ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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再びアルバラスト編

依頼の取り下げ

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『『『『…えー、という訳でご来場の皆様にお伝えします。
今回の大規模討伐依頼は、依頼主への鉄拳制裁と関係者の方からの依頼取り下げの要請が御座いましたので終了となりました。
尚、今回の件につきましては討伐対象者の事を考慮しまして街以外では他言無用に願いまーす。』』』』

「「「「「「「「はーい。」」」」」」」」

「ねービリビリの妖精さーん、何で1人だけビチョビ『はーい、その件についても他言無用でお願いしまーす。』


北門の防壁上では『エレメンタル・フェアリーズ』の面々が討伐依頼の終結宣言を行っていた。

観客や参加した冒険者、商人などはノアの気持ちを汲んでか『エレメンタル・フェアリーズ』からのお願いに同意してくれた。

まぁ一応アルバの方でも対処法は考えているのでその辺りの心配は無いだろう。



『『『『尚、討伐対象であった【鬼神】は所用があるとの事で既に街の中に入っておりますが、例え姿を見かけましても騒ぎ立てない様にお願いしまーす。』』』』

おおぉ…


『エレメンタル・フェアリーズ』の呼び掛けに僅かにざわめくも、街の人々は直ぐに落ち着きを取り戻して言った。






冒険者ギルド直上の屋根にて。


「いやー、とちゅーヒヤッとした一幕もあったけど、取り敢えず無事に終わって良かったねー。」

「あぁ…吹き飛ばされた時は流石に焦ったがな…」

「でもノア君、所用って何の事だろう…
色々あったから後始末とかかな…」

「いや、少年の事だから恐らく…あ。」

「あっ。」
「あ。」


クロラの疑問に答えていたポーラは、何かに気付いて会話を中断する。

直後にヴァモスとベレーザも同様に気付いた様だ。

 
ピトッ「ひゃっ!?」「だーれだ。」


突如音も無くクロラの背後から手が伸び、クロラの両目を覆う。

いつも通りの優しい声音に安心したクロラは振り返って声の主に向き直る。


「もぅ、急だったからビックリしちゃったよノアく…ノア君?」


向き直ったクロラのだが、ノアの表情を見るや異変を感じた様だ。

ノアの顔は蒼白し、目の下に隈が出来、脂汗をかきつつ僅かながら手も震えていた。


「はは…実は先程連絡を貰った時には既に結構しんどかったんです…
あの最上級冒険者の攻撃を防ぎきりはしたんですが、魔力をごっそり持っていかれて…
正直な所、グリードがあの4人相手にしてくれて助かりました…」

「うん、お疲れ様。
ゆっくりで良いから座りましょ、ヴァモス君、ベレーザさん手伝って。」

「は、はい!」
「にゃ!」

「お、おい、ノア君大丈夫か…?」

「えぇ…恐らく魔力枯渇でしょう…
あまり経験が無いので焦りましたよ…っとっと…」フラフラ…

「っととと、大丈夫ですかノア様!」
「にゃにゃにゃ!」


ヴァモスとベレーザが大慌てでノアの体を支える。


ズルッ…「ノア様!今直ぐマナポーションをお飲み下さい。」

グボッ「んぉっ!?」くぴっ、くぴぴ…


ノアの足元の影から慌ただしく飛び出したヴァンディットが蓋を開けた小瓶2本を取り出すとノアの口に差し込んだ。

ノアはそのまま2本共飲み干すと、みるみる内に顔色が良くなってきた。


「…よいしょ、っと…ありがとうヴァンディットさん。
大分マシになったよ。」

「お疲れ様ですノア様。
後で血液の方検査させて頂きますね。」

「頼みます。」


屋根に腰を掛けたノアが一息付いた所でアルバが声を掛けてきた。


「さて、取り敢えず色々と聞きたい事があるが、さっきの今だから今日はもう解散としよう。
私の方で宿を取っておいたから皆そこで休むと良い。」


との申し入れがアルバからあったので一同は快く承諾する事に。

ちなみにこの後のノアは、何処かの宿の中に出た辺りから記憶が曖昧となり、ふっかふかのベッドに横になった瞬間に意識を手放すのだった。








パチッ「う、うーん…」

「あ、ノア様、危な…」

ズルッ…ゴンッ「うごっ。」

ふと目を覚ましたノアが身動ぎすると、ふっかふかのベッドの上から滑り落ち、床に強かに頭を打ち付けた。

ベッド横で治療を施していたヴァンディットが慌てて近寄ってきた。

ちなみにヴァモスとベレーザは部屋にある腰掛けで2人仲良くスヤスヤと寝入っていた。


「痛て…そっか、アルバさんがとってくれた宿で寝てたんだった…
…てかこんな高そうな宿…前回来た時無かったよね…」

「どうやら私達が旅立った後に建てられた様ですね。
凄いですよね~、ふっかふかで。
ノア様の治療が一段落ついたので私も堪能しようと思います。」

「うん、そうすると良いですよ。
ヴァンディットさんのお陰で大分楽『ぐ~~~っ』…」


ノアの腹の虫が大きく鳴り、ノア自身も会話を中断する。


「…取り敢えずお腹空いたので、表に出て何か食べて来ます。」

「ふふ、そうすると良いでしょうね。」






キィッ…スッ…

ヴァモスとベレーザの2人を起こさない様に静かに部屋から出たノアは、下へと続く階段へ向かう。




トントントン…「あ、ノア君、もう大丈夫なの?」

「あ、クロラさん。どうしたんですか?顔が赤いですが…」


下の階から上がって来たのは、装備を外した普段着姿で妙に体を上気させ、顔が赤らんだクロラであった。


「この宿凄いんだよ、地下に行ったら湯浴みが出来るの、凄く気持ち良かったよ。」

「へぇ、湯浴み出来るんですね。
って事はやっぱりここは高級宿なんですね。」


この世界では、湯を大量に使う湯浴み等は貴族や高級宿位でしか行わず、濡れ布巾で体を拭いたり、生活魔法のクリーンを掛けるのが一般的である。


「うん、気持ち良かったからノア君も入ってくると良いよ。」

「そうですね、後で寄ってみます。」

「あれ?ノア君は何処か行くの?」

「お腹が空いたので腹拵えでもしようかとね。」

「あ、じゃあ私も一緒に行っても良い?」

「えぇ、勿論。」

「じゃあ少し待ってて、着替えてくるね。」

「はーい。」タッタッタッ…フワッ


クロラが小走りでノアの横を通ると、種類までは分からないが、花の香りが混じった石鹸の匂いが漂う。

(……。)

何とも言えない気持ちになったノアは、クロラが来るまでの間、心を落ち着ける事に専念した。





~3分後~

パタパタ…「ごめーん、お待たせ…ノア君?」

「…いや、大丈夫です。
さ、何か食べに行きましょうか。」


何故か壁の方を向いて立っていたノアはクロラに向き直り、いつもの表情に戻して下へと降りていった。 
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