの方で厳しく育てる予定なのでしょう?」

「無論だ。
厳しく育て、改心する様なら爵位を戻すし、しないならそれまでよ。」

「それなら先程言った通りです。
その辺りの方針はそちらの方にお任せします。
兎にも角にも僕は早く休みたいですよ…」

「今回は息子の起こした面倒事に付き合って貰って申し訳なかった。
もし力になれる様な事があれば協力しよう。」

「こちらこそ色々と便宜を図って貰ったので助かりました。
そちらでも例の件で困った場合、協力致しましょう。」


その後2、3言葉を交わした後ノアは北門の方へと向かう。


ズルリ…

「やぁノア君。」

「アルバさん…会うのは王都以来ですね…」


北門近くまで行くと、篝火で出来た影の中から領主のアルバが姿を現す。 


「今日は大変な1日だったな。
今北門から入ると大変な事になるから、影で移動して中に入ろう。」 

「あー、それでしたら寄って欲しい所があるんですけど良いですか?」

「ああ、構わないよ。
おーい、『エレメンタル・フェアリーズ』の皆さん、君達も一緒に行くかい?」


アルバが後方を確認し、『エレメンタル・フェアリーズ』の面々に声を掛ける。


「いえ、魔力も回復しましたし、私達は北門から入ります。
役目もありますしね。」

「そうか、分かった。
兵には話を通してあるから防壁から入っても大丈夫だ。」

「「「「ありがとうございます。」」」」

「それではな。」
 
ズルンッ…

4人に短く挨拶をしたアルバは、ノアと共に影の中に入っていった。
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